2ちゃんねる ★スマホ版★ ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50  

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

げんしけんSSスレ12

1 :マロン名無しさん:2007/01/14(日) 02:09:36 ID:???
「・・・・・・こーゆう疎外感はスーにはきっとわかんねよ。」

「スーは自分がSS書いててどうしようって思ったこと無いっしょ?」

「だからもうわかんねままSS書いて」

「それでいいと思うけどね。」

「スーの好きなように書いてさ」

「その方がみんな楽しいだろうし」

「私もきっと楽しい」

というわけで新年あけましておめでとうな第12弾。
未成年の方や本スレにてスレ違い?と不安の方も安心してご利用下さい。
荒らし・煽りは完全放置のマターリー進行でおながいします。
本編はもちろん、くじアンSSも受付中。←けっこう重要

☆講談社月刊誌アフタヌーンにて好評のうちに連載終了。
☆単行本第1〜9巻好評発売中。オマケもすごかった!
☆作中作「くじびきアンバランス」漫画連載&アニメ放映終了!いい出来でした!

2 :マロン名無しさん:2007/01/14(日) 02:11:10 ID:???
前スレ
げんしけんSSスレ11
http://comic7.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1162331304/

げんしけん(現代視覚文化研究会)まとめサイト(過去ログや人物紹介はこちらへ)
http://www.zawax.info/~comic/
げんしけんSSスレまとめサイト(このスレのまとめはこちら)
ttp://www7.atwiki.jp/genshikenss/
げんしけんSSアンソロ製作委員会(SSで同人アンソロ本を出してます)
ttp://saaaaaaax.web.fc2.com/gssansoro/top.htm

エロ話801話などはこちらで
げんしけん@エロパロ板 その3(21禁)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1144944199/


3 :マロン名無しさん:2007/01/14(日) 02:11:10 ID:???
ちんこぽけもん

4 :マロン名無しさん:2007/01/14(日) 02:12:44 ID:???
前スレ
げんしけんSSスレ10
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1155491189/
げんしけんSSスレ9
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1150517919/
げんしけんSSスレ8
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1146761741/
げんしけんSSスレ7
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1145464882/
げんしけんSSスレ6
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1143200874/
げんしけんSSスレ5
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1141591410/
げんしけんSSスレ4
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1139939998/
げんしけんSSスレその3
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1136864438/
げんしけんSSスレその2
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1133609152/
げんしけんSSスレ
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1128831969/

げんしけん本スレ(連載終了により作品名は外されました)
木尾士目総合スレ11
http://comic7.2ch.net/test/read.cgi/comic/1167584659/

5 :マロン名無しさん:2007/01/14(日) 03:11:56 ID:???
えーと・・・
とり合えず投下しちゃっていいすかね…?

沈む前に押し返すよ・・・。

第801小隊アフターストーリー『リツコ・レポート』【地球編】

40レスくらいかにゃ・・・。

ではでは・・・。

6 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:13:41 ID:???
「おい、隊長さん、起きてよ。」
「ん・・・?」
目が覚めると、空気が違うことが実感できた。
「ついたのか・・・。」
重力の心地よい疲労感も感じる。
「やっぱり、地球はいいな。」
「そうですね。」
すでに立ち上がり、出る準備を終えているリツコやアンたちを見て、
慌ててマダラメは立ち上がる。
「あ、すまん・・・。」
「なーに、さっき大変だったじゃない。」
「いや、それはお前たちもそうでしょ。」
「私達は気を張る必要はないからね。隊長さんはその辺大変だよね。ほら。」
そういって、アンはマダラメの手を引き、廊下に引きずり出す。
「では、いきましょうか。」
五人は順々に、シャトルから降りて行く。
「マダラメ中尉、お疲れ様でした!」
出口で待ち構えていた機長と副機長が敬礼を送る。
「なぁに、いいフライトでしたよ、お疲れさんです。」
敬礼を返すマダラメ。
「ゴクロウダッタ!」
そういって一緒に敬礼をするスー。
「偉そうだなぁ、お前・・・。」
マダラメは苦笑いをする。

7 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:14:25 ID:???
外の日差しは強く、空気は埃っぽかった。
「くは〜、地球だなぁ〜。」
青い空、白い雲、周りには四人の女性・・・。
「あれ・・・?」
(これ・・・実はすごいいい状況なのでは。)
「・・・どうかしたぁ?」
ケーコに言われて正気に戻る。
「んあ!?いやいやなんでもないでござるよ。」
「なに?クッチーみたいなしゃべり方してさ。」
不思議そうに顔を見るケーコに、少し顔を赤らめるつつ、あとずさる。
「どうしたのさ?顔赤いよ?熱ある?」
「はっはっはっ、大丈夫だって。さあ行こう行こう。」
そういいながら歩き出すマダラメ。
「・・・?変な隊長さん。」
憮然な表情をするケーコ。
一同歩いて、基地の倉庫へ向う。
そのまま、一台のジープにたどり着く。
「これつかっていいの?」
「うん、それ、タナカさん所のなんだって。それで来てくれってさ。」
「ふーん。じゃみんな乗った乗った!」
言いながら、運転席に乗り込むマダラメ。
「道案内するね〜。」
助手席に座るケーコ。
「さてと、ちょっとドライブと行きますか。」

8 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:15:00 ID:???
基地のある場所からそう遠くない位置にタナカの工場はあった。
戦時中から話を聞いていたらしく、彼は戦後すぐに軍隊を辞め、
この工場で経営を始めていた。オーノと共に。
「二年ぶりか。」
工場の前にジープを止めて、降りてくるマダラメ。
「うわ、大きいじゃないの。」
「まぁ、作業用MSの整備工場だからな。それなりに大きくないと無理だろ。」
「そうね。」
通用口の方に歩きを進めながらマダラメとアンが話す。
「さてと。」
チャイムを押すと、インターフォンから女性の声が聞こえた。
『はい〜、今日は工場の方はお休みなんですけど〜。』
「オーノさん?俺俺。」
『・・・オレオレ詐欺は結構ですけど。』
「あはは・・・。マダラメですけど。」
『あ!ごめんなさい!』
そういってインターホンをきると、すぐに扉からオーノが出てきた。
「久々に声を聞いたのでわからなくて・・・。」
「なーにいいってことよ。んじゃ、お邪魔するぜぃ。」
「ハーイ、カナコ久しぶり〜。」
「マタアエタナ!」
「あら!久しぶり!二人とも元気だった?」
オーノもこの二人も来ることは知らなかったようで、笑顔を隠せない。
「私もいますよー。オーノさん、久しぶりー。」
「ケーコさんも元気そうで。・・・で、あの方は・・・。」
見覚えのない人間が一人混ざっていることに違和感を感じるオーノに、
マダラメはいたって明るく答える。
「あ〜、今回の作戦の中心人物だ。」

9 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:15:35 ID:???
「リツコ、と申します。始めまして。」
「・・・まさか、あの「リツコ」さんですか?」
「・・・たぶん、その「リツコ」であっていると思います・・・。」
そういって少しの間があったあと、
「・・・なるほど・・・キタガワさんの言ってたのはこれだったのね・・・。
 まぁいいです、なかにお入りくださいな。」
皆で工場内に入っていく。工場内は今日は休止のようで静まり返っていた。
しかし、暗がりの中でも見える設備は、軍のものにも劣らないように思われた。
「結構いい設備じゃねえか。」
「そうなんですよ〜、
 ここの前の持ち主の方が軍に重用されるくらい優秀な方だったらしくて。
 その関係で知り合って譲っていただいたそうなんですけど。」
「ほーん。じゃ、元は軍備開発工場だったわけだ。」
「そうなりますね〜。」
歩きながら周りを散漫と眺めていたマダラメだったが、
工場の端のほうに見えたあるはずのないものに気が止まった。
(・・・?あれは・・・。・・・どういうことだ・・。)
「こっちが私達の家になります〜。」
「完全に新婚さんですか。」
「あはは・・・。もうすぐ入籍するつもりではあるんです。」
「本当!?おめでとう、カナコ。」
「ありがとう〜。」
「ケッコンハジンセイノハカバダゾ!?」
「・・・不吉なこといわないで・・・。」

10 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:16:09 ID:???
いいながら扉を開けると、中でタナカが待っていた。
「おう、久しぶり。元気そうじゃないか。」
「お前が地球で幸せに暮らしている間も木星の引力の怯えた生活だったぜ!」
そういって笑うマダラメ。
「自分から志願しといてなに言ってるんだ。
 俺は止めただろ?一緒にやらないかって誘ったのに。」
「・・・まー、冗談だ。木星もそれなりにいいところだぜ。」
少し困った顔になってタナカの前に座るマダラメ。
「・・・・・・そうか。しかしなんだ、あまりゆっくりも出来ないんだろ。」
「だな。ちょっと重要人物も連れてるし、早めにやっつけたいな。」
ちらりとリツコの方に視線を走らせるマダラメに、
わかったというように頷くタナカ。
「本当は俺もついていきたいんだが・・・そうも行かなくてな。」
「どうかしたのか?・・・まぁ、忙しいんだろ、気にするなよ。」
「・・・いやね、・・・なんだ。」
「はぁ?聞こえねーよ、なんだよ。」
「・・・身重なんだよ。」
「みおも?誰が?」
「オーノさんが。」
バコーン!
マダラメの右フックが見事にタナカのテンプルに当たった。
「お前もできちゃた婚かい!!!」
「いてて・・・。いや、結婚は本当にしようとしてたんだよ。
 でもわかっちゃったから早めないとってね。・・・っていうか『も』?」
「・・・気にすんな。そうか・・・。・・・まぁいいや。二人の結婚式には二人も連れてくるぜ。」
ふぅ、と溜息をつくマダラメに、タナカは嬉しそうに笑う。
「OK、頼んだよ。明日にはクガヤマが来ると思う。今日はうちで休んでくれ。」

11 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:16:57 ID:???
深夜。
工場の外で煙草をふかすタナカ。
「ふ〜〜・・・・・・。」
「よう。どうした、外に出て煙草なんて。」
そこにマダラメが現れる。
「何言ってるんだよ、子供に一番悪いだろ。」
「それでやめるって選択肢が出ないのはお前らしいな。」
「ははは・・・。ストレスの多い仕事だしな・・・。一本吸うか?」
「ああ・・・。」
そういって一本受け取ると、煙草をくわえる。
「火・・・。」
「ほらよ。」
タナカがつけたライターの火で、煙草に火をつける。
「ふ〜〜・・・・・・。」
「しかしお前も大変だな、あの人数を連れて行くなんてな。」
「ん?まぁ・・・。戦場に行くわけじゃねえから気楽っちゃ気楽だけどな・・・。」
「ふふ・・・。」
「・・・なぁ、タナカ。」
「ん?」
「工場にあるアレ、何のためにおいてある?」
その言葉に、タナカの顔が少し強張る。
「・・・見ちゃったか・・・。」
「おまえ、もう兵器に関わるのはイヤだって言ってたじゃねえか。」

12 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:17:33 ID:???
「・・・・・・約束だったんだよ。」
「約束?」
「この工場を譲ってもらう代わりに、前の所有者が行ってた研究を続けるってな。」
「・・・そういうことか。まぁ、おいしすぎる話だとは思ってたけどな。」
「悪用はさせんさ。」
「ん・・・。お前が言うなら安心だがな。気をつけろよ。どこで情報が漏れるかわからん。」
「ああ・・・。」
「お前だけならまだしも、家族が出来るんだろ・・・。」
「ああ・・・。」
「・・・・・・出来る限り軍には頼れ。」
「ああ・・・。わかっている。現に俺と軍とのつながりは消えてないしな。」
「誰か何か言ってくるのか?」
「ははは。お前だよ。おまえが軍に残っているってだけで心強いもんなんだぜ?」
「・・・恥ずかしいこというなよな・・・。」
「なに、本音だ。」
その言葉を最後に、沈黙が訪れた。
煙草を吸う音だけが、闇に吸い込まれていった。

13 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:18:07 ID:???
「お、おう、久しぶりだな。」
朝全員が目覚め、工場で必要なものの整理をしていると、
クガヤマが輸送用トラックと共に訪れた。
「よー、元気そうで何よりだぜ。」
「ま、まぁな、気楽なもんだぜ、こ、この仕事は。」
「・・・んで?後のは軍からの?」
マダラメが視線をトラックの荷台に送ると、クガヤマは頷いた。
「そ、そうだ。一応ジムの最新機だ。」
「ってーと、カスタム?」
「い、いや、次の世代らしい。」
「・・・ほーん。ちょっと怪しいな。データでも採らす気か?」
顎に手を当てて訝しがるマダラメに、クガヤマは笑う。
「そ、それはないだろ。
 ・・・あ、あの人を守らなきゃいけないと一番思ってるのは軍なんだろ。」
そういってクガヤマは視線の先で皆と一緒に荷物整理をしているリツコに送った。
「まぁそうだな・・・。」

14 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:18:47 ID:???
「ど、どう?あ、あの『リツコ・キューベル・ケッテンクラート』との旅は。」
「ん?ま、どってことねーよ。最初あったときはすごい威圧感を感じたけどな。
 ・・・・・・気付くと普通の子になってたよ。たぶん、日頃気を張ってるんだろうな。」
「ん・・・、た、大変な立場だもんな・・・。」
ケーコが荷物の配分を間違えオーノに怒られているのを見てリツコは笑っている。
「・・・今は立場を忘れてるのか。・・・・・・もしかしたら何かあったのかもな。」
「か、彼女のプライベートで?」
「ああ。」
その言葉にクガヤマは少し首を振って言う。
「ま、まー、深入りはよくない。」
「それはそうなんだけどな。道程の途中で言ってくれたら嬉しいなっとね。」
「・・・お、お前はお節介だよなぁ。」
「・・・・・・そうかぁ?」
「ど、鈍感なくせに気付くと世話焼きたがるよな。」
「・・・うるせえよ!」
そういって二人で笑った。

15 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:19:22 ID:???
「では、いってまいりますよ〜。」
「はい〜、いってらっしゃい〜。」
「結婚式にはみんな参加してくれよな。」
「おうよ〜、木星に帰るまでまだ日にちはあるからなぁ〜。
 メンバー全員が揃うといいなぁ。」
「楽しみにしてる。」
そういうと、タナカはマダラメに敬礼を送る。
マダラメも敬礼を返しながら、
「任せとけ!」
そう言った瞬間、トラックは走り出した。
「・・・まったく、相変わらずだったな。」
「うふふ・・・。でも、変わりないのが嬉しかったでしょう?」
「・・・参ったな。見抜かれてるとはね。」
そういって頭をかくタナカに、オーノは微笑んで、
「マダラメさんなら、何とかしてくれますよ。」
「ああ、そうだ。心配せずに待っていよう。」
タナカもニヤリと笑った。

16 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:19:55 ID:???
「で、トラックで何日よ。」
「そ、そうだな、休み無しで2日弱。」
「2日。・・・マジカ。」
「も、もちろん、休憩や何かあればもっと伸びるな。」
「交代で運転しちゃるよ。」
「あ、ああ、任せたよ。」
トラックはサバンナをひた走る。
このサバンナを越えたあたりに、懐かしい密林が待っているのである。

17 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:20:40 ID:???
10時間がたった辺りで、周囲が暗くなってきた。
「そろそろ変わってやるよ。仮眠もさっきとったからな。」
マダラメが操縦席後の皆がいるスペースからクガヤマに声をかける。
「そ、そうか。じゃ、じゃあ一旦止めるな。」
「ふい〜、私も寝る〜。」
隣で座っていたケーコも、だいぶ疲れているようだ。
「お疲れさん。じゃあ、運転は俺がやるとして・・・。」
「私が助手席に入るよ。」
そういって、アンジェラが後から声を掛けた。
「・・・じゃ、たのまぁ。」
「OK。」
トラックが停止する。
「あ、明け方くらいに起こしてくれ・・・。」
そういってまずクガヤマが後へ入っていく。
「・・・あ〜、寝れるかな・・・。ここから密林だから振動ひどいんだよね・・・。」
「まぁ、なるたけ安全運転してやるからゆっくり寝なさい。」
「は〜い。」
ケーコもそのあとに続いて休みに行った。
「さて、夜のドライブの始まりだな。」
「なんかそういうとロマンティックだね〜。」
「・・・なんか恥ずかしいじゃねえか・・・。」

18 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:21:22 ID:???
トラックは密林地帯に入った。村落はたくさん点在している為、
道はなくはない。ただ、整備はほぼされてない。
「うひゃひゃ、振動ひどいな。」
「下手な遊園地よりスリルがあるわねー。」
はしゃぐ様な声を出すマダラメとアン。
「・・・そういえばさ、何で木星に行ったの?」
「ん?何でって・・・。人が足りねえって話は聞いてたからな。」
急に聞かれ、視線は動かさずにマダラメは答える。
「でも、あなたがいく必要はなかったと思うんだけど。」
「誰かが行かなきゃいけないだろ?俺は一人身で身軽だったしな。」
「こっちでやるべき仕事もあったんじゃない?」
「・・・まぁ、なんだ、行ってみたいっていうのもあったんだよ・・・。」
言葉に詰まりだしたマダラメを見て、アンはふぅ、と溜息をついた。
「サキ?」
ドキッとした。
「・・・はぁ?何言ってるんですかアナタ。」
「ん?ちょっと言ってみただけだよ?」
そういわれて、動揺がばれたようで恥ずかしくなる。
沈黙が続く。響くのはトラックの駆動音とタイヤの引かれ枝が折れる音。
こいつは見抜いてる。そう思って観念し、言葉を出す。
「・・・別に、そういう訳じゃねえよ?」
「どういう訳?」
「・・・・・・地球圏に居辛くなったわけじゃねえんだよ。」
「居辛くはならないでしょ。」
「自分のなかで何かケリつけてえって言うかなぁ・・・。」
「それでついた?」
「・・・無理だな。忙しさにかまけて忘れてただけで。
 会ったら思い出しちまったよ。」
「会ったんだ。」

19 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:22:24 ID:???
また沈黙が続く。数分経って。
「けど・・・。子供もいて幸せそうだったよ。少しなんか・・・まぁなんだ。」
おほん、と咳をする。
「将来を楽しんでみるかとね。」
「ふーん。・・・ねえ。」
「ん?」
「一緒に仕事しない?」
その台詞に、アンが何をいいたいか、いかに鈍感な彼でも解ってしまった。
「・・・あー、それは無理だなぁ。」
「そう・・・。」
「いや、嫌な訳じゃねえし、ちょっと興味もあるんだ。
 ・・・だがね、俺が軍にいる必要もあるんだ。」
「そうなの?」
「例えばクガヤマとかも、軍に目をつけられれば仕事も出来なくなる。
 軍隊上がりって言うのは目ぇつけられんのさ。いろいろ知ってるからな。」
そういって、トラックのハンドルを叩く。
「そういうのを、防ぐことが出来るんだよ、一応中にいればな。
 大隊長からその辺の方法は教わってるからな。」
「・・・無駄に軍にいるわけじゃないんだね。感心した。」
笑顔で肩をすくめるアンに、マダラメも苦笑い。
「まぁ俺から言わせてもらえば・・・。」
「傭兵やめろ?私達に?」
「・・・何だ、わかっているんだな。」
「まぁ、あなたが言いそうなことは大体ね。」
「あ〜、そうか。で?」
「やめる気はないわよ。私達はこの仕事好きでやってるしね。
 それに・・・見えるものもあるの。こういう立場だとね。」

20 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:24:58 ID:???
「・・・でもなぁ・・・。」
「女に戦場は似合わない?妙なところでフェミニストなのね。」
「・・・・・・強制はせんよ・・・。」
「あら・・・。あなたが強く言ってくれたらやめたのにね。」
その台詞にマダラメは大きな溜息をついた。
「・・・・・おいおい・・・。それはずるいだろ・・・。」
「あなたが辞めて木星に一緒に来ないか?っていったら行ってるわよ。」
「・・・・・・ずるいなぁ・・・。試したのか?」
「・・・冗談よ。気にしないで・・・。」
そういって笑うアンは、マダラメからみると無理をしているように見えた。
「・・・じゃあ木星行かない?」
「いまさら。」
「そうだよね・・・。」
そのあと、言葉は続かなかった。長い沈黙が明け方まで続いた。
微妙な空気を漂わせたまま・・・。

21 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:25:50 ID:???
朝になった。
「・・・ふわぁあああああああああ。」
大きなアクビをしながら、ハンドルを握るマダラメ。
一方、アンは全く堪えてない様子でまっすぐ前を見ていた。
「・・・あ!?あれ・・・村かな・・・?」
「お?丁度いいな・・・。休ませてもらおうかな・・・。」
「ヤスメヤスメ!ニンゲンヤスムガイチバンゾ!」
「うわっ!真剣驚いた!驚かせるなよ〜。」
スーが後から飛び出してきた。
「・・・あら、あそこは・・・。」
「あれ?見覚えあるな・・・。」
近付いてくる村の入り口には、見覚えのある門があった。
「あ、クチキ君・・・。クチキ君のメールだ。」
そう、クチキが送ってきた私は今ここにいますメールに添付されていた写真。
そこに映っていたものと同じであった。
「よし、こりゃ都合がいいわ。」
そういって、村の門の前でトラックを停車した。

22 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:26:26 ID:???
「・・・お久しぶりでございます!隊長!」
そういって近付いてきたクチキは、前よりも精悍な体つきになっていた。
「おお、久しぶりだな、クッチー。」
「ハーイ。」
「おお、皆様おそろいで・・・。って・・・。」
クチキが後ろにいるリツコに目を留めると驚いて声を上げそうになるのを、
マダラメが口をふさいだ。
「あ〜、任務中なんだ、あとはワカルね?ん?」
「・・・はい、了解いたしましたですよ・・・。」
「OK。あのさ、お願いがあるんだけど、ちょっと休ませてもらえないかな。」
「はいはい、了解でありますよ、うちに来てくださいな。」
そういって、クチキは皆を先導して歩き始めた。

23 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:27:11 ID:???
「お世話になっている家です、まぁくつろいでくださいなぁ。」
「おう、結構いいところじゃないか。」
そういってマダラメが周りを見渡す。
「ミヤ〜、ちょっちいいかにゃ〜。」
そのクチキの声と共に、奥からかわいい女の子が出てきた。
戦時中にクチキが命を救ったあの少女である。
今では成長し、しっかりとした女性になりつつある。
「あ、いらっしゃいませ〜、マナブさんのお知り合いですか?」
「お邪魔してます。クチキの元上司でマダラメともうします。
 他も元同僚です。すいませんが、少し休憩をさせていただきたく。」
「かまいませんよ〜、何なら皆さんで食事でも。丁度朝食なんですよ。」
「あ、はい・・・。」
そういって、ミヤはまた奥に下がっていく。
「・・・クチキ君?」
「はい、なんでありますか!?」
「一緒に住んでるの・・・?」
「そうでありますが何か・・・?」
「・・・クチキマナブ、オマエモカ・・・・。」
スーがその後でそういって、マダラメの背中を軽く二回叩いた。
そのまま、昼過ぎぐらいまで休むことになった一行は、村をぶらついていた。

24 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:27:47 ID:???
「おお、ここが写真の!」
「そうですにょ〜、綺麗でしょ〜。」
そこには村のモニュメントがおかれてあった。
不思議な形状をしているそれは、なぜか妙な美しさを醸し出していた。
マダラメがクチキからメールで受け取った画像を思い出し、感嘆の声を漏らす。
「なるほどなぁ。クチキ君がこの村に来た理由がわかった気がするよ。」
「この村が大変なのは知ってましたし、守りたいものがあったからですにゃ!」
マダラメはその言葉に感心した。というより、羨ましく思った。
あんなに頼りない部下だったクチキが、自分のやりたいことをしているからである。
「ほっほー、クチキ君は・・・。すごいな。」
「へ!?ほ、褒められるとは思ってなかったでありますよ!」
「いやいや・・・。本当に・・・。」
「隊長に褒められると非常に嬉しいでありますね!」
そういってクチキはびしっと姿勢を正し、敬礼した。
「あはは・・・。」
「マナブさ〜ん、ちょっといい〜?」
ミヤの遠くからの声に、クチキはそちらを向き、
「ちょっと言って来るであります!」
また敬礼して走り去っていった。
「いやいや・・・本当すごいよ・・・クチキ君・・・。」
「ナンダ、ウラヤマシイノカ?」
気付くと、モニュメントの天辺にスーが立っていた。
「ちょ!スー、それは駄目だ!クチキ君が怒るぞ!?」
「シンパイハイラン。スグニオリル。トゥ!」
そういってジャンプすると、マダラメの真上に落下してきた。

25 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:28:22 ID:???
「うわちょ!」
顔の正面に抱きつかれ、倒れこむ。
「いてぇ!なにすんだよ!・・・ん!?」
目を開けると、薄暗い空間の中に肌色に布地・・・。
「イヤァ〜ン、マイッチング。」
スカートの中だったのだ。
「アホか!どきなさい!」
スーを急いでどかすマダラメ。
「全く・・・。何がしたいんだお前は!」
「・・・何を話してたの?夜。」
急に素のしゃべり方で話し出すスーに、マダラメは唖然とする。
「・・・・・・普通にはなせるのかよ・・・。何を・・・か・・・。
 まぁしいて言えば。」
「しいて言えば?」
「俺がまた情けない奴だということを認識しただけだな。」
「・・・そう?」
「そうだよ。だって、相手が何を言って欲しいか全くわからないんだぜ。」
「でもそれは自分が言いたかったことなんでしょう?
 相手が言いたい事を言わない方が、傷つくわ。」
「・・・そうかも知れねえけどな。俺はなるべく誰かの役に立ちたい。」
「・・・・・・そう気張るものでもないですよ。あなたはいるだけでも・・・。」
スーは視線を逸らすと、モニュメントを見た。

26 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:29:17 ID:???
少しの間のあと。
「キレイダナ。」
「!?ああ・・・。」
元に口調に戻ったスーに、再び面食らいながらも、マダラメは少し笑った。
「あの・・・。」
そこにリツコがやってきた。
「お?なんですか?」
「これ、アンジェラさんが、隊長さんにって。」
見ると、果物だった。
「村の人に分けて頂いたけど、自分はちょっと渡しづらいから。
 疲れてるだろうからこれ食べて早く寝なさいって言ってましたよ。」
「・・・そうか・・・。ありがとう。」
「それはご本人におっしゃった方がいいかと思いますよ?
 ・・・隊長さんは、皆に好かれてますね。」
「そ、そうですか?」
「はい。村に訪れた上司をあんなにも世話してくれる方がいる。
 皆があなたの心配をしていますよ。」
「・・・それは、俺が情けないからでは・・・。」
情けない顔で溜息をつくマダラメに、
少しの間のあと。リツコはプッ、と噴出していしまった。
「え?何で笑うんですか・・・?」
「い、いえ・・・。・・・自信を持ってください。
 心配してるってことは、それだけ頼りにしているってことですよ。
 どうでもいい人を心配したりはしません。」
「そ、そういうものかな・・・。」
「そうですよ。そうなんです。」
リツコは、自分に言い聞かせているように強く、言った。
「・・・わかった。少し自信を持ちますよ。」
「・・・はい。」

27 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:30:18 ID:???
クチキと田中の結婚式でまた会うことを確認し分かれ、
トラックに戻り仮眠を取るマダラメ。
その間にもトラックは進んでいった。
マダラメが目を覚ますと、懐かしの基地の近くであった。
「おぉ〜、演習場じゃないかぁ・・・。」
「ああ、ここ覚えてるなぁ。」
マダラメの声に、ケーコも同じように声を上げる。
「懐かしの実家に戻る感覚ってこういうのなのかね〜。」
「あれ?隊長さん実家は?」
「・・・戦争でなくなっちまったよ。親は一応生きてるけどな。」
そういって苦笑い。
「ああ・・・まぁ・・・みんなそんなもんだよね・・・。」
「そういえば妹さんもそうだったな。」
「うん。でも、なんかその気持ちよく分かるよ。実家に戻ってきたようなって。」
トラックは基地の前に停車した。
「ほっほ〜、結構普通に残ってるもんだなぁ。」
「ま、まぁ、基地だしな、こんなボロでも。」
クガヤマも嬉しそうに話す。
「で?ここで目撃されたって?」
「うん。さっきの村でも情報集めてみたんだけど、
 ここに人気があるって言うのは本当みたい。」
「・・・たしかにな。」
「え?」
「見ろよ、あそこ・・・洗濯物がある。」
見ると、確かに洗濯台にいくつかの服が掛かっている。
小さい・・・子供のものばかりのようだが・・・。
「ええ〜、じゃあ本当に誰かいるの?」

28 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:30:53 ID:???
「ササハラとオギウエさんかもしれんじゃないか・・・。」
少しおびえるように言うケーコに、マダラメはそういう。
「お、おい、あれササハラのジムじゃないのか?」
クガヤマは密林のほうに見えるMSの残骸を指差す。
「ちょ、直接は見てないから知らないけど・・・。
 た、タナカに見せられた資料ではこれだった気がするな・・・。」
「ビンゴだ、クガヤマ。ということは・・・。」
中に二人がいる可能性が出てきた。
(しかし・・・結構な数がいるな・・・。10?10はいない・・・けど近い数いるな。)
気配でなんとなく人数を把握するマダラメ。
二人だけならそうなるはずがない。
「まぁ・・・ここは思い切っていくか・・・。」
「そうね。悪意は感じないわ。」
「え〜、本気で行くの・・・。」
「・・・それしか情報を得る方法はなさそうですね。」
「ま、まぁ、し、しょうがない。い、いくか。」
「ダッカンサクセンカイシ!」
マダラメを先頭に、入り口へと進む一行。
マダラメが扉を開けた瞬間。
ゴワ〜〜〜〜〜〜〜ン
鈍い金属の音が響いた。
「いってええええええええええええ!!」
「な、な、なんだおまえら!お、お、おれらをどうしようってんだ!」
一人のメガネをかけた少年が、震えながらタンカをきる。
「それはこっちの台詞だ!!ここが軍隊の基地だってことぐらいわかんだろ!」
 急に殴られた痛みで、キレ気味に相手の子供の首根っこを押さえる。
「うるさいやい!
 今まで使ってなかった基地に戻ってきて家奪おうったってそうはいかねぞぅ!」
じたばた暴れる少年に、マダラメは少し溜息をついて。
「・・・いや、別にそういうわけじゃねえんだが・・・。」
「え?」

29 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:31:28 ID:???
その瞬間。
カコーーーーーーーーーーーーーーン
遠くから硬い金属のフライ返しが飛んできて、マダラメの顔に直撃した。
「いってえええ!」
「ハルノブをはなせ!」
活発そうな少女が、遠くでエプロン姿に赤ん坊を背負った姿で立っていた。
「あ〜・・・、ちょっとおちつけおまえら!」
少し大きな声で怒鳴ってしまったマダラメ。
その声に二人の子供はびくっとして、動きを止めた。
「まぁなんだ・・・。話聞くぞ?」

「ほう、君らは戦災孤児か・・・。」
「ここから少し南の方にある村でみんな暮らしてたんだ。
 親はみんな戦争で死んだ。
 俺たち・・・名前も覚えてないような状態でここに来たんだ。」
「戦争終結寸前か・・・。皇国軍の残党が荒らしたんだな・・・。」
苦い顔でリーダーらしきメガネ少年の話を聞くマダラメ。
食堂に案内された・・・とは言っても場所は知っているのだが
そこで集まってきたのは子供だけであった。
「そしたら・・・。ちょっとしてパパとママが来たんだ。」
「パパ?ママ?」
「あ、あのね、二人はなんか宇宙から降って来たらしくて、
 怪我してたんだ。基地の前にママがパパを抱えて歩いてきたんだ。」
「そうそう、皆でママと一緒にパパの看病したの。」
メガネ君の隣にいた先ほどのエプロン少女が話を続ける。
「で、みんなに名前くれたの。
 こいつはハルノブ。私はサキ。」

30 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:32:04 ID:???
ここまで聞いてすべてを把握したマダラメ。
二人はこの近辺に落下し、
怪我を負ったササハラをオギウエが何とかここまで運んだあと、
この子供らと生活したということだ。そして、彼らに小隊員の名前をあげた。
「・・・そうか。俺たちはそのパパとママの知り合いなんだが・・・。」
「・・・やばい!ハルノブ!カンジとチカの状態が!」
そういって一人の少年が飛び出してきた。
「え!ソウイチ、それ本当!?」
「やばいんだ!来てくれ!」
その話を聞いてマダラメ達も思わず席を立つ。
「まさか・・・二人が・・・。」
「私達も行ってみましょう。」
リツコに促され、一行は少年たちと共に医務室へと向う。
しかしそこで熱にうなされ眠っていたのは年端も行かない少年と少女であった。
横には髪の長い少女が心配そうに二人の様子を見守っていた。
子供はサキちゃんの背中の二歳児も入れると全部で11人。
「・・・ああ、そういうことか・・・。」
思えば彼らは二人のことを「パパ」「ママ」と呼んでいた。
「ですが、この子達の病状が危険なのも確かです!」
「こ、こいつは・・・。は、肺炎だな・・・。」
クガヤマが病状を見てそういうと、外に出ていった。
「クガピーなにしにいったの?」
「おそらく抗生物質をとりにいったんだ。
 オーノさんのコネで、行きがけに数個持たされていたからね。」

31 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:33:26 ID:???
戻ってきたクガヤマの手で、抗生物質が投与された。
「あ、あとは、ち、ちゃんと栄養とっておけば大丈夫だ。」
「・・・よかった・・・。」
泣きそうだった少年たちは、ようやく落ち着きを取り戻した。
「・・・で・・・聞きたいんだが・・・。」
「え?」
「お前たちのパパとママはどこへ行ったんだ?」
その言葉に、皆静まり返る。
「?どうした・・・?」
「あのね、帰ってこないんだ。」
「帰ってこない?」
ハルノブ達は再び泣きそうな顔になって言う。
「・・・一週間くらい前だったんだけど、
 二人は食料を探すっていって出て行ったんだ。でも・・・。」
嗚咽を漏らすハルノブに、マダラメは渇を入れる。
「おい!お前ここのリーダーなんだろ!?しゃきっとしてなきゃ駄目じゃないか!」
「・・・!そ、そうだよね!うん・・・でも、それきり帰ってこなくて・・・。
 食べ物もなくなりそうで、ぼくたちどうしたらいいか分からなくなって・・・。」
「・・・わかりました。ハルノブ君?」
「は、はい。」
リツコが、そこまで聞いて声を出した。神妙に返事をするハルノブに、
「皆で軍の施設に行くようになさい。私のほうから取り計らいます。」
「・・・で、でも・・・軍隊は・・・嫌いだ・・・。」
「・・・あなた達を助けてくれた二人も、軍人ですよ?」
「・・・知ってる。でも二人はちがかったんだ・・・。」
「このまま、ここでみんなを危険に晒したままにするつもり?
 リーダーなら、しっかり判断しなきゃ。みんな、あなたを頼りにしてるんだから。」
ハルノブは、自分に皆の視線が集まっているのに気付いた。
その視線は、皆彼を信用して判断を仰いでいるようだった。

32 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:34:31 ID:???
「・・・・・・みんな、助かるんだよね、そうすれば・・・。」
「うん。みんな、一緒に助かる。」
「・・・わかった。でも・・・。」
「ん?」
「パパとママにまた会いたい・・・。」
「会わせてあげる。私達が必ず。」
そういいきるリツコを端で見ていた斑目は、その強い言葉に感心していた。
「一晩、ここで過ごしましょう。ここなら通信が生きてますから、
 すぐに輸送艦を呼べるでしょう。明日にはつきます。」
「おいおい、輸送艦使うのか?ちょっとなぁ・・・。」
マダラメがリツコの提案に反論した。
大きな輸送機は目立つので、
何かあったかとゲリラに目をつけられる可能性があるからだ。
「でも、この子達をここに放置するわけには行きませんでしょう?」
「・・・わかった。判断は任せるよ。」
「ありがとうございます。」
そういってリツコは、通信機のあるほうへと向った。
「・・・場所も分かってるのか。
 システムの中にいたとはいえ自由に中を見てたんだな。」

33 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:35:11 ID:???
その晩。皆でそれなりの、しかし子供たちとの楽しい夕食を終えたマダラメは、
彼らが眠りにつく中、外に出て密林を眺め、昔を思い出していた。
「懐かしいな。ああ、もう二年もたつのか・・・。」
タナカから箱ごともらった煙草をふかし、空の星を見上げる。
「ササハラぁ、お前どこにいんのよ?」
そういっても始まらないことはわかっていた。
あと残る情報は少年たちの言う
『食料をとりに北のほうへ向った』という情報のみである。
「・・・死んで・・・いかんいかん・・・。」
自分の悪い予感はすぐ当たる。わかっているんだ。
「眠れないのですか?」
リツコが、基地の中から出てくる。
「ん?いやね・・・。今後どうしようかなって・・・。」
「北へ行くんでしょう?」
「そりゃそうなんだが・・・。ま、不安でしてね。」
「・・・私もです。」
その言葉に、マダラメは驚く。
「・・・おかしいですか?」
「おかしいっていうか・・・。さっきあんなに毅然としたこと言ってましたから。」
「まぁ・・・自分に言い聞かせてる部分もあるんですよ。」
そういって笑うリツコに、マダラメも笑う。
「ああ・・・そういうのはあるなぁ・・・。」
「そうなんですか?」
「いやね、俺部隊で出るときは『絶対に死ぬな!生きて帰るぞっ!』
 って言ってたけど・・・。これ、結局は自分に言ってるんですよ。」
「・・・大変ですよね。」

34 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:35:48 ID:???
「ああ・・・そうか、あなたもあの部隊ではリーダーを・・・。」
そういわれて、リツコは少し微笑むと、うつむいて言った。
「一応、ですね。みんな最初の頃は新兵同様で・・・。
 片腕の部下はかなりの凄腕なんですけどね、戦争は一人でやるものじゃないから・・・。」
「ああ、わかりますよ。」
「中には、私の幼馴染もいたんですよ。しかも二人も。
 彼らを戦場に送るのは・・・。とても気苦しかったです。」
・・・そうか。この人が気を張っている理由がマダラメにはわかる。
戦場へ部下を送り出す恐怖。
それを、この人も知っているからだ。自分と・・・似ているのだ。
「それでも、私がブレたらもっとおかしな事になる・・・。
 必死でしたよ。」
顔を空に向け、星を仰ぐリツコ。
「あの事故のあと・・・。私無しに部隊は問題なく回っていました。
 元に戻ったあと、皆にあうのが怖かった。」
「・・・それは何故?」
答えはわかっていた。しかし、あえて聞くしかないと思った。
「・・・必要ないといわれるのが嫌だったんでしょうね。
 思えば情けないことです。でも・・・みんな笑顔で私を迎えてくれました。」
「そりゃそうでしょう・・・。」
「・・・それでも・・・疎外感は出てしまうんです。
 見ない間に成長した皆。戦場をいくつか知らない私。
 ・・・だから・・・逃げてきたんです。」

35 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:36:35 ID:???
「・・・。」
わかる。何故そう思うのかわかりすぎてしまう。
「マダラメ隊長?」
「はい?」
「わたしは・・・どうすればいいんでしょうか・・・。」
「そうですなぁ・・・。」
言いつつ、煙草を捨て、足で消す。
「とりあえずは・・・。」
「とりあえずは・・・?」
「二人に会いに行きましょうや。それから何かわかるかもしれないしね。」
そういって、笑うマダラメに、リツコも笑う。
「そうですね・・・。そうですよね・・・。」
空には満天の星空。星が、二人を優しく包み込んでくれるようだった。

36 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:37:19 ID:???
「あら、お久しぶりね。マダラメ中尉?」
「あはは・・・。妙なところでお会いしますなぁ・・・。」
朝、艦船に乗って来たのは、クチキの元上司。あの『隊長殿』である。
「私今は彼女直属の部隊でしてね。あの子達のことは任せてくださいまし。」
「はい・・・。よろしくお願いします。」
トラックの駆動音が響く。
「お、おいそろそろ行くぞ。」
「あ、ああ・・・。」
艦船に乗り込んでいく子供たち。マダラメはハルノブを見つけて声を掛けた。
「おう。」
「あ。あの・・・。」
「ん?」
「ごめんなさい。ぶったりして・・・。」
「あ、ああ、あれか。なに、お前も責任感から来てやったんだろ?
 気にしてないさ。」
「・・・うん。」
「・・・あー、あのな。」
「はい?」
「みんなお前の心配をすると思う。
 でもな、みんなそれはお前を頼りにしてるからだからな。」
思いっきり受け売りの言葉でハルノブを励ますマダラメ。

37 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:37:53 ID:???
「ま、頑張れ。」
「・・・うん!」
元気よく返事すると仲間のいる方へ駆け出すハルノブ。
「いい子に育てよ〜。俺のようにはなるなよな〜。」
「え〜、いいじゃない、隊長さんのようになるの。」
「そうよ、あなた少し自分を卑下しすぎ。」
「キミハシンジツヲミテイナイノダ。」
「・・・十分素敵ですよ?隊長さん。」
「・・・ははは。」
一斉に女性陣に突っ込みを入れられ、乾いた笑いを出すしかないマダラメ。
「ま〜、あともうちょっとかね、頑張りましょうか。」
そういって、マダラメはトラックの助手席に座った。

38 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:38:28 ID:???
「やれやれ〜、あいつらはどこにいるのかね〜。」
そういいつつ、周囲に気を配るマダラメ。
話によると、部隊で使ってジープで移動してたとのことだ。
おそらく、どこかで事故に・・・。
「お、おい・・・あの崖・・・気にならないか・・・。」
「ん?おお・・・確かに・・・。」
トラックを止め、マダラメは一人崖の方へと近付く。
「ん・・・?あのジープ・・・。」
崖下には見覚えがあるジープが一台あった。
しかし、事故の様子はない。
「んー?まぁ一旦崖下に・・・。・・・!」
そう考えた瞬間であった。
トラックの周りをザクが取り囲む。
「ちぃ・・・。やはり感づかれたか・・・。」
艦船の位置からトラックが移動していたのを確認していたのだろう。
走ってトラックの方へと移動する。
『そこのトラック。積荷と乗員を全て晒せ。』
外部マイクから声が響く。

39 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:39:04 ID:???
その間に、マダラメはトラックに戻ることに成功した。
「おい、クガヤマ、後のMS出すぞ!」
「だ、だけどよ、集中砲火食らったらトラックが・・・。」
「く・・・確かに・・・。」
奥歯をかみ締め、どうするか考えをめぐらすマダラメ。
「・・・私が囮になります。」
「リツコさん!?」
「彼らも、私の顔ぐらい知っているでしょう。
 私が出て、彼らが多少ひるんでいる隙に・・・。」
「・・・しかし・・・。」
「このまま皆が死ぬよりいいでしょう?」
「・・・わかりました・・・。」
マダラメはその案をしぶしぶ了承する。
「みんな・・・よく聞け・・・所詮は旧式のザクだ。
 こうするから・・・。」

40 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:39:40 ID:???
『はやくしろ!あと十秒以内に・・・。』
ザクからそう言葉が出た瞬間である。トラックからリツコが出てきた。
「・・・私の顔ぐらい知っているだろう!?さらいたければさらうがいい!」
『・・・なんだと!リツコ・キューベル・ケッテンクラート!?』
明らかな動揺が彼らを包んだその瞬間である。
トラックの後部積載から、ジムUとよばれるその機体が飛び出した。
コクピットは開いたまま。瞬間、トラックは全速力でダッシュ。
一斉射撃が遅れた隙に、マダラメ操るMSが、リツコを拾い、コクピットに入れる。
「はは、うまくいきましたな!」
「あとはこいつらを!」
「わかっていますよ!」
リツコをお姫様だっこのような形で抱えたまま、
マダラメはビームサーベルで前方のザクの四肢を切断した。
振動が響き、司令官らしきザクは沈黙する。
後にいた残り二機のザクは、ジムへとマシンガンを放つが、通用しない。
「お前ら・・・、そんな昔の武器が最新兵器に通用すると思ってンのかよ・・・。」
すぐさま接近し、同様にカタをつける。
「ふぅ・・・。」
「お疲れ様でした。」
「いえいえ、これもあなたのおかげですよ。
 かっこよかったですよ、先ほどのタンカ。」
「え・・・。あは、昔取った杵柄って奴ですね。」
そういって顔を赤らめるリツコは、本当にかわいいと、マダラメは思った。

41 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:40:14 ID:???
トラックが戻ってきた後。
ザクに載っていた奴らを縛り、先ほどの艦船に回収を依頼する。
基地に残っていた移動式通信機を持ってきた甲斐があったものだ。
「さて・・・俺らは崖下へ行ってみますか。」
マダラメの誘導のもと、道を見つけて崖下へトラックは移動する。
「・・・やっぱりこれだ。」
トラックから降りたマダラメは、ジープを眺めて言った。
「んー・・・。お?」
近くを流れる川の向こうに、掘っ立て小屋のような・・・。
おそらく、中継用の保管庫だろう、それがあった。
「もしかして・・・。」
トラックを待たせ、一人、そちらへ行くマダラメ。
「・・・はは。中に・・・。」
(死体とか。わ、洒落になってねぇ。馬鹿か俺は・・・。)
嫌な予感はよく当たる。
そんなことはないはずだと、思いきり扉を開けてみる。
「わ!」
「「わ!」」
驚きの声が響いた。
目の前には、下半身下着だけのササハラが・・・。
「お前ら何してんじゃああああああああああああああああ!!」
マダラメの声が、成層圏も突き抜けて、木星まで響いたような気がした。

42 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:40:48 ID:???
「ちょ、誤解しないで下さいよ!足をですね・・・。」
ササハラが慌てて弁明しようとして、はっとした顔をする。
「隊長・・・。」
「足・・・?ああ・・・。これが落ちた時にした怪我って奴か。」
ササハラの片足は、包帯でグルグル巻きにされており、
もはや、健常ではないことがわかる。
それを、直そうとしていたのだろう。
「なんでここに・・・。」
「そりゃこっちの台詞だわな。連絡とる方法ぐらいあっただろうに。」
「あの子達が・・・ていってもわからないですよね。」
「いや、会ったぞ。勝手に名前使いやがって。
 しかも自分の名前の奴にフライパンで殴られたわ。」
そういって笑うマダラメ。
「じゃ、じゃああの子達は大丈夫なんですね!?」
ササハラの隣にいたオギウエが、心配そうに聞く。
「ああ。ちょっとやばい子もいたけどな。
 ちょっとツテつかって軍に頼んだよ。」
「・・・あの子達がよくうんといいましたね。」
「まぁ、色々あってな。っと、お前らは何で?」
「燃料を補給にここ寄ったんです。丁度切れちゃったんで。
 でも・・・あるはずの燃料がなくなってて・・・。」
ああ、さっきの連中か・・・。マダラメはそう思った。
「食料はあったんで何とか一週間・・・。いや、本当に助かりました。」

43 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:41:38 ID:???
「ん・・・。まぁ、いいさ。お前らが元気でいてくれりゃそれでな。」
「マダラメ隊長・・・。」
ばっとそのままの体勢で敬礼を送るササハラ。
「ササハラ少尉、ただいま戻りました!!」
「・・・あほぅ、そういうのは自分で戻ったときに言うんだろうが・・・。」
いわれて、そう強がったものの、涙が止まらなかった。
そのまま振り返り、背中で話す。
「・・・あ〜、お前たちを待ってる奴らがいるから、帰るぞ!」
「「はい!」」
その瞬間、声が掛かる。
「・・・お久しぶりです・・・、いえ、この姿では始めましてですね・・・。」
マダラメの横から、リツコが顔を出す。
リツコの姿を見、一瞬声を上げそうになるササハラだったが、
そのあとすぐ、彼女が何者だったかを理解したようだった。
オギウエも、同様に。
「・・・ありがとうございました。」
「・・・え?」
「あなたが・・・あの時力を使ってくれなければ・・・。私達は死んでたでしょう。
 いや、私達だけじゃない。あの子達も・・・きっと・・・。」
そういうオギウエの言葉に、リツコはハッとした。
「そうか・・・。」
「どうですか?何か答えは出ましたかい?」
「・・・はい。私も、戦ってたんですよね、あの間も。」
「・・・・・・そうだ。あなたの部下達も体験してない戦いをして、
 二人だけじゃない、多くの命を救ったんですよ。」
そうマダラメに言われて、リツコは、笑う。
今までにないような、つき物が落ちたような顔で。
「自信、持ちましょう。お互い、ね。」
マダラメの言葉に、リツコは大きく、
「はい!」
と返事をした。

44 :第801小隊『リツコ・レポート』:2007/01/14(日) 03:42:43 ID:???
その後。
彼らはタナカとオーノの結婚式に向った。
その場には、第801小隊のメンバー全員が揃い、二人を祝福した。
そのままササハラはサキに連れられ、足の治療に宇宙へと旅立った。
オギウエはリツコとともに、子供たちの世話をしに・・・。
クガヤマはもうすぐ結婚するらしい。オマエモカ。
そしてみんな・・・。元の場所に・・・。


いや・・・2人違った・・・。


「あ〜、やっぱ地球の方がいいんじゃないかい?」
「何言ってるの?あなたが私達を雇うって言ったんじゃない。」
「マカセロ、ワレワレハユウシュウダゾ。」
「・・・じゃあ、ちょっくら木星までの旅路、ご一緒いただきますかね・・・。」

END

45 :『次回予告』:2007/01/14(日) 03:49:01 ID:???
世界を巻き込んだ、『宇宙戦争』という名前で構成に語り継がれるあの戦争から20年。

二人の双子が世界の命運をかけ対立する。

宇宙海賊に共感し、連盟軍を離れた妹・マリ。
そうとは知らず、警備隊として海賊を追う姉・チサト。

二人が戦場で出会い、その事実に直面する時・・・。
世界が・・・再び戦禍に巻き込まれようとしていた。

「次は私を撃つといったはずでしょ・・・!チサト!!!!」
「マリ・・・!私は・・・!」

第801小隊の後継作となる機動戦士ガンダム『ツインズシンドローム』

お楽しみに。

46 :『アトガキ』:2007/01/14(日) 03:50:39 ID:???
ごめんなさい。予告は大嘘です。

というわけでオチを見る事になりました第801小隊。
楽しんでいただけたでしょうか。

次は・・・ラジヲでお会いしましょうw(マジカ

47 :26人いる!の人:2007/01/14(日) 13:27:23 ID:???
あけましておめでとうございます。
遂に完成しました「26人いる!」シリーズ。
読み返してみてまだまだ粗は目立つのですが、明日にも2ちゃんねる閉鎖という不穏な噂が飛び交っている緊急時なので、思い切って投下します。
そんな事情により、普段なら2回に分けるところを一気に投下します。
開始は約10分後、39レスの予定です。
もし先に投下したい方いらしたらレス下さい。

あと感想。
>801小隊
前の話も読み返してみたら、何と投下されたの去年の6月。
およそ半年ぶりの登板ですか、お疲れ様でした。
何かここでもマダラメ、ハーレム状態ですな。
しかも木星で両手に花…うーむまたネタが被ってしまった。
実はこれから投下する話でも斑目…
やめときましょう、それは読んでからのお楽しみということで。
あと嘘と言わずに予告のネクスト・ジェネレーション編、ぜひ書いてみて下さいな。

48 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その1:2007/01/14(日) 13:38:31 ID:???
2006年夏コミ3日目、最終日。
今日も現視研の面々は、椎応大学の最寄の駅から始発に乗った。
ちなみに「やぶへび」の面々は、今日は漫研男子の出品があるので、そちらの方に行っている。
あと恵子は昨日友人の家に泊まって寝過ごしたので、後で顔を出すとのことだった。
今日は男性向け中心の出品だ。
だから1年男子は、かなり意気込んでいる。
一方1年女子は、午前中は男子たちの分担購入を手伝い、午後からは全員コスプレに参加する。
分担購入の手伝いは、1日目に売り子で頑張ってもらったお礼の意味もあってのことだ。
もっとも元来現視研の女子会員には、最終日に男子の分担購入を手伝う習わしがあった。
(まあ習わしと言っても、ここ4年ほどの話ではあるが)
それを上の誰かが言うまでも無く、1年女子の方から言い出した。
だから荻上会長は、彼女たちの自主性を尊重して、敢えて改めて指示しなかった。
OBたちも、そんな意気込む1年生たちにかつての自分を見る思いで、静かに見守っていた。
いやただ1人、1年生以上に意気込んでいる男が居た。
言うまでも無く、ループの帝王ことクッチーであった。
朽木「よっしゃみんな、いよいよ最終決戦だにょー!今日は倒れるまで並ぶにょー!」
1年男子一同「おう!」
みんなで一斉に拳を突き上げる。
朽木・日垣「あ痛っ!」
浅田「やっぱ2人とも背高いね。俺じゃあ無理だな」
先程痛がった2人は、天井に拳をぶつけたのだ。
荻上会長の雷が落ちる。
荻上「いい加減にしなさい!電車の中で何やってるんですか!」
1年男子一同・朽木「すいません」
そう、彼らはまだビッグサイトに着いていなかったのだ。



49 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その2:2007/01/14(日) 13:40:09 ID:???
ビッグサイトに着いた現視研一行、並んでいる間に割り当てをもう一度確認する。。
男子は基本的に単独でお気に入りの作品を扱うエリアを中心に回り、女子はその隙間を埋める形でフォローするという陣形だ。
今日も前日までと同様、午前中は買い物で午後からはコスプレという流れだから、昼までは女子も目いっぱい並べる。
いよいよ会場に入り並ぶ直前、しばし1年女子たちは雑談にふける。
台場「それにしてもうちの男ども、属性訊いてみたら見事なまでに巨乳好きだらけね」
沢田「ほんと、違うのはツルペタ属性の斑目先輩と、猫耳好きの伊藤君ぐらいね」
巴「あとは朽木先輩の、老若男女不問ぐらいかしら」
一同「朽木先輩、漢だ…」
国松「まあ何にせよ、みんな巨乳好きね。全くもう…」
どちらかと言えば貧乳の国松、やや不機嫌だ。
神田「不機嫌ねえ千里。まあ無理ないか、日垣君まで巨乳属性じゃ」
国松「(赤面し)そっ、それは関係ないわよ」
神田「(悪戯っぽく笑い)まあ、そういうことにしときましょうか」
国松と対照的に、豪田は上機嫌だ。
豪田「て言うことは、私ってもしかしてモテモテ?」
台場「いやあんたの場合は、でかいの胸だけじゃないし。むしろマリアでしょ」
巴「そう?入学してから4ヶ月以上経ったけど、誰もその手のお誘いしないけど」
沢田「みんな奥手だからね、うちの男子」
神田「単にみんな怖がってるだけじゃない?」
巴「(苦笑し)かもね」
神田「それに二次元の属性と現実の属性って、必ずしも一致しないしね」
一同「そうなの?」
神田「だって例えば笹原先輩って、元来巨乳のお色気お姉様系属性だったらしいし今でもそうらしいけど、実際に付き合ってるのは会長よ」
一同「…確かに!」
神田「あの、あまり力強く納得しちゃ会長お気の毒よ」



50 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その3:2007/01/14(日) 13:41:53 ID:???
沢田「そう言えばこれは噂なんだけど…うーん、言っちゃっていいかなあ?」
豪田「何々?そこまで言ってもったいぶるのは無しよ」
沢田「あくまでも未確認情報なんだけど…斑目先輩、春日部先輩のこと好きらしいのよ」
一同「なっ、何だって〜〜〜〜!!!!!!!!!!!」
沢田「だからMMR式で驚かないの!」
豪田「いや、いくら何でもそれは驚くわよ」
巴「私も今回ばかりは驚いた」
台場・国松「私も」
ただ1人驚かなかった神田が呟く。
神田「やっぱりそうだったのね」
豪田「ミッチー気付いてたの?」
神田「何回か春日部先輩が部室に来た時の、シゲさんの態度で何となくね」
沢田「さすがミッチー、男女のことには目ざといわね」
豪田「で、斑目先輩、今でも春日部さんのこと好きなのかな?」
神田「そこまでは分かんないけど、吹っ切れてない感じはするわね」
巴「でもそれじゃあ、何時まで経っても斑目先輩、春日部先輩の呪縛から抜け出せないじゃない」
豪田「私たちで何か出来ないかな?」
スー「ココハヒトツ、ワシラデ『斑目晴信君ヲ男ニスル会』チュウノヲ作ッタラドウジャロ?」
何時の間にか現れたスーが提案した。
一同『何で広島弁?』
豪田「何で広島弁なのかは置いといて、スーちゃんの提案自体はアリじゃない?」
巴「(ニヤリと笑い)アリでしょ」
国松「でも斑目先輩を男にするったって、それって…(赤面)」
台場「こらこら、ストレートにそっち方面に考えないの」
沢田「そうそう、別に私たちが必ずしも斑目先輩と付き合おうって訳じゃないわよ。ただみんなで応援しようってだけだから」
神田「ま、私なら付き合ってもいいけどね、シゲさんと」
豪田「まあ大胆発言(赤面)」


51 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その4:2007/01/14(日) 13:43:59 ID:???
アンジェラ「そういうことなら私もひと肌脱ぐあるよ」
何時の間にか加わってるアンジェラに驚く一同。
アンジェラ「要は私がミスターシゲのチェリーを頂けば万事解決あるね」
沈黙&赤面&滝汗の一同。
神田「あのねアンジェラ、問題はそんな単純じゃないのよ」
台場「そうよ。そんなこといきなりやろうとしたら、シゲさん心停止しちゃうわよ」
国松「それにミスターシゲじゃ、何か長島さんみたいよ」
豪田「千里ナイスツッコミ!」
巴「それはともかくアンジェラ、これは私の主観なんだけど、斑目先輩って内気とか奥手とか通り越して、生身の女性については女性恐怖症に近いとこまで行ってると思うのよ」
豪田「そうそう。確かにシゲさんって、ガラス細工みたいに脆くてデリケートよね」
スー「(胸の前で両腕をクロスさせ)ワイノ心ハばりけーど!」
豪田「あのスーちゃん、話がややこしくなるから、その手のボケは無しね」
スー「押忍!」
神田「だから私たち後輩で少しずつ時間をかけて心を解きほぐして行くのがベストだと思うのよ。だからアンジェラ、性急なことしちゃダメよ」
アンジェラ「難しいものあるね」
藪崎「そういう話やったら、私も一口乗るで」
何時の間にか藪崎さんも話の輪に加わる。
豪田「まあそれはいいですけど、くれぐれも性急なことしちゃダメですよ」
藪崎「まかしとき。要は私の女の操を斑目さんに捧げたらええねんやろ?」
沈黙&赤面&滝汗の一同。
豪田「いやだから、そうじゃなくて…」
豪田は藪崎さんに、ここまでの話について改めて説明する。
藪崎「なるほどそういう訳か、むつかしいもんやな」
豪田「難しいですよ。だってシゲさん、ガラス細工みたいに脆くてデリケートですから」
藪崎「(胸の前で両腕をクロスさせ)わいの心はバリケード!」
こける一同。
台場「ヤブさん!スーちゃんと一緒のボケしないで下さい!」
藪崎「何やスーに先越されたか」


52 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その5:2007/01/14(日) 13:46:39 ID:???
沢田「おまけに斑目さんとやっちゃえば万事解決って発想は、アンジェラと一緒だし」
藪崎「何やと!こんな変態外人と一緒にすな!ええか、私の場合は根本的なとこが違うんや!アンジェラはもう何人もとやりまくってるけどな…」
国松「(赤面して)あの、憶測でそういう不穏当な発言は…」
アンジェラ「(笑顔で頭かいて)いやーそれほどでも」
藪崎「褒めてへんわい!お前はクレしんか!」
巴「て言うかアンジェラ、それってヤブさんの決め付け認めてない?」
神田「アンジェラ今まで何人としたの?」
豪田「あんたも真顔で訊かないの!」
アンジェラ「ミッチー、それは男と女とどっちの話あるか?」
神田「女の子ともしたことあるの?今回はとりあえず男の子だけでいいわよ」
豪田「この間迫ってきたのはマジだったのか…(冷や汗)」
指を折って数えるアンジェラ。
アンジェラ「えーと…千里ちょっと指貸してある」
国松「それって両手の指では数え切れないってこと?(赤面)」
藪崎「つーか数えんでええ!私が言いたいのは、私はアンジェラと違って処女やってことや!穢れ無き乙女の処女以上の貢ぎもんがあるか!」
豪田「あのヤブさん、うちのシゲさん山神様か何かじゃないんですから」
国松「(赤面)それに大きな声で処女処女言わないで下さい」
台場「それに我々腐女子は、処女非処女に関係無く、心は穢れていると思いますよ」
藪崎「うっ、それを言われると…」
アンジェラ「ならばヤブさんも仲間あるね」
藪崎「お前だけはちゃう!くそー指折って男の経験自慢しおって、勝ったと思うな!」
神田「はいはいはい、もめるのはそれぐらいにして下さい。とにかくじっくり時間かけて、じわじわと行くのだけは忘れないで下さいね」
こうしてこの日、「斑目先輩を男にする会」が結成された。


53 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その6:2007/01/14(日) 13:49:06 ID:???
斑目は会場内を見下ろして、1人佇んでいた。
その視界の中では、1年男子たちとクッチーが忙しく動いていた。
有吉が日垣、浅田、岸野に並ぶ心構えを教えている。
(伊藤はニャー子と別行動のようだ)
有吉「いいかい、君たちの任務は同人誌を買うことじゃない、並ぶことだ。完売なら即時撤退、ただし並ぶ時は潰れても並ぶんだ」
ここまで声は聞こえないが、口の動きから大体こういうことを言ってると推測出来た。
かつて笹原に同じようなことを教えたのを思い出し、斑目は1人苦笑する。
一方ループの帝王クッチーは、1人マイペースでズンズン買い進めていた。
もはや斑目の動体視力では捕捉出来ない、まるで数メートルごとにテレポートしてるような動きだ。
「朽木君も成長したなあ…」

日垣、浅田、岸野、伊藤、そして国松、この5人はアニメや漫画のオタとしては初心者レベルで、会話してみると呆れるほど知らないことが多かった。
彼らが入会してからの3ヶ月ほどの間、斑目は非常勤の初級オタク講座の講師のような役割を担っていた。
荻上会長は絵描きとして特化したオタなので、案外オタの一般常識の抜けが多い。
コスプレに特化した大野さんも同様だ。
クッチーは就職活動中(それでもしょっちゅう部室に来るが)の上に、作品の好き嫌いが激しくオタ知識が偏っているので、初心者向けではない。
恵子は同人誌やエロゲーなどには興味を示しているが、オタ知識の基本は出来ていない。
今のところ現役会員で、初心者5人に1番バランスの取れたオタ一般常識を教えられるのは、1年の有吉と神田だけだった。
(腐女子四天王が初心者向けでないことは言うまでもない)
その2人にしても、ここ10数年ほどの作品についての知識は斑目に匹敵するが、それ以前の作品についての知識には不安が残る。
(ヤマトやガンダムなどの超メジャーな作品は押さえているが)
アニメや漫画について語る上で、70〜80年代は避けて通れないという信念を持つ斑目は、必然的に有吉と神田の穴を埋めるような形でフォローするようになった。


54 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その7:2007/01/14(日) 13:51:45 ID:???
だが彼らは元々は田中に近いタイプの、1人1芸のマイペース型のオタだったので、日垣と国松に田中がコス制作技術を伝承し始めた頃ぐらいから、各々個性を発揮し始めた。
浅田と岸野は元写真部で、写真のスキルはもちろん、アウトドアライフやサバイバルの知識やスキルは半端では無い。
伊藤は脚本やラノベやSSを書く為の修業の一環として、ドラマや映画を数多く見ていたし、小説も数多く読んでいた。
日垣と国松は田中に師事してコス作りを習得しつつある。
そして国松は、元々は筋金入りの特撮オタだ。
こうして彼らは早くも独自のオタク道を進み始めていた。
もはや斑目が彼らにしてやれることは、オタク一般教養面での細かい補完と、オタモラルを説くぐらいであった。
とは言え、斑目にとって今の現視研はそれなりに居心地は良かった。
礼儀正しい1年生たちは、本心でどう思ってるかはともかく、彼にそれなりの敬意を表し、それなりに会話もある。
まあもっとも、1年女子たちにとっては何時の間にか総受けキャラと認定され、いじられキャラと化していた。
だがそれとて今まで「可愛い女子の後輩に構われる」というシチュエーションに恵まれていなかっただけに、それはそれで悪くなかった。
なのに斑目の心の中には、何か満たされない隙間のようなものが常にあった。
それが何かは彼自身にも分かっていた。
「結局のとこ、俺はまだ春日部さんへの気持ちを吹っ切れてないんだ…」

かと言って斑目に、今さら春日部さんをどうこうしようという積もりは無かった。
それは単に振られることが怖いせいだけではない。
今の春日部さんとの関係を壊したくないし、春日部さんの幸せを壊したくないし、仮に自分が対抗できるスペックがあるとしても、高坂の幸せも壊したくなかった。
彼は高坂に含むものは無かった。
よく分からないところも多いけど、いい奴だし人としてもオタクとしても優秀だし、後輩であるにも関わらず尊敬し一目置いていた。
斑目は臆病で気弱だが、裏を返せば心優しい気配りの人でもあるのだ。


55 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その8:2007/01/14(日) 13:54:28 ID:???
就職してから何ヶ月か経ったある日、斑目は会社の人たちと一緒に飲みに行った。
後半はカラオケ大会となり、ある先輩が「恋するカレン」を歌った。
斑目の横でそれを聞いていた、別の先輩がポツリと言った。
「俺嫌いなんだよこの歌、特に今のフレーズがさ」
彼の嫌いなフレーズとは、次の部分だった。
「かた〜ちの〜無い優〜しさ〜、そ〜れよ〜り〜も〜見〜せ〜か〜けの〜、魅力を選〜ん〜だ〜♪」
「そう言うけどさ、そんなの分かんないじゃねえか。もしかしたら2人の間には、傍目には分からない心の絆があるのかも知れないじゃねえか」
先輩はさらに続けた。
「そりゃ振られた方の気持ちとしてさ、自分の恋愛感情だけが純真無垢で、他人の恋愛感情はただやりたいだけだと思いたい、それは分かるよ」
「まあ確かにそう思っちゃいますよね」と合いの手を入れる斑目。
「でも斑目よう、くっついちまった男女の仲なんざ、所詮傍から何言っても野次馬のゴシップでしかねえんだよ。ほんとのとこどうなのかは、本人たちにしか分かんねえんだよ」

実は斑目、2人は所詮ハイスペックの美形同士がくっついただけで、ひょっとしたら卒業後も恋焦がれ続けている自分こそがふさわしい相手では、と秘かに考えたことがあった。
だが前述の先輩の話を聞いてから、2人には2人にしか分からない絆があり、それに自分が介入する資格も権利も無いと考えるようになった。
そして春日部さんへの気持ちを吹っ切ることを決意した。
だからあの2人の幸せを願う気持ちに偽りは無い積もりだ。
だがそれでも、彼は胸中に自分でも上手く説明の出来ない「何か」がしこりのように残り続けていることを自覚していた。

「ほんと未練がましい、みっともない男だよな、俺って…」
斑目は自嘲的な笑いを浮かべると、売り場に向かって歩き始めた。
その背中には、自身のみっともなさと格好悪さを受け入れた男の哀愁が滲んでいた。
この時、彼はまだ知らなかった。
その哀愁を放って置けない乙女たちが動き始めたことを。


56 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その9:2007/01/14(日) 13:57:11 ID:???
1年女子たちは散開し、それぞれの担当エリアに並んだ。
担当エリアが近い台場と沢田が、列が進むのを待つ間、先ほどの話の続きに興じる。
台場「ねえさっきのスーちゃんの提案だけど、あれも何かの台詞っぽかったけど、元ネタ分かる?」
沢田「あの『男にする会っちゅうのを作ったらどうじゃろ』ってやつ?漫画やアニメの知識は、晴海の方が私より上なんだから、晴海が分かんないんなら私に分かる訳無いわよ」
台場「うーん、広島弁使うアニメや漫画なんて、『カバチタレ』か『はだしのゲン』ぐらいしか知らないわね。何だろう?」
伊藤「その台詞の元ネタは多分、『県警対組織暴力』だと思うニャー」
背後から突如かかった声に驚いて振り返る2人。
何時の間にか2人の後ろに、伊藤とニャー子が立っていた。
沢田「伊藤君、聞いてたの?」
台場「それよりその県警対何とかって?」
伊藤「『県警対組織暴力』、70年代の東映の実録やくざ映画のひとつだニャー」
沢田「まさか、いくら何でもスーちゃん、そこまで知識無いでしょ?」
そこへちょうどスーが歩いてきた。
伊藤「ちょうどいいから試してみるニャー。ねえねえスーちゃん、優柔不断なやくざの親分に子分がひと言」
沢田・台場「?」
スー「(松方弘樹似のドスの効いた声で)神輿ガヒトリデ歩ケルチュウンヤッタラ歩イテミイヤ!」
沢田・台場「!」
伊藤「やくざが敵の縄張りで暴れる前にひと言」
沢田・台場「?」
スー「(松方弘樹似のドスの効いた声で)ココイラノ店、ササラモサラニシチャレイ!」
沢田・台場「!」


57 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その10:2007/01/14(日) 14:00:12 ID:???
伊藤「うーん、これはちょっとまずいかニャー?対立してる組が売春をシノギにしてることに対し、やくざがそれを非難するひと言」
沢田・台場「?」
スー「(千葉真一似の声で)言ウテミタラアレラハ、○○○ノ汁デ飯食ウトルンド!」
沢田と台場はもちろん、周辺の客たちまでもが思わず「ブッ!」となる。
○○○とは、関西での女性器の俗称だったからだ。
伊藤「うーんそこまで言えるとは、スーちゃんかなり東映やくざ映画も見てるニャー」
沢田「(赤面し)ちょっ、ちょっと伊藤君、女の子に何てこと言わせるのよ!」
台場「(赤面し)そっ、そうよ、ニャー子さんも呆れてるじゃない!」
確かに傍らで、ニャー子はボーっとしていた。
だがやがてポツリと言った。
ニャー子「伊藤君って、物知りだニャー」
伊藤「(照れて)いやあ、それほどでも」
こける沢田と台場。
沢田「それで済ますのか、ニャー子さん?」
台場「愛の力って偉大ね…」
呆然とする腐女子2人だったが、「斑目先輩を男にする会」について猫カップルに口止めすることは忘れなかった。

荻上会長は笹原の買い物に付き合っていた。
とは言っても、笹原は昔ほどがっついて買い漁っていない。
1度作る側に入るとどうしても作品を冷静に客観視してしまい、衝動的な買い方はしなくなるものらしい。
それに今回は合間に取材をしなければならないというのもある。
そんな訳で、1時間と回らぬ内に主だった買い物は終わった。
あとはA先生への資料用を買うだけだが、それも1年生たちの分担購入の範囲内でほぼ賄えそうだ。
今日は2人ともコスプレの予定も無いから、ようやく笹荻は3日目にしてノビノビと2人きりの時を楽しめた。


58 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その11:2007/01/14(日) 14:02:50 ID:???
笹原と荻上会長の前方の人混みが左右に分かれた。
その間を十数人の男女が、こちらに向かって歩いて来る。
全員白衣だ。
みんな白衣姿が妙にさまになっている。
男たちの何人かは、首から聴診器をぶら下げている。
さらに男女ともIDカードらしきものを胸に付け、胸ポケットにはボールペンが数本刺さっている。
女性は化粧気がスッピンに近い最小限で、マニキュアやネイルアートをしてる者は居ない。
コスプレにしては、やけに細かくリアル過ぎる。
お客さんたちが退いて道を開けたのも、本物の医者や看護師に見えるせいかも知れない。
その一団の最後尾に、他の者たちに比べて縦にも横にも大きい人影が見えた。
その白衣の巨体に、笹荻は見覚えがあった。
いや正確には、見覚えのある男の面影があった。
白衣の巨漢は、卒業前に比べて激痩せした久我山だった。
久我山が何やら声をかけ、白衣の一団は停止した。
久我山「さっ笹原、それに荻上さん、ひっ久しぶり」
笹原「やっぱり久我山さん…ですよね?お久しぶりです」
荻上「こんちわ」
笹原が自信なさそうな発言をしたのも無理は無かった。
新会員たちが入った頃はたびたび部室に顔を出していた久我山だったが、その後また忙しくなってここ3ヶ月ばかりは姿を見せてなかった。
春に会った時、既に久我山は少し痩せていた。
とは言っても世間一般的には十分にデブであった。
だが今日会った久我山は、デブには違いないが病的な太り方はしていなかった。
適度に筋肉と混ざり合ったようなズングリとした太り方、例えるならラグビーの選手が引退して太った、そんな感じの太り方だ。
笹原「痩せましたね、久我山さん」
久我山「まっ、まあね。今では百キロ無いよ。90ちょいぐらいかな」


59 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その12:2007/01/14(日) 14:05:31 ID:???
白衣の1人が話に割り込んでくる。
医師A「久我山君、この2人は?」
久我山「あっせっ先生、この2人、私の大学のこっ後輩の笹原と荻上さんです」
笹原「先生?」
久我山「この方は、おっ俺の取引先の病院の外科の先生」
荻上「じゃあ他の方々もひょっとして…」
久我山「みっみんな取引先のお医者さんや看護師さんや薬剤師さんだよ」
荻上「なるほど、道理で白衣がさまになり過ぎてる訳ですね」
笹原「ひょっとして久我山さん、これって接待ですか?」
久我山「そっそうだよ。みなさん俺の話聞いて、1度コミフェスに来てみたいとおっしゃったので、おっお連れしたのさ」
医師A「君が笹原君か。久我山君から聞いたことはあったけど、思ったより小柄だね」
笹原「はあ…(意図がよく分からない)」
医師A「いやあ君有名なんだよ、うちの病院で。久我山君と喧嘩した男として」
笹原「えっ?」
久我山の方をチラリと見る笹原。
久我山「(医師Aに)けっ喧嘩だなんて。彼とは単に口論になっただけです!」
医師A「そうなの?」
若い看護師が話に割り込む。
「何だそうだったの?うちの医局じゃ笹原さん、久我山さんをボコボコにしたって有名よ」
笹原「ボコボコって…久我山さーん(汗)」
久我山「すっすまん。雑談中にちょろっと口論した話をしたら、変な尾びれが付いて噂広がっちゃったみたい」
笹原「いくら何でも…付き過ぎでしょ尾びれ」
別の医師が声をかけてきた。
「まあ気にするなよ笹原君。うちの病院なんて君の事、『久我山殺し』って呼んでるみたいだけど大丈夫大丈夫、みんな洒落で言ってるだけだから」
笹原「洒落になってませんって…」


60 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その13:2007/01/14(日) 14:07:31 ID:???
その後笹原は、その場に居た医師や看護師や薬剤師全員に対し、自分についてどんな噂が飛び交っているか聞き取り調査した。
噂は予想以上に膨らんでいた。
曰く、笹原が元暴走族のヘッドで百人相手のタイマンに完勝した。
曰く、笹原が久我山を3階の部室の窓から投げ捨てた。
曰く、喧嘩の原因は絵描きの女の子(荻上会長のことらしい)の取り合い等々…

笹原はそれらの噂を全て訂正するように、その場に居た白衣全員に約束させた。
医師たちは素直に応じた。
「分かった。うちの医局内については、ちゃんと訂正しておく」
「分かりました。私も患者さんたちに話したこと訂正しておきます」
「僕も今日帰ったら、自分のブログ訂正しとくよ」
「僕も2ちゃんねるに書いたネタ、訂正しとくよ」
医師たちの真摯な対応に、いったいどこまで噂が広がっているのかと却って不安になる笹原だったが、気になっていたことの質問も兼ねて話題を変えることにした。
笹原「ところで先生方、今日は何で白衣なんですか?」
医師A「これでも一応コスプレの積もりなんだけどね」
荻上「何のコスプレなんですか?」
医師A「(後ろの方に居る若い医師に)君、音楽スタート!」
若い医師は、片手にぶら下げていたラジカセのスイッチを入れた。
すると音楽が流れ始めた。
その音楽には聞き覚えがある感じがした。
ファーストガンダムで、本編の終了間際にホワイトベースが飛んで行く時に流れる音楽に似ていた。
だが医師Aは若い医師を叱り付けた。
医師A「こっ、こら君、これは田宮二郎の方じゃないか!私は唐沢寿明の方にしろと言ったじゃないか!」
その言葉で笹荻は悟った。
「『白い巨塔』か…」


61 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その14:2007/01/14(日) 14:09:43 ID:???
だが医師たちの方は大変なことになっていた。
若い医師「もっ、申し訳ありません!」
医師A「もういい、君は減給だ!」
若い医師「ええ、そんなあ…(半泣き)」
そこへ久我山が割り込んだ。
久我山「あっあの先生、お言葉ですが、こっこの場合は田宮二郎バージョンの方が場の空気には合ってると思います」
医師A「それはどういうことかね?」
久我山「たっ田宮二郎バージョンの『白い巨塔』のテーマ曲を作曲したのが、わっ渡辺岳夫だからです」
合点の行く笹荻。
「どおりで聞き覚えがある感じがする訳だ」
久我山「見て下さい、まっ周りのお客さんの反応を」
周囲を見渡す医師A。
見ると30代以上と思われる、比較的年配のオタたちが足を止め、感心したような顔で医師たちを見ていた。
彼らの声が聞こえてきた。
「見ろよ『白い巨塔』のコスだぜ。しかも田宮二郎バージョンのとは、渋い選曲だな」
「普通なら唐沢にするとこだけど、あの先生たち分かってるじゃん」
久我山「わっ渡辺岳夫は、主に70年代のテレビアニメやドラマの主題歌をたくさん作曲した、にっ日本のアニメ史を振り返る上で避けて通れないキーパーソンなんです」
医師Aは若い医師に近付き、軽く肩を叩いてこう言った。
「怪我の功名だったな。来月から昇給だ」
どうやら久我山の言ったことを分かってくれたようだ。
若い医師「あっ、ありがとうございます!」


62 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その15:2007/01/14(日) 14:11:17 ID:???
医師A「(笹荻に)それじゃあ私たちはこれで。そうそう忘れてた。(看護師の1人に)君、例の台詞を。(若い医師に)じゃあそれに合わせて、もう1回ミュージックスタートだ」
看護師「財前教授の、総回診です!」
再びテーマ曲を流す若い医師。
それに合わせて歩き出す医師たち。
2人にそっと囁く久我山。
久我山「あっあの若い先生、あの病院の契約取る時、いっいろいろ世話になったからね」
笹原「よかったですね、久我山さん」
久我山「そっそんじゃまた」
久我山は医師たちを追って小走りで走り去った。

昼食直前、笹原と荻上会長は漫研の売り場に立ち寄った。
今日は男性向けの出品だ。
売り子を務めていたのは、加藤さんと藪崎さんだった。
そして客としてスーが来ていた。
例によってスーがピョンピョン跳ねている。
藪崎「ほれほれ、本やったらやるから、そないピョンピョンせえへんの」
スー「オオキニー!」
藪崎「ほう、なかなか大阪弁も分かってきたなあ」
加藤「今のは種ガンダム版のハロの物真似じゃない?」
藪崎「そうでんな。やるなあスー」
荻上「すっかり仲良くなったね、スーちゃんとヤブ」
藪崎「まあな」
荻上「そう言えばヤブ、前スーちゃんに会った時は逃げてたわね」
藪崎「アホ、あれはネタや。『あずまんが大王』の真似や」


63 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その16:2007/01/14(日) 14:13:25 ID:???
そうは言ったものの、実は藪崎さんは元来外人が苦手だった。
藪崎さんは中学高校と英語の成績が悪かった。
おまけに同級生にハーフで美人でモテモテで英語ペラペラの帰国子女が居て、彼女と比べられて辛い思いをしたことがトラウマになっていた。
その為英語だけでなく外人に対しても、何時の間にか苦手意識が染み付いていたのだ。
だが去年の冬コミで荻上会長がスーと一緒に居たことで、彼女の負けん気魂に火が点いた。
荻上会長が大野さん並みに英会話が出来ると勘違いしたのだ。
年が明けてから外人が講師を務める英会話学校に通い始め、何とか話せるレベルまで上達した。
かなりブロークンで「ちょっとジャストモーメントプリーズや」といった具合に関西弁混じりの独特の話し方ではあったが、発音は悪くないらしく不思議と意味は通じた。
そして同時に外人コンプレックスも克服出来た。
もっともそのことは、荻上会長にも内緒にしていたが。

ひと通り買い物の終わった1年男子たち(ここから伊藤も合流した)とクッチーと斑目は、1度集まって戦利品を見せ合う。
ちなみにニャー子は、伊藤に気を使ってここから別行動を取った。
さすがに女子たちの前で男性向け同人誌を広げる度胸は、1年男子たちと斑目には無かった。
(クッチーは男の中の男だから、女子の前でも平気で広げられるが)
1年女子たちが買ってくれた分は、後で部室で分配する予定だ。
OBの貫禄を見せて、ごく普通に同人誌を開く斑目。
堂々と同人誌を開き、完全にハアハア顔のクッチー。
そんな2人と対照的に、まるでふた昔ぐらい前の中学生が路地裏で秘かにエロ本を見せ合うかのように、周囲を気にしつつコソコソと遠慮がちに同人誌を開く1年男子たち。
朽木「何々みんな、そんなコソコソ見ることないにょー。ここは天下の夏コミ会場ですぞ」
斑目「まあ朽木君のレベルはいきなりは無理だろうけど、そんなに恥ずかしがるこた無いよ。どうせ周りはみんなオタだ。みんなもやってることは一緒さ」


64 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その17:2007/01/14(日) 14:15:26 ID:???
確かに周囲のお客たちも、堂々と同人誌を読んでいる。
朽木「そうそう、みんな少しは有吉君を見習うにょー」
赤面でコソコソ読んでる1年男子たちの中でただ1人、有吉だけは平然と真顔で同人誌を読んでいた。
伊藤「(赤面)有吉君、何でそんなに平然と読めるニャー?」
有吉「慣れだよ。高校の時から夏コミ来てたら、人前で同人誌読むぐらいどうってこと無いよ。まあさすがに女子の前では無理だけどね」
日垣「有吉君凄い…」
浅田「有吉君かっこいい…」
岸野「有吉君、漢だ…」
有吉「(照れて)よしてよ」

昼食を終えて、1年女子たちと大野・アンジェラコンビ、それに斑目はコスに着替える。
大野さんとアンジェラのコスは、アンジェラの希望により「ふたりはプリキュア」だ。
ちなみに「ふたりはプリキュア」は世界各地で放送されているが、この時期アメリカではまだ放送されていなかった。
だがこの手の情報収集を怠らないアンジェラの希望により、大野さんが送っていたのだ。
(まあ厳密には法的にまずいけど)
それをアンジェラが気に入ったのだ。
一方1年女子たちと斑目のコスは「さよなら絶望先生」だ。
斑目なら絶望先生が似合うと睨んだ神田のプロデュースだ。
斑目のコスは、神田の祖父の着物だった。
そして1年女子たちのセーラー服は、豪田の高校の制服を友人や後輩から借りた物だ。

本来男子更衣室に用があるのは斑目だけだが、何故か1年男子たちも一緒だった。
いや正確には、更衣室に行く直前から付いて来ていた。
斑目「あの、君たち何で俺に張り付いてるの?」
浅田「神田さんに頼まれたんです。斑目先輩が土壇場で逃げないように見張ってろって」
斑目『読まれている…』


65 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その18:2007/01/14(日) 14:17:52 ID:???
広場は既に着替え終わった1年女子たちと大野・アンジェラコンビ、それに大野さんの学生としては最後のコスプレの晴れ姿を撮るべくカメラを構えた田中で賑わっていた。
プリキュアコスの大アンコンビを見て呆然とする1年女子一同。
1年女子一同「このプリキュア、胸デカ過ぎ…」
つい思った通りを口にしてしまう。
確かにオリジナル版プリキュアがスレンダーな女子中学生なだけに、大きな胸以外にも全体的に肉付きの良過ぎる大アン版プリキュアは違和感があった。
大野「(汗)ハハハ、まあアンジェラのリクエストですから…」
アンジェラ「要はなり切れればノープロブレムあるね。HEY、カナコ!」
アンジェラの呼びかけを合図に、2人はいろいろとポーズを決めて見せる。
1年女子一同「おー!」
どうやらアンジェラの言葉を納得したようだ。

一方1年女子たちもキャラを作り込んでいた。
あびる役の沢田は、包帯と絆創膏とお下げ髪ズラで殆ど原形を留めていない。
マリア役の国松は、顔や四肢に黒人メイク用のドーランを塗りたくっている。
カエレ役の巴は、金髪のヅラを被り、ただ1人だけカッターシャツにチェックのミニスカートの制服だ。
ちなみにこの制服、夏コミ直前に気付いた田中が、予算自腹でひと晩で作った逸品だ。
可符香役の神田は、髪を×状のヘアピンで止めて、鉄腕アトムのように少し髪を立てて後ろに流している。
それらに比べ、藤吉役の台場は殆どセーラー服を着ただけに等しかった。
台場「何で私だけ、殆どキャラ作らなくてOKなの?」
(作者の独り言)モデルになったキャラだからです。
そこへ遅れて、ことのん役の豪田がやって来た。
豪田「ごめん、メイクに手間取っちゃって…」
巴「メイク?(豪田を見て)わっ!?」
巴の悲鳴に振り向く一同。
一同「わっ?!」


66 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その19:2007/01/14(日) 14:20:34 ID:???
みんなが驚くのも無理は無かった。
豪田は可愛くなっていた。
普段の5割増しぐらいで可愛くなっていた。
気のせいか体も若干細くなっていた。
台場「どっ、どうしたの蛇衣子?」
豪田「まあ、一応ネットアイドルって役どころだから、ちょっとメイクに力入れたのよ」
沢田「どういうメイクしたら、そこまで変わるのよ…(冷や汗)」
神田「蛇衣子かーわいー」
豪田「それより千里、この暑いのにコンクリートの上で裸足はやり過ぎじゃない?」
国松「ヨク見ルネ(片足を挙げる)」
豪田「地下足袋?」
国松「田中サンガ作ッテクレタ、地下足袋べーすノ裸足風靴ネ」
豪田「さすがだ、田中さん…」
巴「て言うか千里、片仮名で喋ってるし…」
神田「役作りですね。マリアは役作りは何かしてないの?」
巴「一応用意したわよ。パンチラするキャラだから、見せパン穿いて来た。ほらっ」
スカートをまくってみせる巴。
女子一同「わざわざ見せんでいい!」
次の瞬間、惨劇が起きた。
巴の前方に居た男性のカメコやレイヤーや一般客たちが、一斉に鼻血を吹いたのだ。
そしてその中には、ちょうどコスプレ広場にやって来た斑目と、1年男子たちも居た。
巴「変ねえ見せパンぐらいで?(自分のパンツを見て)あっ…(慌ててスカートを戻す)」
豪田「どうしたの?」
巴「(赤面して)朝寝過ごして慌ててたから、間違えて勝負パンツ穿いて来ちゃった」
女子一同「間違えるな!」
浅田・岸野「(上を向きつつ)撮ったぞ!」
カメラを構えて叫ぶ2人。
他男子一同「(上を向きつつサムアップのポーズ)GJ!」
巴「(スカートを押さえつつ赤面し)いやーん!まいっちんぐ!」
沢田「いやそれ、役作り間違ってるし」


67 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その20:2007/01/14(日) 14:22:32 ID:???
神田「あっ大変、先生倒れてる」
斑目は絶望先生コスのまま気絶していた。
駆け寄る一同。
国松「(斑目の体を探り)大変ダ、瞳孔開イテルヨ。ソレニ心臓止マッテイルヨ」
豪田「片仮名で喋ってる場合か!」
アンジェラ「よしこうなったら、私が人工呼吸で」
沢田「この場合人口呼吸は関係無いと思います」
神田「それに下手したら、完全に心停止しちゃうし」
巴「そんじゃあ私が心臓マッサージで」
台場「斑目さんのか細い体にあんたがやったら、あばら折れちゃうわよ」
大野「えーとえーと」
田中「しょうがねえなあ。とりあえず俺やってみるわ、心臓マッサージ。(1年男子たちに)
君たちは救護班呼んで来て」
1年男子「分かりました!」
走りかける1年男子たち。
そこへスーがトコトコとやって来た。
そして斑目に近付く。
しばし呆然と見つめてしまう一同。
スー「(斑目の心臓に左フックを放ちつつ)てりおすっ!」
固まる一同。
豪田「ちょっ、ちょっと!何てことするのよ!?」
巴「そうよ、いくら何でも無茶よそれは!」
だが次の瞬間、斑目の心臓は動き出し、むっくりと起きた。
神田「やったあ、先生生き返ったー!」
沢田「スーちゃん凄い!」
国松「先生大丈夫カ?」


68 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その21:2007/01/14(日) 14:24:35 ID:???
斑目は本人の生命だけでなく、キャラ作り魂も復活した。
斑目「死んだらどうする!」
神田「(涙ぐみ)やっぱり先生はすばらしい教師です。常に命がけでキャラ作りに臨んでらっしゃる」
斑目「いや…あのそーゆーんじゃないから。本当に死にかけてただけですから。(巴に)それより何ですか、女の子が簡単にパンツ見せたりして、はしたない」
巴「申し訳ありません、まさか勝負パンツ穿いて来たとは思わなかったんで、つい…」
この時巴は、カエレというより大和撫子の別人格の楓に近い精神状態になっていた。
沢田「あの先生、今時パンツぐらいでそんなに目くじら立てなくてもいいと思います」
豪田「そうですよ、今時の女の子なんて超ミニでパンツ見せまくりですよ」
斑目「いいですか皆さん、男性はパンツさえ見れれば何でもいいという訳ではないのです。パンモロではなくパンチラでなければ萌えないのです」
神田「わーシゲさん先生ぽくなってきた」
国松「デモ綺麗事言ッテテモ、結局ノトコぱんつ見タインダロ?」
斑目「そりゃまあ見れないよりは…何を言わせるんですか!絶望した!パンチラの美学を理解出来ない、近頃の女子高生に絶望した!」
神田「さすがは先生、もうすっかり絶望先生ですね。それじゃあ先生も無事復活し絶好調みたいですので、サプライズをお呼びしますか」
一同「サプライズ?」
携帯を取り出して話し始める神田。
神田「もしもし、用意はいいですか?…分かりました、じゃあお願いします」
豪田「何なのサプライズって?」
神田「(ニッコリ笑って)すぐ分かりますよ」
斑目「何やら嫌な予感が…」


69 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その22:2007/01/14(日) 14:26:59 ID:???
十数分後、サプライズの正体が分かった。
加藤「ごめんなさい、遅くなって」
声に振り返った一同は凍り付く。
やって来たのは「やぶへび」の面々だった。
神田「改めてご紹介します!特別参加の『やぶへび』の皆さんです!」
加藤さんはシーツに包まって、顔だけ(と言っても相変わらず前髪で隠れているが)出している。
藪崎さんは明治時代の女学生のような、下は袴の着物姿だった。
そしてニャー子はセーラー服だったが、背中に「もじもじもじ」と書かれたプラカードのような板を背負っていた。
豪田「加藤さんもしや…霧なの?」
巴「まあ髪型と美形なのは合ってるけど、ちと背高過ぎない?」
台場「藪崎さん…まさかまとい?」
素早く接近する藪崎さん、台場にヘッドロックをかます。
藪崎「そのまさかって何やねん?まといにしてはデブ過ぎる言いたいんか?」
台場「言ってません言ってません!ギブギブ!」
さっと台場から離れ、斑目に接近する藪崎さん。
斑目「(赤面し)なっ何を?」
藪崎「(赤面し)やっ役作りですわ」
神田「藪崎先輩、本当は万世橋わたる君の予定だったんですけど、絶望先生が斑目さんだと知ったら、強引にまといやりたいって言い出したんですよ」
藪崎「こっこら、それを言うな!」
神田「だから急遽親戚のお姉さんに頼んで、大学の卒業式の時に使った着物借りて来たんですよ。まあ乙女心から出た我がままですから、仕方ないですけどね」
斑目「あの、それはどういう…」
藪崎「(最大赤面で)言うなっちゅーに!」
沢田「ニャー子さんのは芽留ですね」
沢田の携帯が鳴る。
沢田「(携帯を出し)あっメールだ…ニャー子さん?…何々、『その通りだニャー』?うーん、役作り出来てるんだか出来てないんだか…」


70 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その23:2007/01/14(日) 14:30:11 ID:???
神田「ねっどうです先生?ピッタリでしょ、『やぶへび』の皆さん?」
誇らしげに胸を張る神田。
神田「加藤さんの霧は、本当は毛布がいいんですけど、さすがにこの暑さじゃまた犠牲者出ちゃうからシーツにしました」
斑目の前に、ペタリと体育座りで座る加藤さん。
斑目は加藤さんと面識はあったが、あまり話したことは無かった(当然素顔は見たことが無い)ので、思わずドキリとして赤面する。
神田「ほら先生、役作り役作り」
斑目「そっ、そうですね。(しゃがんで加藤さんの前髪に手を掛ける)失礼」
加藤さんの前髪を左右に開ける斑目。
まだ赤面していて手が震えている。
こんな感じで女性の髪に触れた経験は、斑目には無かった。
初めて見る加藤さんの美人の素顔に、思わず見とれてしまう。
他の会員たちやカメコたちも思わず「おお!」とどよめく。
だがそこは斑目、オタクの中のオタクだ。
こんな場合でもキャラ作りは忘れない。
斑目「美人だ。しかも白い」
台場「わーシゲさん、マジで言ってる」
赤面しつつ、目を妖しく光らせる加藤さん。
斑目「(思わず素に戻り)えっ?」
加藤「(赤面し)あの…斑目先輩」
斑目「はい?」
加藤「(赤面)私、男の人に前髪開けられるの、初めてなんです」
斑目「そっ、それはどういう…」
加藤「(最大出力で赤面)…責任…取って下さいね」
神田「残念ながらこのクラスの女子は全員先生のお手付きなんで、それは無理でーす」
マジでうろたえる斑目。
斑目「人聞きの悪いこと言わないで下さい!」


71 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その24:2007/01/14(日) 14:32:41 ID:???
加藤さんの気配が変わった。
顔に影が差し、頭上に「ゴゴゴゴ」という擬音の文字が見えそうな感じだ。
そしてシーツをパッと脱ぎ捨てる。
加藤さんはセーラー服を着ていた
一同「着てたんだ、セーラー服」
神田「一応用意しといたのよ」
加藤さんの髪型は、先程までと一変していた。
頭頂部の正中線で、きっちりと左右に分け目が出来ていた。
そう、彼女はキャラを途中で木津千里に変化させたのだ。
しかも顔は鬼の形相で、いつの間にか手には金属バットを持っていた。
通常モードではなく、殺人鬼モードの千里だ。
斑目「(怯え)ひっ!」
加藤「裏切ったな。私の純情を弄んだな」
田中が止めに入る。
田中「加藤さん!コミフェスで長物は禁止だ!」
斑目「そっちかい!」
加藤さんはバットを捨てた。
加藤「田中さん、素手なら問題無いですよね?」
田中「まあ腕切り落とす訳にも行かないからね、オケー!」
斑目「田中!許可するなよ!」
田中「お前もいい加減、責任取って身を固めろや」
斑目「責任取んなきゃいかんようなこと、しとらんっつーに!」
田中「まあつねられるぐらいで済めばいいじゃないか」



72 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その25:2007/01/14(日) 14:34:44 ID:???
その時加藤さんが、500円玉を取り出して前に突き出した。
一同「?」
次の瞬間、加藤さんは親指・人差し指・中指の3本で500円玉を折り曲げた。
斑目「ひっ!?」
田中「(青ざめて)…まあ、つねられるぐらいで済めば…」
斑目「良かないっつーの!」
加藤「つねってやる〜〜〜〜!」
斑目「いやあああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
全力疾走で逃げる斑目。
その斑目の後を加藤さんが追う。
それを止めようと藪崎さんも追う。
藪崎「ちょっ、ちょっと加藤さん、私の斑目さんに何しますねん?」
さらにはアンジェラや1年女子たち、それにスーもその後を追う。
それを止めようとする1年男子たちや、面白そうと判断したかニャー子までも追いかけっこに参加し、混乱は加速する。
だが周囲はアトラクションと思い、誰も止めない。
斑目「いやあああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

田中と大野さんは追いかけっこを呆然と見つめていた。
そこへ様子を見に、荻上会長と笹原、それに途中で合流したクッチーがやって来た。
事情を聞いてあ然とする笹荻。
笹原「斑目さん、けっこうもてるんだ…」
荻上「そうですね」
大野「でも、やっぱり総受けですね」
荻上「総受けですね」


73 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その26:2007/01/14(日) 14:38:29 ID:???
見ている内にお祭野朗のクッチーの血が騒いだ。
朽木「何か面白そうですな。自分も参加するであります!」
こうしてクッチーまで追いかけっこに加わった。
笹原「何か『うる星やつら』のアニメ版のオチみたいだな…」
荻上「そろそろ止めましょうか?」
大野「まあまあ、もう少し見ていましょうよ」
荻上「大野さん、この状況面白がってません?」
大野「斑目さんがたくさんの女の子に追い回されるなんて、早々あることじゃないですし」
田中「まあ案外、いい思い出になるかもな」
笹荻『鬼だ、この2人…』

コスプレ広場では、相変わらず追いかけっこが続いていた。
臆病者ゆえの逃げ足の速さのせいか、なかなか斑目は捕まらない。
だがそんな斑目が突然停止し、追手一同もそれに合わせ、まるで椅子取りゲームの音楽が止まった瞬間のように停止する。
斑目の数メートル前に、鬼の形相の春日部さんが立っていたのだ。
斑目「あの…春日部さん?」
春日部「斑目、お前この娘たちに何したんだ?」
斑目「しとらんしとらん、何もしとらんって!」
春日部「遠くからでも聞こえてたぞ。乙女心を弄んだとか、裏切ったとか」
どうやら加藤さんが追いかけながら叫んでいたことが、かなり遠くまで響いていたらしい。
斑目「してねえっつーの!」
春日部「言い訳無用!」
久々に春日部さんの、全体重を乗せた右ストレートが炸裂した。
斑目はギャラクティカ・マグナムを喰らったように、数メートル吹き飛んで気絶した。
でも何故か、斑目の寝顔(と言うのか?)は安らかだった。


74 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その27:2007/01/14(日) 14:40:44 ID:???
数分後、斑目は意識を取り戻した。
笹原がまた気付け薬を使ったのだ。
現視研一同と「やぶへび」の面々は、心配そうな顔付きで斑目を見つめていた。
そしてその中に春日部さんも居た。
斑目「春日部…さん?」
春日部「ごめんよ斑目(頭下げつつ両手を合わせ)ほんとスマン、事情も訊かずに殴っちゃってさ。大丈夫か?」
斑目「(少し顔をそらしつつ殴られた頬を押さえ)大丈夫じゃねえよ。相変わらず暴力女なんだから、ったく」
今回ばかりは春日部さん、平身低頭の姿勢を崩さない。
春日部「ほんとごめんね」
そう言いながらハンカチを出して、斑目の口の端に滲んでいた血をぬぐう。
最大出力で赤面する斑目。
春日部「ん?どした?」
斑目「いやー殴られたことはたくさんあったけど、介抱されたことは無かったなと思ってね。そう考えたら案外今回のは役得だなと思ってさ」
春日部「(苦笑し)相変わらず馬鹿なこと言ってるね、ったく」
斑目「そう言えば春日部さん、今日はどうしたの?初日には高坂に差し入れに来てたって聞いたけど」
春日部「今日はデートよ」
親指で後方を指す春日部さん。
その指の先には、かなり離れて高坂が立っていた。
例のごとく、微笑みを浮かべつつ会釈する。
斑目もそれに応え、「ようっ」という感じで片手を上げた。
斑目「夏コミでデートか、春日部さんも丸くなったもんだな」
そういう斑目の口調は、どこか寂しげだった。
春日部「慣れただけよ。『しょうがないなあ』って目で見てるのは相変わらずよ」
斑目「まるでバカボンのママだな」
春日部「(苦笑)それ何となく分かる」


75 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その28:2007/01/14(日) 14:43:13 ID:???
斑目と春日部さん以外の一行は、何時の間にか2人から少し距離を置いていた。
古くからの現視研の面々と1年男子たち、そして「やぶへび」の面々と1年女子たちの2組に別れて、2人を見守っていた。
神田「どうも斑目先輩と春日部先輩の関係って、私たちが思ってた以上に複雑な感情があるみたいね」
台場「確かに春日部先輩、何か斑目先輩の前では飾らないし、本音ぶつけてるわね」
豪田「それって、ドラマなんかだと本命のカップルのパターンだよね」
沢田「まあ高坂先輩と春日部先輩の関係が表面上、上辺の魅力だけで付き合ってるみたいに見えるからだろうけど、何だか高坂先輩の方が当て馬っぽく思えてきたなあ」
巴「でも春日部先輩、恋愛に関しては徹底的に真摯な人よ。ふたまたとか浮気とかって出来ないと思うわ」
豪田「確かに意識の上ではね。でも、もしかして春日部先輩、無意識の領域では斑目先輩のこと…」
女子一同「うーむ…」
加藤「まあそれは何とも言えないわよ。我々は春日部さんの問題とは別に、独立部隊で斑目さん追うしかないわ」
藪崎「せや、私の愛で斑目さんを立ち直らせたる」
ニャー子「臆面も無く、堂々と言えるようになりましたニャー」
スー「ナリフリ構ッテランナイノヨ」
アンジェラ「そういう攻撃なら私の出番あるね」
神田「あの皆さん、お気持ちは有難いんですけど、あくまでもソフトに、スローに、じっくりじわじわを忘れないで下さいね」
巴「そうそう、試合はまだ1回裏よ。ここはじっくり攻めるべきね」


76 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その29:2007/01/14(日) 14:45:31 ID:???
1年女子たちの相談を傍らで聞いていた荻上会長は、正直感心していた。
実は荻上会長、「斑目先輩を男にする会」が発足したことをアンジェラから聞いていた。
(もちろんその後、口の軽いアンジェラに堅く口止めしたことは言うまでもない)
最初にそれを聞いた時は不安だった。
あのデリケートな斑目に、誰かが春日部さんについて何か言ったらどうなるか分からないからだ。
だが彼女たちは想像以上に斑目のことを理解していた。
だから荻上会長は、彼女たちに斑目のことを任せてみようと思った。
荻上「そういうことでいいですね?」
笹原「うん」
大野「賛成です〜」
田中「まあ斑目、これだけモテモテなら、いつか幸せになれるさ」
朽木「あの、これはどういう…」
事情を知らず戸惑う1年男子たちとクッチーに対し、荻上会長が笑顔で煙に巻く。
荻上「斑目さんがモテモテってことですよ」

コスプレ終了間際、現視研1年女子一同(スー・アンジェラ含む)が大野さんを取り囲む。
大野「あの…これはいったい?」
巴「(ニッコリ笑い)4年間お疲れ様でした!」
他女子一同「お疲れ様でした!」
言い終わるや全員で大野さんを担ぎ上げる。
大野「ちょっ、ちょっと何を?」
巴「みんな行くよ!せーの!
1年女子一同「わっしょい!わっしょい!」
景気良く胴上げを始める。
大野「ひゃ〜〜〜!!!!!!!!!!」


77 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その30:2007/01/14(日) 14:48:03 ID:???
大野さんが悲鳴を上げるのも無理は無かった。
巴やアンジェラ等、極端な怪力人間が散在することで全体の力が均等じゃないこと。
大野さんの体の重心が極端に胸部に集中していること。
それにみんな胴上げに慣れてないことなどが災いして、85年に阪神が優勝した時の吉田監督のように、大野さんは何度も裏返ったり元に戻ったりを繰り返した。
降りてきた時には、大野さんはすっかり目を回していた。
巴「よーし、次は会長行くよ!」
1年女子一同「おー!」
荻上会長に殺到する1年女子一同。
荻上「ちょっと、何で私まで?」
巴「優勝の胴上げと言えば、やっぱり監督もやらないと」
荻上「いや別に優勝してないし…」
豪田「まあまあ細かいことは抜きにしましょうよ」
胴上げされる荻上会長。
荻上「ひえええええ!!!!!!!!!!!」
荻上会長の場合は大野さんよりもきつかった。
大野さんまで胴上げに加わって、さらに全体のパワーバランスが崩れたこと。
荻上会長が小柄軽量なこと。
これらの要因により、裏返るどころか上がるたびに2〜3回転し、しかも恐ろしく滞空時間の長い、スカイハイトルネード胴上げ状態と相成った。
荻上会長が目を回して降りて来るや、巴の号令が飛ぶ。
巴「よし、次は復活記念で斑目先輩だ!」
斑目「ひええ!!!」
痩身軽量の斑目もまた、スカイハイトルネード状態と相成った。


78 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その31:2007/01/14(日) 14:50:40 ID:???
この頃から「やぶへび」の面々や1年男子、それに現視研一のお祭野朗クッチーまでもが胴上げに加わる。
その後も何のかんの理由を付けて、結局現視研会員全員が胴上げされる破目になった。
アンジェラやスーはもちろん、OBや「やぶへび」の面々までもが宙を舞った。
さらには終わりがけにようやくやって来た事情を知らない恵子、果てはたまたま通り掛かった久我山や連れの医師たちまでもが宙を舞う破目になった。
その頃には何か熱病でも蔓延したかのように、周囲のレイヤーやカメコやお客さんまでもが胴上げをやり始め、コスプレ広場全体が祭状態と化した。

夏コミ終了後、打ち上げコンパの会場はメントールの匂いに満ち溢れていた。
最初から胴上げに参加していた者たちの何人かは、結局のべ40人近い胴上げを繰り返した為に腕や肩を痛めた。
そこで浅田と岸野が自前の救急キットに入っていた、湿布薬やインドメタシン系の塗り薬を提供したのだ。
巴「もう誰よ、胴上げなんてやろうって言い出したの?」
豪田「あんたじゃないの、もう!」
沢田「痛たたたたたた…」
荻上「もうみんな、いくら何でもやり過ぎよ!」
そう言いつつも、自分の肩や腕をもむ荻上会長だった。
元気でテンションが高いのは、不死身のお祭野朗クッチーと、最高の素材を前に興奮している国松だけだ。
国松「ねえねえスーちゃん、学祭の時コスやらない?スーちゃん可愛いから、お姉さんいろいろ着せ替えしたいの〜」
大野「うわー国松さん、すっかりやる気ね」
田中「これで俺も肩の荷が下りるな」
スー「押忍、それでしたら是非やってみたいのがあります」



79 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その32:2007/01/14(日) 14:53:37 ID:???
国松「何々?私何でも作っちゃうから」
スー「ケロロ軍曹であります」
一同「ケロロ?」
国松「…でっ、何のコスがいいの?」
スー「自分、クルルがやりたいであります。クークックックッ」
国松「クルルかあ…」
何やら考え込み、現視研の一同を見渡す国松。
国松「ミッチーは身長いくつ?」
神田「160だったと思うけど」
国松「うーん…アウト!彩、身長いくつ?」
沢田「156…ぐらいかな」
国松「…ギリギリ合格!」
荻上「あの国松さん、何を…」
国松「ケロロ小隊って5人いましたよね、1人足りないんです」
荻上「5人揃える積もりなの?」
国松「スーちゃんの身長に合わせようと思ったら、やっぱり彩ぐらいが限度ですから。あとみんなミッチーより高いから、バランス合わないし…」
大野「もしかして国松さんもやる積りなんですか、ケロロコス?」
国松「当然です。スーちゃんと身長釣り合う人が足りませんから。晴海!学祭は着ぐるみ5着だから、予算よろしく!」
ゴトリッ!
テーブル上に大きな音を立てて、台場が算盤を置いた。
それは普段彼女が使っている、一般によく見かける細身の算盤では無かった。
一の桁の球が四つではなく五つ有り、おまけに本体の底は素通しでは無く一枚板になっていて、本体前後左右の板と共に箱状の本体を形成していた。
戦前に使われていたタイプのものだ。
とりあえず凶器として使われたら、普段の細身の算盤より痛そうだ。
台場「あんた現視研潰す気か!5着も着ぐるみ作ったら、学祭の予算が無いわ!」


80 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その33:2007/01/14(日) 14:55:28 ID:???
国松「それならいい方法があるわよ。着ぐるみ5着作って、なおかつ上手くいけば儲けが出る方法が」
台場「どんな方法よ?」
国松「(胸を張り)映画を作るのよ」
一同「映画!?」
国松「タイトルは『妖怪人間ベム・錬金術師アルフォンス・ケロロ小隊・7大怪人地上最低の決戦!』」
今度はあ然とする一同。
豪田「夏コミで使った着ぐるみ流用する気なんだ…」
日垣「うーん、俺はいいけど朽木先輩のスケジュールが大変だな。ベムとアルいっぺんに出そうと思ったら俺だけじゃ無理だし…」
台場が算盤を振り上げかける。
台場「あんたうちに特撮やれるスキルや予算があると思うの?」
沢田「それにその内容だと、どうやって話まとめる気?」
伊藤「こりゃ脚本難しそうだニャー」
国松「大丈夫よ。それらの問題は全部クリア出来るわ」
浅田「ほんとに?」
国松「撮影期間は1日。予備日を入れても2〜3日あれば十分よ。余分なセットや仕掛けは要らない。普通の撮影機材だけ調達すればオッケー」
岸野「どこで撮影する気なの?」
国松「大学の近所の裏山に行けば、適当な空き地や原っぱはあるわよ」
何となく嫌な予感がする一同。
伊藤「でもその条件で脚本書くのは、かなり難しいニャー」
国松「ストーリーは簡単よ。ベムとアルが歩いて来て激突。ベムが怒って喧嘩になり、それをケロロ小隊が止めに入り、ベムとアルがケロロたちやっつけてお終い」


81 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その34:2007/01/14(日) 14:57:41 ID:???
台場が勢い良く算盤をテーブルに振り下ろし轟音を立てた。
台場「『ウルトラファイト』かい!!!」
(注釈)ウルトラファイト
70年に放送された、平日の夕方5分間の帯番組。
当初は「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の格闘シーンを編集し、プロレス風の実況ナレーションを加えた特撮格闘名場面集的な内容だった。
(ナレーターの山田次郎氏の本業はスポーツ中継のアナウンサー)
当然すぐにネタが無くなり、急遽アトラクション用の着ぐるみによる新撮が撮り足されて放送され続けた。
だがその内容たるや、野原や海岸等での寸劇風味の着ぐるみアトラクションショーの実況中継に一気にスケールダウンする。
それでも意外と人気番組で、第2期ウルトラシリーズの牽引役の1つになった。
(71年に「帰ってきたウルトラマン」が始まった後も放送は続いた)

だが台場の激怒と裏腹に、他の1年生たちは国松の案に喰い付いた。
豪田「いいねえ、それ」
巴「なるほど、その手があったか」
沢田「それなら話作るの簡単ね」
伊藤「ほんとほんと、脚本書くのに1時間も掛かりませんニャー」
日垣「なるほど、それなら撮影期間1日で済むから、朽木先輩のスケジュールに合わせて撮影すればいいね」
有吉「僕、ナレーターやりたいな」
神田「有吉君なら弁が立つから、いいかもね」
浅田「ビデオ撮りにすれば、機材も簡単に調達出来るし、編集も簡単だね」
岸野「うち8ミリあるから、それも使って並行して撮ればいいよ。ビデオはフィルムの破損や紛失に対する保険と、撮影の確認用に使ってさ」
アンジェラ「なかなか本格的あるね。ハリウッドの映画は、撮影の時その方法取ってるあるよ」
お祭野朗クッチーもこの話に乗った。
朽木「そういう話なら喜んで参加するにょー」



82 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その35:2007/01/14(日) 15:00:29 ID:???
こうして何時の間にか話の流れは、学祭で映画をやる方向でどんどん進んで行った。
1年生たちの自主性を尊重する荻上会長は敢えて止めない。
だがそれを台場が止めた。
台場「ちょっとみんな!そんな簡単に決めていいの?」
巴「いいんじゃない?予算足りない分はみんなで出し合えば何とかなるわよ」
浅田「いざとなりゃまたバイトするし」
(彼は夏コミの軍資金稼ぎにバイトをしていた)
神田「それより晴海、あなたは映画やりたくないの?予算の問題抜きで考えてみて」
台場「そりゃ面白そうだとは思うけど…って何言わせるのよ!」
神田「なーんだ、じゃあお金の問題クリア出来るなら晴海も賛成ね」
言葉に詰まった台場だったが、やがて意を決して口を開く。
台場「分かった、やるわ」
国松「うっしゃー!」
台場「その代わりみんな、多分カンパお願いすることになると思うから、よろしくね」
1年一同「はーい!」

そんな様子を暖かく見守っていた荻上会長、ふとあることに気付いた。
荻上「あの国松さん、もしかしてケロロ小隊役の1人ってまさか…」
国松「安心して下さい。会長にはちゃんと軍曹さんお願いしますから」
荻上「(滝汗で赤面)ちょっ、ちょっと待って!」
国松「あ、アフロ軍曹バージョンの方がいいですか?」
荻上「いや、そうじゃなくて…」
国松「それともタママの方がいいですか?会長可愛いし。いや待てよ、会長ランファン似だから、忍者つながりでドロロの方がいいかも…」
荻上「だからそうじゃなくて、私がやるのは既定事項なんかい!」
沢田「私がやることも既定事項みたいですけど…」
国松「(目を見開いて涙を流し)会長嫌なんですか?」
朽木「あっ、荻チンが国チン泣かした〜!」
スー「女ノ子泣カセタノヨ!責任取リナサイヨ!」
荻上「もう分かりました!やるわよ!やらせて頂きます!ケロロでも何でも!」


83 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その36:2007/01/14(日) 15:03:59 ID:???
国松「ほんとですか?やったあ!」
飛び付くように荻上会長に抱き付く国松。
だがその時アクシデントが起きた。
国松はアンジェラの真似して、荻上会長の頬にお礼のキスをしようとした。
ところがそこで荻上会長は、飛び付く国松に反応して彼女の方を向いてしまった。
結果国松と荻上会長の唇が重なることとなった。
最大出力で赤面して離れる2人。
国松「会長に…ファーストキス差し上げちゃった…」
一同「何ですと!?」
荻上「あっ、あの国松さん…」
何が何やらで言葉の出ない荻上会長。
国松「責任…取って下さいね」
荻上「むっ、無理です!」
国松「なーんてね。言いませんよ、そんなこと。会長にならあげてもいいし、ファーストキス」
ホッとする荻上会長。
だが次の瞬間、2人は背後に殺気を感じた。
荻上・国松「ひっ!?」
豪田「私ですら荻様ハグまでなのに、千里ったら唇まで…」
巴「荻様、千里だけってのはズルいですよ…」
沢田「そうですよ、私も荻様とキスしたーい」
荻上「ちょっ、ちょっとみんな落ち着いて。今のは事故だから、あくまでも…」
じわじわと近付く1年女子たち。
台場「じゃあ事故ならオッケーですよね」
神田「ついでに千里にもしちゃいましょう。間接キスってことで」
国松「えっ、そんな…(両手で自分の口を塞ぐ)」
豪田「大丈夫よ、みんなでキスしちゃえば一緒だから」
紅潮し、息が荒くなってきた1年女子一同。
1年女子一同「荻様〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
荻上・国松「ひ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」


84 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その37:2007/01/14(日) 15:06:36 ID:???
居酒屋の店内を所狭しと逃げ惑う荻上会長と国松。
それを追い回す1年女子一同。
さらにそれを必死で止めようとする他一同。
結局今年の夏コミの現視研は、「うる星やつら」的なドタバタの追いかけっこに終始する破目になった。

ようやくみんなが落ち着いた帰り道、国松は完全に学祭対策モードになった。
国松「さあ明日からが忙しいぞ。着ぐるみ5着ともなると、明日からでも始めないと学祭に間に合わないわ。大野さん!」
大野「はっ、はい!」
国松「スーちゃんって、明日帰るんですよね?申し訳ないですけど、大野さんとこ寄っていいですか?スーちゃんの採寸だけ先に済ましときたいんです」
大野「それは構いませんけど…スー、いい?」
スー「押忍、よろしくお願いします!」
国松「あとは…そうだ!ニャー子さんも確か身長155ぐらいだったな。ギリギリいけるかも知れない。さっそく交渉してみよう。それからそれから…」
大野「ハハハ、国松さん完全にスイッチ入っちゃいましたね」
荻上「て言うか制御装置壊れちゃいましたね。学祭は着ぐるみか、トホホ…」
夏コミは何とか無事終了(そうか?)したが、秋には新連載開始、スー&アンジェラ来襲、そして着ぐるみに学祭、荻上会長の多忙と苦闘はまだまだ続くようだ。

夏コミについてのレポートを笹原からもらった、漫画家のA先生はご満悦だった。
漫A「いやいやいや笹原君、君のレポートなあ、ごっつい役立ったでえ。ほんまおおきに」
笹原「いやあそんな、あんなんでお役に立てましたか」
漫A「十分や。おかげでわしにも君ら若いオタク君や腐女子のお嬢ちゃんたちの、『萌え』っちゅう感情がよう分かったわ」
笹原「そうですか…ハハッ」
漫A「ところで実は笹原君、今度の作品もちろんヒットさす積もりやけど、もしヒットせんかったらわし、この作品最後に引退しようか思てんねん」
笹原「えっ?」


85 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その38:2007/01/14(日) 15:08:14 ID:???
漫A「まあ貯えはそれなりにあるし、昔の伝手はいろいろあるから、引退しても生活には困らんと思う」
笹原「そんなことおっしゃらないで下さい」
漫A「もちろんこれは売れんかった時の話や。売れたら死ぬまで描いたるわい。ただな、わし漫画以外にやりたいことが出来てもてな、もし引退したらそれやろ思てんねん」
笹原「何をなさりたいのですか?」
漫A「大学受けよ思てんねん」
笹原「大学?」
漫A「君のレポートを読んどったらオタ魂ちゅうのに目覚めた上に、大学のオタクサークルっちゅうもんに入りたなったんや」
猛烈に嫌な予感を感じる笹原。
漫A「まあ受験勉強の進捗具合にもよるけど、わし椎応受けよ思てんねん」
凍り付く笹原。
漫A「そんで笹原君のおった現視研に入ろか思てんねん」
まだ凍り付いている笹原。
そこで玄関のチャイムが鳴った。
漫A「おう、ちょうど来はったな」
我に返る笹原。
笹原「来客のご予定があったんですか?」
漫A「わしの古くからの知り合いでな、今の話もその人に相談して決めたんや。その人な、わしのやりたいようにやり言うてくれたんや」
笹原『誰だよ、そんな無責任なアドバイスしたの?』
玄関に向かうA先生。
漫A「すまんけど笹原君、お茶入れてくれるか」
笹原「はっはい(台所に向かう)」


86 :26人いる! 夏コミ千秋楽 その39:2007/01/14(日) 15:09:45 ID:???
台所から客間にお茶を運んできた笹原、危うくお茶を落としそうになった。
来客の顔には見覚えがあった。
中途半端な長髪、小柄で痩せ型で猫背で撫で肩な体格、そして眼鏡をかけた犬のような顔。
客間に座っていたのは初代会長だった。
笹原「かっ会長!?」
初代「やあ、久しぶり。君が先生の担当だったんだね」
漫A「よして下さいよ伯父貴、先生やなんて照れ臭い」
笹原『伯父貴って…確かやくざ社会だと目上の人に使う呼び方だよな。どういう関係なんだよ、会長と先生?』
2人の話によれば、どうも2人は近所の居酒屋で偶然知り合った飲み友だちのような関係で、先生も会長についてよく知らないらしい。
ただ会長がなかなか博学の情報通で、A先生にいろいろとアドバイスしていたので、先生が尊敬して何時の間にか「伯父貴」と呼ぶようになったらしい。
漫A「そやけど伯父貴が笹原君の先輩とは、世間は狭いでホンマ。まあもしわしが椎応入れたら、笹原君もわしの先輩ってことになる訳やな。よろしく頼んまっせ、笹原先輩」
笹原『神様、どうか何とぞ、先生の作品をヒットさせて下さい!ほんとマジでお願いします!』
心の中でフルパワーでヒット祈願する笹原であった。

悪い人では無さそうだが、どう考えても現視研と肌が合うとは思えないA先生。
果たして現視研史上最悪の黒船は来襲するのか?
スー&アンジェラの迎撃(歓迎)体制に入った荻上政権下現視研だったが、その後にはもっと厄介な黒船が迫っている(かも知れない)。
がんばれ荻上会長。
オタクたちの自由と平和の為に。


87 :26人いる! 夏コミ千秋楽 後書き:2007/01/14(日) 15:19:33 ID:???
以上です。

最後の最後まで看板に偽り有り!
27人目をオチに使ってしまいました。
それにいつもは最低でもあと10回ぐらい推敲を重ねてから投下するのですが、今回は諸般の事情により取り急ぎ投下することになってしまいました。
投下しながらざっと読み直してみても今回の話、粗が目立ちます。
恵子は全く台詞無いし、春日部さんたちは夏コミ終了後ほったらかしだし、胴上げの後大野さん感激で泣かすの忘れたし。
いろいろ後悔は残りますが、とりあえず予定終了です。

あとは2ちゃんねるの閉鎖回避と、もし回避出来なかった時せめて1人でもこの話読んでくれてることを祈りつつ、筆を置きます。

88 :マロン名無しさん:2007/01/14(日) 21:49:15 ID:dZ4NHrz9
読みました!ついにこのシリーズも完結ですか、、、自分はげんしけんの日常が好きなのでこの作品すごち好きです

まとめサイトの管理人さんへ。
2ちゃん閉鎖が現実味をおびてきたのでそちらのホームページに2ちゃん風掲示板を避難所として置くのはどうでしょう?短い時間ですが検討お願いします

89 :マロン名無しさん:2007/01/14(日) 22:18:55 ID:???
壮大な釣りだとばかり…

90 :”管理”人@まとめサイト:2007/01/14(日) 22:46:46 ID:???
私自身は、2ちゃん閉鎖は現実的に出来ないと思っていますので、
あまり危機感はないのですが、万が一があるので、
そのときのために方法は考えておこうと思っております。

あ〜、早く帰って26人いる!を読みたいところです・・・。

91 :マロン名無しさん:2007/01/14(日) 23:22:06 ID:???
>1の人
スレ立て乙です!

>リツコレポート後編
ああ…終わってしまったのですね…。
801小隊の持つ独特の空気感というか、雰囲気が大好きでした。
マダラメとタナカがタバコをふかすシーンとか、アンとの手探りのセリフの駆け引きとか。
ガンダムは1stはしっかり見たんですけどあまり詳しくないです。
だからこそ、この世界観が新鮮に感じて、でも懐かしい感じがして、もっと読みたかったっす。

…ちさまりの双子編!?くああ、読みたいっす。

>26人いる!
まずは大長編お疲れ様でした。この生産力!尊敬します。
大人数のドタバタ面白かったですw
あと、気になることといえば…誰が斑目を男に(略

…冬コミ編マダー?(笑)
だってまだまだ話が続いていきそうなんですもん、この話w



92 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 02:36:05 ID:???
絵板の絵にやられて物語がバーッとできちゃったので、書いてみました。
6くらいで投下です。

93 :「碧目のすう」1/6:2007/01/15(月) 02:36:35 ID:???
それは、昔の何処かでの話。

昔々、あるところに小さな村がありました。
村人は貧しいながらも何とか生活をしていました。
そんな村の中、一軒の家に目の色が皆と違う、碧い色をした少女がいました。
名前を「すう」といいました。
目玉の柄の綺麗な着物をいつも羽織っていました。

「やーいやーい。青目の鬼子〜。お前なんか出て行け〜。」

村のほかの子供たちから、いつもそんな風に言われていました。
でも、すうは、何もいわずにせっせと野良仕事に打ち込んでいました。
そんなすうを見て、村の心優しい青年「晴信」は、どうにかならんものかと思っていました。

「あの子は普通の頑張り屋さんだ。」
「しかし、あの目は鬼の目だ。」
「鬼なんているわけないだろ?迷信を信じて・・・。」
「馬鹿!そんな事いうな、村長の耳に入ったら・・・。」

村長は非常に迷信を信じており、すうに対して一番厳しく当たっている人の一人でした。

「・・・彼女はいつから村にいたんだっけか・・・。」
「・・・確か、前の村長が連れてきたんじゃなかったか?」
「あ、そういえば・・・。彼がいなくなってから彼女は・・・。」
「・・・そうだな・・・。」

94 :「碧目のすう」2/6:2007/01/15(月) 02:37:57 ID:???
晴信はやりきれない思いで一杯でした。
しかし、彼は臆病な性格もあってか、助けに出ることもままなりませんでした。
他の人に相談しても、同情はするが無理だの一点張り。
一人、彼が憧れる商人の娘、咲だけは、彼の話に耳を傾けてくれました。

「でも、私の力だけじゃどうしようもないよ・・・。」
「うん・・・。わかってる。すまなかったな。」
「・・・きっと、いつかなんとかなるよ。気を落とさないでね。」
「ああ・・・。」

そうは言うものの、無為に時間は過ぎていきました。
ある年のこと。
村が災厄に見舞われるという占いが出ました。
通りすがりの占い師によるその言葉を、村長はすっかり信じてしまいました。

「どうしたらいいんでしょうか?」
「ひとり、生贄を山に捧げなさい。そうすれば・・・。」
「なるほど・・・。んー、いいのがいますな。」

村人達の前で、大きな体を震わせ、憎らしい声で村長はこういいました。

「すうを生贄にするのだ。そうすれば村は助かる。」
「な・・・!」

95 :「碧目のすう」3/6:2007/01/15(月) 02:38:32 ID:???
村人達は一斉に騒ぎました。
すうを生贄にするのは忍びない。しかし、彼のいうことに逆らうわけにもいかない。

「・・・だれか、すうを連れて山までいくのだ。」
「・・・僭越ながら私が。」

そういって名乗り出たのは晴信でした。

「晴信・・・?」

その言葉に、咲は不審に思いました。いつも彼女を気にかけてる彼が何故?

「・・・そうか。よろしく頼むぞ。これをな。」
「はい。」

晴信は、村長から薬を受け取りました。
村人達がざわつく中、晴信はすうの家に向いました。

「よう、元気か?」
「・・・。」

黙って頷くすう。

「まぁ、一緒に食事でもしようじゃないか。」

96 :「碧目のすう」4/6:2007/01/15(月) 02:39:09 ID:???
そういって、彼は食事の準備を始めました。
彼は、彼女が食べる食事に、先ほどもらった睡眠薬を入れました。
食事が終わり、よく眠ったすうを背負い、山へと向いました。

「不憫な娘だ・・・。なぁ、すう。こんな村嫌だろう?
 何処か逃げなさい。荷物は、あとから持っていくから・・・。」

そういう晴信の言葉を聞いているのか、すうは安らかな寝顔でした。

山まで行くと、すっかり暗くなっていました。

「よし、ほら、起きなさい。」

すうを優しく起こす晴信。すうは目を覚ますと、日頃見せないように戸惑っていました。

「あ・・・。」
「よし、ちょっとここで待っていなさい。後で荷物持ってくるから。」
「・・・村!」
「ああ、村にいるのは嫌だろう?」
「違う!村があぶない!」
「な・・・?」

丁度その頃、村では地震が起きていました。

97 :「碧目のすう」5/6:2007/01/15(月) 02:44:42 ID:???
「なんなんだ、この振動・・・。」

咲は、不振に感じていましたが、今は晴信とすうのことが気がかりでした。
思い立って山へ行こうと外へ出たそのとき、
村の真ん中から、何かが生まれ出たのを見ました。

「な、なんだ・・・、あれ・・・。」

村の人の多くがそれに気付き、村の中は混乱に包まれました。
見た目は大きな蛇・・・それが八つの頭を携えて。

「おろちだ!伝説のおろちだ!」
「こ、これが災厄なのか・・・。」

村長が呆然としていると、おろちは、彼に目をつけ一口。

「ああ、村長が!」
「ど、そうすればいいんだ・・・。」

そこに丁度、すうに引っ張られ村に戻ってきた晴信が現れたのです。

「・・・おい、あれはなんだよ!」
「・・・おさまれ・・・おさまれ・・・。」

すうが念じると、おろちは少しずつ動きを弱め、元の場所に戻っていきました。

98 :「碧目のすう」6/6:2007/01/15(月) 02:45:37 ID:???
「なんだったんだ・・・。」
「わたしは、ここにいる必要があるの。」
「・・・よくわからんが、そういう事だったのか・・・。」

何とか騒動の収まった村で、晴信は事情を説明して回りました。
平和が訪れた村。結果として、予言は的中したのです。
すうは、村に残ることになりました。
そして村長のいなくなった村で、次の村長を決めることになりました。

「晴信でいいんじゃないか?」
「ああ。」
「え、おれ?まじで?」

晴信は、村長になりました。すうも、それを喜んでくれたみたいでした。
晴信はすうを村の守り神とし、末永く村は幸せになりました。

ちなみに憧れの商人の娘、咲は、隣村の高坂家に嫁入りしたそうです。
晴信は、すうを見守りつつ、のんびりと暮らしたそうです。

めでたし めでたし

99 :「碧目のすう」アトガキ:2007/01/15(月) 02:46:34 ID:???
やっぱ絵ってすごいね!見た瞬間物語できちゃったよ!

描いた方が喜んでくれると嬉しいですねぇ・・・。

100 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 03:11:10 ID:???
>>26人いる!
所々笑わせていただきました!
しかしいつもながら知識の幅が広いですね。
コスプレ(というか着ぐるみ)にかける熱い思いが伝わってきました。
やっぱ特撮がお好きなんでしょうなぁ。
いっそのことまだ書いちゃえばいいじゃないかと!
冬コミに期待age(あげてないけどw

101 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 08:50:56 ID:???
>>26人いる!

お疲れさまでした!

タンノーさせていただきました。うる星みたいなオチってことで、脳内BGMはドタバタシーンの曲が流れてました。

モテモテな斑目ウラヤマシス…。

推敲がハンパないっすねぇ。読みやすくて安定した作風の理由の一端がわかった気がします。

冬コミもですが学祭編読みたいです!

102 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 21:33:04 ID:tgiBvxIt
前スレで「斑目、歩く」を投下したものです。読んでくださったかた、感謝です。
前スレでコメントくださった方へ一応返信をば。

>>492
感想どうもです。斑目の切なさが出ていたのであれば、幸いです。

>>498
オタクは一人でぐだぐだ無駄なことを考えますよね。基本ネガですし。
葛藤しただけ労力の浪費にして無駄という・・・orz

>>499
感想ありがとうございます。もてない男の苦しみとでもいいましょうか。
つか、好きな人に振り向いてもらえる可能性ゼロって・・・斑目、せつねえ。

予定は未定ですが、ひょっとしたら続編でもまた投下するかもしれません。
たぶん、またあんまり明るくないかもしれませんが・・・。そこらへんをちょっと
懸念しつつ、そのときはどうぞよろしくお願いします。

103 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 22:17:47 ID:???
…完結記念で1巻から読み返していたら、ふと思ったのです。
第39話 one two finishでの、荻上の「私がオタクと〜」という発言には、
どんな事情があったのだろうか、と。

と、言うわけで妄想してみました。時期的には39話直前あたりです。

104 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 22:18:31 ID:???
気付いた時が恋のはじまり
                  〜よくある歌の一節

105 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 22:20:26 ID:???
梅雨直前のある日の事。
大学へ向かう途中で、荻上は道路に、おそらく子供が書いたのであろう落書きを見つけた。
○×△□。
へのへのもへじ。
何処かの誰かの顔。
デフォルメの効いた人間像。
荻上は何となく微笑ましく思いながらそれらを眺める。
ふと自分の過去を振り返る。
家の前の道路に、親に呼ばれるまで好きに書き殴っていたあの頃。
落書き以下のあの絵を誉めてくれた、父親の笑顔を思い出す。
多分あの笑顔が、荻上にとっての原点だったのかもしれない。

106 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 22:21:13 ID:???
ふと、その脇に描かれた○の連なりに気がつく。
(ああ、今でもこの遊びはあるんだ)
好奇心と懐かしさから、荻上はそれを踏む。
けんけんぱ
けんけんぱ
踏むごとに、自分が昔に戻れるようで。
繰り返し、繰り返し、それを踏む。
そして唐突に足を止めると、
(わたしは何をやってるんだろう?)
自嘲する。
(あれだけの事をしておいて、昔に戻れる訳が…)
「あれ?荻上さん?」
聞こえた声が、荻上の思考を断ち切る。
荻上はゆっくりと振り返る。
そこにはコンビニの袋を下げた、笹原がいた。
(見 ら れ た !?)
そう思った瞬間、荻上は駆け出していた。
大学ではなく、自宅へ向かって。

107 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 22:21:58 ID:???
大学へ向かう途中で、笹原は荻上を見かけた。
その事にささやかな喜びを感じながら、思い切って声を掛ける。
「あれ?荻上さん?」
しかし、荻上はこちらを振り向くと、途端に駆け出して、角を曲がり、見えなくなってしまった。
(何だよ)
(声を掛けただけで逃げ出されるほど、嫌われているのか、俺?)
笹原は少し落ち込みながら、歩みを再開する。少しだけ重くなった気がする足で。
(でも、何をしてたんだろ、荻上さん)
(今度会ったら聞いてみようか…)

108 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 22:22:41 ID:???
数日後、荻上は久しぶりに現視研の部室に向かった。
あの時のことを自分の中で整理するのに、それだけかかったからだった。
(大丈夫)
(大した事じゃない)
もう一度自分に言い聞かせると、ドアを開ける。
そこには今は一番会いたくない人がいた。
「やあ、荻上さん」
笹原は荻上の内心の動揺に全く気付かずに、いつもの声で、いつものように、彼女を見て挨拶する。
「どうも」
荻上は一瞬躊躇った後、それだけを口にすると、目を合わせないようにしながら、笹原から最も遠い席に座る。そしてノートを取り出してそれに向かう。
いつもの「私に話し掛けないで下さい」というポーズだった。
笹原はその様子を見ると、特に何も言うでもなく、さっきまで見ていたマガヅンの続きを読み始める。
部屋に荻上の鉛筆の立てる音と、笹原のめくるページの音が静かに響きあう。

109 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 22:23:26 ID:???
読み終わった笹原がマガヅンを置く。その音は二人にはずいぶん大きく聞こえた。
荻上の鉛筆が止まる。
笹原は数度ためらった後、数日来の疑問を口にした。
「あ、あのさ、荻上さん。あの日はいったいどうしたの?」
「…何の事ですか」
荻上は笹原を見ずに固い口調で答える。
「いや、声を掛けたら急に駆け出すから、いったいどうしたのかなって思って…」
「…何でもありません」
「あ、そう
笹原の言葉は途中で途切れた。
荻上が泣いていたからだった。
ノートを睨みながら、拭うでもなく涙をこぼしつづける。

110 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 22:24:14 ID:???
(私は何で泣いているんだろ)
荻上は他人事のように思いながら泣いていた。
そして泣きながら思う。
(見られたくなかった。聞かれたくなかった)
(笹原さんの前では『変』じゃない、普通の女性でいたかった)
(『それは何故?』)
気付きたくなかった。考えたくなかった。それを認めたら私はきっと許されない。許せない。
(私は…)

笹原は大混乱していた。どうして良いのか全くわからない。だが先輩として、男として、このまま放っておくのはいけないと思い、…ハンカチを差し出す。
荻上の目にそれが映る。慌てて自分のハンカチを取り出して涙を拭く。
笹原は少し残念そうにハンカチを引っ込めた。

111 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 22:24:59 ID:???
二人きりの部室に、気まずい沈黙と、荻上が小さく鼻をすすり上げる音が流れる。
やがて落ち着いた荻上は、やおら荷物を片付けると、そのまま部室を小走りに出て行こうとする。
そして荻上の足が椅子の足の一つに引っかかり、倒れそうになって、笹原は思わず手を伸ばし、抱きとめた。
「大丈夫?」
「はい…」
そのまま少し時が過ぎ、笹原が口を開く。
「…えっと、ごめん」
「!」
荻上は慌てて笹原から離れる。笹原はそのまま言葉を続ける。
「本当にごめん。何か聞いちゃいけない事聞いちゃったみたいで…」
「…何で」
「え?」
「何で謝るんですか!?笹原さんは全然悪くないのに!」
「いや、その…」
「私が泣いたって、何したって、笹原さんには関係ないでしょう!!」
荻上は言った瞬間に後悔した。そしてその言葉を聞いた笹原の、傷ついた表情を見て、何も考えられなくなり、部室のドアを開けて全速で逃げ出した。
その途中で擦れ違った女性が、不思議そうに見つめていたが、荻上は気付かなかった。

112 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 22:25:45 ID:???
「笹原さんには関係ない、か…」
笹原は呟く。
「そうかよ。関係ないのかよ」
声に苛立ちが混じる。だが、何故こうまで苛付くのかわからない。わからないから、さらに苛付く。
「くそっ」
笹原はマガヅンを乱暴にゴミ箱に放り込むと、部室を出ようとノブに手を伸ばした。
瞬間、勝手にドアが開き、「こんちはー」という間延びした挨拶と供に、恵子が現れる。
「お、アニキ。高坂さん、いる?」
「いねーよ」
いつも通りの恵子の態度が、いやに能天気に見えて、笹原は苛立つ。
「あ、そう。…そういえば、さっきあの変な髪形の人を見かけたけど、何か泣いてなかった?」
「…」
「まさか、アニキが泣かせたのか?まさかね〜、優しいだけがとりえのアニキにそんな事…」
「お前には関係ねーよ」
言い捨てると、恵子を押しのけて部室を出て行く。

113 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 22:26:36 ID:???
「何だよ、それ…」
一人残された恵子が呟く。
「…あ、そう!そっちがそうならこっちだって勝手させてもらうからな!」
一声叫ぶと、恵子は携帯を取り出し、適当な男にかけようとして、やめた。
「…何だよ。アニキもやるこたやってんじゃん…」
その声は少しだけ寂しそうだった。

114 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 22:27:22 ID:???
その夜。
荻上は布団の中で泣いていた。
(いつもそうだ)
(優しくされて、調子に乗って、傷つけて、孤立して…)
(笹原さんは悪くないのに。悪いのは私なのに。それなのに笹原さんを傷つけて)
(ごめんなさい)
(ごめんなさい笹原さん)
やがてすすり泣きが寝息に変わる。
そして、いつもの浅い眠りの中で荻上は思った。
(何で私は泣いていたんだろう)
(私が人を傷つけるのは、いつもの事じゃないか)
(だから、後でちゃんと謝って、以前のように先輩後輩として…)
(『以前のように』?以前って何?私はいま笹原さんをどう思って)
(私は(考えるな)笹原さんを(駄目だ)○○(そんなはずはない))
その瞬間、荻上の脳裏にいつもの悪夢が蘇る。
ただ『自分』に屋上から突き落とされる『あの人』の姿が、笹原とダブって見えた。
荻上は慌てて飛び起きる。
荒い呼吸を何とか治めると、急に馬鹿らしくなった。
小声で呟く。
「私が人を好きになる訳ない」
「相手が笹原さんだってそう」
「だってあの人は…あの人は、”オタク”なんだから」
この答えは少しだけ荻上を安堵させた。
荻上は布団から出ると、机へ向かう。夜明けにはまだまだ早いが、もう一度眠る気にはなれなかった。
そして、もうこれ以上この事について考えたくなかった。

115 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 22:28:07 ID:???
…時が過ぎ、季節は梅雨に入る。
笹原と荻上の二人にはぎこちない会話しか流れない。
そんな中、恵子が地雷を踏む。それには多少の嫉妬もあったかもしれない。
「…ねえ、もう二人ってつき合ってんでしょ?」
「…はあ?誰と誰が?」
「え?あれ…違うの?あんたとウチのアニキなんだけど…」
荻上が用意しておいた答えを返す。
「『私がオタクとつき合うわけないじゃないですか』」
笹原は笑う。笑うしかない。
(あの日以来、自分と彼女は『ただの先輩と後輩』だと自分を納得させてきたじゃないか)
(それが裏付けられただけだろ)
(だから、怒る事も悲しむ事もないさ)
自分に言い聞かせながら、笹原は、ただ、笑った。
その後、いくつかのやり取りの後で、高坂の就職が報告され、ドタバタとともに高坂と咲が去って、一人、また一人と席を立つ。
笹原も席を立つ。納得していたはずなのに、覚悟していたはずなのに、ついさっき聞いた言葉は笹原の心をざわめかせ、それは言葉になった。最低の捨て台詞だと自覚しながら。
「俺も遊んでるヒマはないな」
荻上の心が凍りつく。
(そうか。笹原さんには遊びなんだ。現視研も、漫画も…)
場を取り繕うような大野の声に返事を返しながら、荻上は思う。
(これでいい)
(これで自分の思うとおりになった)
(でも…)

116 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 22:28:53 ID:???
その夜、笹原は斑目から借りたエロゲーに向かっていた。
自分の趣味からはちょっとずれていたので、手を出しかねていた作品だった。
黙々と攻略を続ける。
そんな中でヒロインの姿が荻上とダブる。
笹原の手が止まる。
(何でだよ。あそこまで言われて、何で気になるんだよ?)
(気にしなきゃいいだろうが。先輩と後輩、それで納得したんだろ?)
(けど、俺は、もしかして…)
笹原は再びゲームに向かう。
それ以上考えないために。

117 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 22:29:43 ID:???
おまけ

「笹原さん!そろそろコミフェスの打ち合わせをしましょう!」
「え、ああ、そうね」
「部室でやる、って手もあるでしょうけど…ここは荻上さんの部屋でやりましょう!」
「え!?」
「ちょっと待って下さい!なんで私の…!」
「だって無関係な人に見せたくない物だってあるでしょう?原稿とか表紙のラフとか…」
「だから何で見せなきゃならないんですか!?」
「え〜。せっかく売り子をしてあげるんだから、少しぐらい見せてもいいじゃないですか」
「絶対嫌です!」
「と、言う事なので、笹原さん。今度の日曜日、空けておいてくださいね♪」
「はあ…」
「話を聞いてください!!」
「いいですか、荻上さん」
「な、何ですか」
「荻上さんはコミフェスに自作の同人誌を売りに行きます。つまりたくさんの人に見てもらう立場な訳です。ここまではいいですね?」
「…」
「それなら私達に見せてもいいでしょう?」
「だからといって嫌なものは嫌です!」
「…わかりました。そんなに見せたくないなら、」

「私達が勝手に見に行きますから♪」

「全然わかってないじゃないですか!」「あ〜今度の日曜が楽しみですねえ」「だから人の話を…!」
〜次第にFO

118 :マロン名無しさん:2007/01/15(月) 22:30:41 ID:???
以上です。

119 :マロン名無しさん:2007/01/16(火) 03:34:44 ID:???
>気付いた時が恋の始まり
久々に読みました、物語の間もの。
こういうのはおもしろいですよねぇ、想像すると。
荻上さんの心を追っていくのは楽しいですね。
ただ個人的には「俺も遊んでるひま〜」って言う言葉には
そう強い受け方はしてないと思ってます。
あの時はただ頑なに言葉も聴いてないように感じました。
まぁ、その辺は個人の解釈ということでw
乙でした!楽しめました〜。

120 :マロン名無しさん:2007/01/16(火) 22:58:45 ID:???
うはーっ、読んだ読んだ。まとめ読みは体に良くないわ(笑)

>斑目、歩く
遅くなりましたが、前スレの大トリお疲れさまです!
>もし俺が「フツー」の奴だったら。
このフレーズのリフレインが泣かせます。
細かい描写で斑目の心境吐露を描いていて勉強になりました。


>第801小隊『リツコ・レポート』
マダラメとリツコを通じて、それぞれのその後を追う展開は、801小隊のシリーズを読んできた身として懐かしいものでした。
あと、何が良かったって、木星から来た男・マダラメのカッコ良さですよ。
田中と二人、タバコをふかしながらの会話、夜のサバンナ、助手席のアンとのやりとりが雰囲気出てていいですね。
ラスト、両手に花のマダラメ。最近SSでよくハーレム化されたり攻略対象になったりしてて、幸せ?そうでなりよりですねw


>26人いる!
長編ホンマにお疲れ様でした!
オリキャラ多いにもかかわらず、肩の力抜いて楽しんで読めました。それぞれのキャラがイメージしやすいのもいいのかも知れませんね。
あと特オタ的にはとってもウケるネタ満載でした。
でも若い人に「ウルトラファイト」がイメージできるのか……。まあ、「県警対組織暴力」というネタ自体暴力的(イイ意味で)なんですが。
あと春日部さん、バカボンママは分かるんだ…、でもコミフェスデートなんて丸くなりすぎだよw
ほかにも色々あるけれど、なんかもうネタ多すぎて感想も困っちゃう。GJ!

>27人目をオチに使ってしまいました。
いやいや、27人目として申し分ない人の登場で、洒落た展開だと思いました。
とにもかくにも、短編でもいいので学祭編での復活を願います(この大所帯では短編では収まらないか…)

121 :マロン名無しさん:2007/01/16(火) 23:00:24 ID:???
感想の続きです。

>碧目のすう
SSスレについに童話まで登場ですかw
絵は物語読んだ後に見たのですが、どちらも雰囲気ありますね!

>ちなみに憧れの商人の娘、咲は、隣村の高坂家に嫁入りしたそうです。
基本マダラメスキーな自分にとっては、↑がとってもサラリと書かれていて何故か笑えました。
めでたしなのやらそうでないのやらw


>気付いた時が恋のはじまり
「けんけんぱ」の荻上さんを思い浮かべるとカワイイのですが、何も逃げんでもwww
お互いに意識しまくりですが、それがかえって想いのすれ違いの悲劇を生むのはよくあること。こういう時期に帰りたいなあ……。
連載当時は、何もそこまでつんけんにならなくても、と個人的に思いましたが、あの刺々しいやりとりの前段階としては十分な裏付けだと思いました。


122 :マロン名無しさん:2007/01/17(水) 00:11:42 ID:???
>碧目のすう
絵を見て、すごくイメージが広がっていたので、このSSはすんなり世界に入っていけました。
晴信の優しさに心があったかくなったり。
すうが実は守り神だったというオチも好きです。
咲…高坂と幸せになっちゃったのか…シクシク(ノ_T)

>気づいたときが恋のはじまり
面白かったです。荻上さんのちょっと大げさまでの反応の裏設定がかかれてて、何やらすごく納得してしまいました。
急に泣き出しちゃって笹がオロオロして、荻上さんが自己嫌悪してって所、原作にあってもおかしくないクオリテイ。

原作で「オタクが嫌いな荻上です」「私がオタクを…」といい続けてた荻上さんが、
(スーに話してて)「昔ならオタクの悪口いっぱい並べられたのに…」(笹原さんのせいだ)
に変化したことが9巻で実感できて、すごく良かったと思えたことをまた思い出しました。

123 :マロン名無しさん:2007/01/17(水) 00:24:35 ID:???
「不在が愛を育む」

携帯が普及した昨今、リアルでない言葉ですが、こちらから振った彼女を一年以上たって恋しく思うこの身には、重い。

そして伝えられない思いを持つ者は、それゆえに切ない。

笹荻が切なくなく、斑目が切ないのは、そんな所に理由があるのかなー、と。

笹荻は甘酸っぱい感じがするんですがどーでしょうか?

124 :大野シナリオの人:2007/01/17(水) 06:49:33 ID:???
……この1週間で10本投下されてるんですがお前ら頑張りすぎだw
風邪っぴきだったんで病院の待ち時間にようやく読めたですよ。感想いくですよ。

>まだメモ@恵子2
惜しいwwwもう一息でグッドエンドじゃないっすか。やはりアレですね、このヒロインに対しては肉弾戦あるのみ。
この展開が見込まれるなら邪魔の入らないシチュ選んで『押し倒す』3回くらい選択すればどうにかなるんでは。つかもうレイp(ryだが。
よっしゃもっかいチャレンジしてみるかなあ。

>斑目、歩く
斑目は、とにかく恋している斑目は一人にするとヤバイです。たんなるオタだった時の彼は一人になるとアニメやゲームのことを考えていたのですが、最近は隙があると心にあの人の顔が浮かんでしまいます。
いつも同じ結論にたどり着く堂々巡り、彼はいつかこの回廊を出ることはあるのでしょうか。
そんなことを思ってしまいます。哀しいし、でも、彼らしい。

>碧目のすう
目玉べべ強烈でしたね。いきなりSS書いちゃうあなたも大概すごいが。ダメだ、ダメだこんな想像の余地のあるSS書いちゃw
晴信の身の上はどうなんだとか、咲が嫁に行く前夜彼との間に何もなかったのかとか、この後すうを狙って現れる魑魅魍魎との戦いとかその中で明らかになるすうと斑目との意外な関係とか考えてしまうじゃないかあああっ!

>気付いた時が恋のはじまり
自分に言い訳を重ねていた頃のオギー来ましたね。
その「気づく」タイミングとかそん時の心情とか立ち位置みたいなものがけっこうデリケートに絡むので、自分ではうまく書けないだけに人に書いてもらうと興味深く読めます。ほうほうこう解釈したか、などなど。
友人とメールやりとりしてたら、大野さんのアレって『無邪気攻め』って言うらしいですw うんうんナルホド。


801小隊と26人はもうひとレス使わせていただく。

125 :大野シナリオの人:2007/01/17(水) 06:50:04 ID:???
>『第801小隊リツコ・レポート』
ああ……終わっちゃった。
なんか残念です。地球でもみんなが元気でいたのはなによりですが、すでに時は行き過ぎているのだなあと一抹の寂寥感。ササハラけっこう満身創痍だったので、少々ポンコツでも幸せならいいや。オギウエとも仲良くやってるようで何より。
足が治ったら、11人の子供たちと大家族構成して、どこか安全なコロニーで恩給貰ってゆったり過ごしてもらいたいもんです。
なお、ちょっとした疑問として「戦災孤児だったのは実は8〜9人なんじゃないか」と思ったのは秘密にしておきます。だってあーた、2年もありゃあ、ねえ、ホラ。
あとは木星で頑張れ、両手に花。
ともあれお疲れさまです。続編も期待しているが今は言わないでおきましょうw


>『26人いる! 夏コミ千秋楽』
こちらもついに完結で寂しいことこの上ない。お疲れさまでした。
劇場板仕様の大長編でんしけん、とでも言いましょうか。史上最大のお祭りもようやく幕を引きましたね。
最後は収束に向けて動いているだけに個々のキャラの見せ場を捻出するのも大変だったでしょうが、クガピー大軍勢を引き連れて満を持しての登場とか出オチ担当27人目とか楽しく読ませていただきました。
そして今回の懐特ネタはやはしウルトラファイトがダントツですw観てたが子供心にも「いや、そのストーリーは変だろ」と思っていた。
メインキャラ26人(いや27人かw)のほぼ全員に見せ場がある話、なんてのはそうそう描けないと思います。おんなじ構想でもう一作、というわけにも行かないでしょうし、そういう観点からも見事な風呂敷の畳みっぷりと言えると思います。
次はまた誰かにスポットを当てた長編かなwkwk楽しみにしております。どうもありがとう。


おまけ。
>>123
『よろしく哀愁』思い出した。

俺のに感想くれた人たちもありがとうございます。
引き続き精進いたします〜。

ではまた。

126 :劇場風予告:2007/01/18(木) 02:10:39 ID:???
今は平成26年。西暦にして2015年。
30年近く昔の名作アニメを知る人は、この年の到来を喜んでいる。
「使徒が襲来する年だ」と。

この年の春、ワタシは晴れて椎応大学に入学した。

我ながら、良くやったものだと思う。
初志貫徹。小学生の頃からの夢が叶ったのだから!
あぁ、桜の花びらが舞い落ちてワタシを迎えてくれている。

ついにこの日がきた。
椎応一本で今まで生きてきたのだ。

『そう、なぜならば…!』



 『 と な り の ク ガ ピ 2 』



「第5回 現視研新人来て良かったね会議〜!」
「アハハ、久しぶりに聞いたなソレ」


近日公開


※  ※  ※
ほかのSSを書きためていたはずが、一瞬の妄想が膨らんでこっちの完成が先になってしまいました。疲れたので生意気にも予告だけ投下して寝ます。

明後日お会いしましょう(たぶん)

127 :マロン名無しさん:2007/01/18(木) 06:27:39 ID:???
 マ ジ っ す か !

待ってたよ〜。楽しみ。

128 :真っ赤な誓い 1:2007/01/18(木) 11:26:43 ID:aTFv1avW
その日の斑目はいつもと様子が違っていた。
いつも通り仕事をそつなくこなしていたが
どこかソワソワした感じを漂わせており、落ち着かない様子であった。
「斑目くん」そんな彼の様子を見た上司が声をかけたのが
昼食も終わり、午後の業務に入る前であった・・・。
「今日ぐらいは、休みをとっても構わなかったのに・・・」
「大丈夫ですよ、明日は休日だし、
 仕事していないと落ち着かなくて・・・
 ここに連絡入れてもらえるように頼んでますから・・・
今日はまだ大丈夫なんじゃないですか・・・・」
斑目は引きつった笑顔で答えた。
「気持ちはわかるがなあ・・・
いざというときそばらにいなかったらあとあと恨み言をネチネチ言われるぞ・・・・
俺がそうだったから・・・。」
上司がそこまで行った時、突然事務所内に電話の呼び出し音が鳴った・・・。


129 :真っ赤な誓い 2:2007/01/18(木) 11:33:40 ID:aTFv1avW
「斑目さん、外線です。」
「えっ・・・あっはい!!」
あわてた様子で受話器を受け取る斑目
「あっはい・・・わかりました・・・すぐに・・・はい」
そんな彼の様子を見た上司は、事務所内にいた作業着姿の社員に声をかけた。
「山本くん、昼から現場まわるのだったら、斑目くんを送ってやってくれないか?」
「専務・・・・」
「なあに、気にすることじゃないよ。それよりも早く行ってあげないと・・・。」
「ありがとうございます!!」
斑目は一礼すると、カバンを引っつかみ事務所を後にした・・・。

130 :真っ赤な誓い 3:2007/01/18(木) 12:28:07 ID:aTFv1avW
笹原は少しあせった様子で歩いていた。
長くて広い廊下、その奥には大きな扉があり、その数メートル手前には
革張りの長いすが壁に沿うように置かれていた。
そこには斑目と初老の夫婦が座っていた。
「斑目さん!!」
「おお・・・笹原・・・」『心配』という文字が書いてありそうな顔であった。
「あら、笹原さん・・・息子がお世話になってます・・・。」
「いえ・・・こちらこそ・・・ところで」笹原はチラリと扉を見た。
「ええ・・・ちょうど今入ったところ・・・入ったとたん男二人ずっと
 この調子・・・。」
「はは・・・」
「すまないな・・・笹原・・・・」
「いいですよ、そんな・・・・あとで田中さん達も来るそうです。」
「そうか・・・」斑目はどこか遠くを見つめた目で答えた・・・。

131 :真っ赤な誓い 4:2007/01/18(木) 12:56:13 ID:aTFv1avW
足音が静かな廊下に響き渡る、その音からかなりの人数が
こちらに近づいているのが判った。
「あっ斑目!!」小さな幼女が彼を指差した。
「こらっマコ『斑目のおぢちゃん』でしょ!」咲はきつくたしなめた。
「ようこもごあいさつしなさい」可奈子の足元には彼女に良く似た
長い髪の幼女が彼女のスカートの裾を引っ張りながら「こんにちは」と
舌足らずな言葉でつぶやいた・・・・。

132 :マロン名無しさん:2007/01/18(木) 20:58:55 ID:???
途中スマソ
続きを……我慢できません〜

133 :マロン名無しさん:2007/01/19(金) 00:55:46 ID:???
あの〜、ID:aTFv1avWさんとは違うんですが、投下してもいい?

134 :マロン名無しさん:2007/01/19(金) 01:11:04 ID:???
>となりのクガピ2
おお、とうとうあの続編が!!wktkして待ってます!

>真っ赤な誓い
なっ、何だ何だ?続きキボン

135 :マロン名無しさん:2007/01/19(金) 01:29:06 ID:???
>>133
YOU!
しちゃいなよっ!

136 :となクガ2:2007/01/19(金) 01:40:46 ID:???
お言葉に甘えて投下しまつ。
ちなみに予告で書いた平成26年、、、計算まちがえてました(恥)

今日は前編。スレ汚しすみませんです。

137 :となクガ2:2007/01/19(金) 01:41:22 ID:???
【1】
時は平成26年。西暦にして2014年。
「ついに来年、使徒襲来!」
30年近く昔の名作アニメを知る人たちが盛り上がっている。

それにつられるように、『あの時代』のアニメの再放送も盛んに行われていて、オジサン世代は、『萌え』だとか叫んでいた古き良き時代を懐かしんでいる。
アニメの技術なんてここ5年ほど停滞しているようにも見える。
私には、昔の作品の方が結構面白く感じてしまうのだ。

そんな今昔が入り乱れているこの年の春、ワタシは晴れて椎応大学に入学した。

我ながら、良くやったものだと思う。
初志貫徹。小学生の頃からの夢が叶ったのだから!
高校三年間は、バイトしたお金をコミフェスやイベントに費やして、中野にも通いながら、それでも勉強はしっかりやった。
高校の担任からは、「椎応よりもいい大学に行けるぞ」と言われたけれど、迷いはなかった。


138 :となクガ2:2007/01/19(金) 01:42:36 ID:???
……今、ワタシは憧れの学舎の前に立っている。
ちょっと大きめのボーシを目深にかぶり、伸ばし続けた髪とマフラーを風になびかせて、ここぞという時のブーツでカツカツと小気味良い音を響かせる。
そよ風がスカートの裾を軽くたなびかせる。
あぁ、桜の花びらが舞い落ちてきてワタシを迎えてくれている!

ついにキタキタこの日がやってきましたよォーッ!
もうテンションは上がりっぱなしデス!

ワタシは、椎応一本で今まで生きてきたのだ。

『そう、なぜならば…!』




139 :>碧目のすう:絵描き:2007/01/19(金) 01:43:00 ID:me750blC
SSにしてもらえるとは感激です。
自分はすごく悲惨な展開をモーソーしてたのでハッピーエンドで
良かったです!
でも斑目のほうが不憫かもしれない…ww

140 :となクガ2:2007/01/19(金) 01:43:51 ID:???


※      ※      ※


  『となりのクガピ 2』


※      ※      ※



141 :となクガ2:2007/01/19(金) 01:45:20 ID:???
【2】
「どうーして無いのよ“げんしけん”は!?」

ワタシは人だかりの中で思わず叫んでしまった。
上がりに上がったテンションもいきなりのダウン。
ここは椎応大学の学生生活関連棟。
新入学生がイモの子を洗うようにごったがえし、あちらこちらでサークル活動の諸先輩方からスカウトされている。
ワタシも何度か声を掛けられたけれど、「女子バスケサークル」とか、「ボクササイズ愛好会」とか、「甲賀流忍術同好会」とかスポーツやゴツイのばっかり!

果ては「長刀(ナギナタ)同好会」って、わたしゃゲルググか!?

そりゃあ……他人様よりも、ちいとばかりテンションが高いために目立つとは思うけれど、こちとらスポーツ経験のない文系の乙女なのよ。
あ、でもちょっとオタ入ってる……昔でいう「腐女子」ってやつですよ。



142 :となクガ2:2007/01/19(金) 01:46:32 ID:???
「あぁ、こんなことならオープンキャンパスとか、ちゃんと下見しておけばよかった」

グチを言ってはみるけれど、本当は入学するまで『げんしけん』の事は調べないように努めてきたのだ。
だって、もし受験前に『げんしけん』消滅を知ったら、モチベーションっていうか、8年間のすべてが失われてしまいそうで怖かったから……。
「平成26年度サークル入会の手引き」にも載っていないってことは、やっぱりないのかな……。
本当に『げんしけん』が無かったら、私はどうすればいいんだろう。

いろんなサークルの看板を眺めながら、トボトボと歩いていると……、あ、漫画研究会の勧誘ブースを発見!
ワタシはブースに駆け寄って、受付に座っているメガネくんたちに声を掛けた。

メガネA「……げんしけん? 聞いた事あるか?」
メガネB「オタク系サークルで……そうねえ……」
トントンと、ペンで落書き帳をノックしながら考える2人。
ワタシは腕を組んで仁王立ち。ブーツはコツコツと床をノックしている。
ペンとブーツのノックの音がシンクロする。
メガネくんの一人が何かを思い出した。
「あ、ひょっとしてあの幽霊サークル……?」
「えっ、ユーレイ?」



143 :となクガ2:2007/01/19(金) 01:47:49 ID:???
【3】
サークル棟の3階、ちょっと暗めな廊下の一角、304号室。
ついにワタシはそのドアを見つけた。

「……げんだい……しかくぶんか……けんきゅうかい……。そっか、『げんしけん』って略称なのね。何で今まで気づかなかったんだろう(汗」

改めて「サークル入会の手引き」を開き、「現代視覚文化研究会」で調べると、しっかりと載っていた。
「え〜っ! 分かるわけないよ。だって呼びかけ文が『ココニイル。』しかないし」

あ、でもイラスト入ってるわ……。
小さなスペースにサラリと描かれていたのは、『リニューアル版』の「くじびきアンバランス」に出てた「いづみ」。
もうほとんどの人が忘れているであろうキャラだ。
今どき「くじアン」というのも珍しいけど、ワタシには思い出深い。
どうやらこのカットは、3年以上は使い回されているみたいだ。コピー跡の目の粗さが見て取れるもの。


144 :となクガ2:2007/01/19(金) 01:49:01 ID:???
あぁ……『げんしけん』が略称だってことも知らないまんま、現視研に入ろうと願って生きてきた自分に呆れてしまう。
こういう時はアレよ。恥ずかしさを紛らわす一人突っ込み。

「♪おちゃ〜めさんっ、テヘッ♪」

運の悪いことに、ちょうど近くの部屋から人が出てきた。
ウインク&ベロだし&コツンポーズを見られてしまったワタシ……orz
とにかく、恥ずかしいのでドアを開けて部室に入ろう。
ちょっとドキドキしながら、ドアノブに手をかけた。

「コンニチワ。見学希望なんですけ……アレ?」
「ん?」

そこには、どう見ても「疲れたサラリーマン」な男性がいた。
部屋の奥、窓際の席に座って、でかいサンドイッチをほおばろうとしていた。
しばらくの間、お互いに動きが止まった。



145 :となクガ2:2007/01/19(金) 01:50:09 ID:???
【4】
「しっ、失礼しましたっ!」
バタンッ、バン!
思わず部屋を飛び出て、ドアを閉めてしまった。

あ〜驚いた。何で大学のサークル棟に中年男性がいるんだろう?
しかし、ワタシにとってはこの部屋が8年越しの『目的の地』なのだ。
リーマンごときに負けるわけにはいかないのだよ(?)。
そんなわけで、もう一度ドアノブに手をかけた。

「あの……、ここ、現代視覚文化研究会の部室でいらっしゃいますか?」
「あ、どうぞ。俺、場所借りてるだけだから」
男の人は、やせ形で丸メガネ。薄幸とか、はかなげな感じ。
例えるなら『受け』が似合うかなあ、と思わず妄想してしまい、ワタシは首をブンブンと振った。
「……ドシタノ?」
「い、いいえ何も!」
心の中で男性に詫びた後、部室を見まわした。

男性の後ろはテレビ、ビデオ、パソコンが並び、この狭いスペースにもかかわらず脇にはホワイトボードが置かれていた。
中央には長テーブル、その上には文房具やマガヅンなどが散らばっている。
周りの棚には、漫画やパソゲーの雑誌、フィギュアが所狭しと並んでいた。
なるほど……あらゆる視覚文化が揃っているわけだ……。


146 :となクガ2:2007/01/19(金) 01:51:16 ID:???
でも、ちょっと気になったのは、どれも『やや古め』だったこと。
変な例えだけれど、しばらく更新されていないホームページのような寂しさを感じた。
ワタシは、バスケットに山のように詰め込まれたサンドイッチと格闘している男性に、恐る恐る声を掛けた。

「……あ、あの、見学希望なんですけど、見せてもらってもいいですか?」
「あ、はい、いいよ。どーぞどーぞ……」
ワタシは本棚に向き直った。
並べられた漫画の背表紙を眺めると、懐かしいコミックが目に入った。
「幽明の恋文」。
古典と言ってもいいくらい古い作品だ。ワタシは小学生の時に読んでたけど、途中で挫折した。今ならはイケルかもと思いながら、まだ読んでいない9巻を手に取った。
しばらくの間、コミックを読んでいると、リーマンさんが声を掛けてきた。

「あの…、あのさ君、この弁当を一緒に、食べてくんない?」
「はい!?」
「いやッ、おかしな気持ちで言ってるんじゃないんだよ。……1人じゃ食べ切れないんだコレ……」



147 :となクガ2:2007/01/19(金) 01:52:24 ID:???
【5】
リーマンさんの名前は『斑目さん』という。
ワタシは2度ほど、『ワタナベさん』と言い間違えてしまった。
すみません。
大学の近くの会社で働いていらっしゃるそうで、ここ数年、春になると弁当を持って部室にやってきて、お昼を過ごすのだという。

「なんで春に?」「なんで部室に?」と不思議に思ったワタシ。

実は斑目さん、結婚記念日が4月だそうで(ヒューヒュー!)、毎年この時期になると豪勢な弁当を奥さんが作ってくれるのだそうだ。
あぁゴチソウサマ(笑)。

「それでさァ、職場の同僚が冷やかすんだよ。だから毎年この時期は懐かしい部室に逃げ込んで食べるってワケ。あ、もう一つどうぞ」
「アリガトウゴザイマス」


148 :となクガ2:2007/01/19(金) 01:53:40 ID:???
斑目さんから2個目のサンドイッチを受け取る。
レタスとトマトとピクルス、ベーコンとトリ肉がギュッと挟まれたサンドイッチ。パンはこんがり狐色。マスタードの効いた濃い味付けで、こりゃ1個でも満足ッスよ。
これと同じものが、でかいバスケットにまだまだ詰め込まれている。
確かに1人で食べるのは大変だ。こんな愛情と力技の弁当を作る奥さんって、どんな人なんだろう。

それにしてもワタシの心を捉えたのは、『懐かしの部室』の一言。斑目さんは、ここのOBなのであった。
年齢も30歳ちょっとだ……。
ひょっとしたら、もしかしてと思って、ワタシは勇気を出して尋ねてみた。
「く、くがやまさんっていうOBの人、ご存じないですか?」
斑目さんは急に吹き出し、咽せた。
あ〜、ピクルスがもったいない。



149 :となクガ2:2007/01/19(金) 01:55:13 ID:???
【6】
ワタシは、8年前に久我山さんと知り合った病院の入院患者であることを告げた。
斑目さんは、「へえ、ふーん、ほぉー、あの久我山がねぇ」と意外そうな表情でワタシの話を聞いてくれた。
そして、「じゃあ、今度あいつに連絡入れてやるよ」と言ってくれたのだ!
「ありがとうございます先輩っ!」
「よせやい照れくさい」

そしてワタシは、もう1つ気になっていることを尋ねてみることにした。
「あの〜、ここの現役部員の人はどちらに……?」
斑目さんは、かたわらのお茶を含んで一息ついてから答えてくれた。
「今日は学校に来ていないんじゃないかな……。残念だけど、いま現視研には部長1人しかいないからなぁ……もう風前の灯火って感じかな」


150 :となクガ2:2007/01/19(金) 01:56:28 ID:???
ワタシは、急に寂しい気持ちになった。
小学生の夏、入院中ひとりぼっちで寂しかったワタシを気遣ってくれたのは、「げんしけん」OBの久我山さんだった。
久我山さんから聞いた楽しい日常のエピソード。その舞台だった「げんしけん」に、ワタシも在籍したいと思っていた。
最初は知識程度に覚えておくかと思ったオタク世界にも、いつのまにかドップリとはまり込んでしまうし。こうなったら「げんしけん」に責任取ってもらうくらいの気合いを入れて、ここまでやってきたのに……。

……かくれんぼの鬼になって、「もういいよ」と言われて喜んで出てきたら、……もうみんな家に帰った後だった……そんな気分。

あぅ、だめ……なんか涙が溢れてきそう……。
斑目さんも、こっち見て動揺しているみたいで、ゴメンナサイ。
気が付くと、斑目さんは食べかけのサンドイッチをバスケットにしまいはじめた。そして、ワタシの方に向き直って尋ねた。
「今夜7時、もう一度ここに来ることはできるかな?」
ワタシは黙って頷いた。
「じゃあ7時に」
斑目さんは、それだけ告げていそいそと部室を出て行った。



151 :となクガ2:2007/01/19(金) 01:57:58 ID:???
【7】
「6時50分。ちょっと早かったかな」

ワタシはアパートの部屋でひと泣きした後、サークル棟へと戻ってきていた。
外はもう暗いが、サークル棟のあちらこちらの窓には明かりが見えて、にぎやかな笑い声や歓声が聞こえてくる。
新入部員を確保して気勢を挙げているのだろうか。
現視研も、こんな風だったらいいのにね……。グス。また悲しくなってきて、袖で頬を拭いた。

3階までトボトボと階段を登った。
意外にも、昼間はあんなに閑散としていて、静かで、寂しかった現視研の部室から、にぎやかな声が聞こえてきた。
恐る恐る、ドアノブに手をかけてみる。
「……すみません……斑目さん……」
ワタシはドアをがちゃりと引いて、そーっと中をのぞき込んだ。
にぎわいが一瞬途絶えて、中にいた人たちが一斉にこっちを凝視した。
「!!」


152 :となクガ2:2007/01/19(金) 01:59:53 ID:???
「あれ、早かったね」
奥の方で斑目さんが声を掛けてくれた。
続けて何か言いかけてたみたいだけれど、周りの人がドッ沸いて、聞こえなかった。

「かわいいッ!」
「この娘が、嘘だろ?」
「やっぱ今の女オタも腐女子なんですかね?」
「ちょっと、こっちおいでよ!」

大学のキャンパスには不似合いな、派手な服に身を固めたお姉さんがワタシの頭を引っこ抜くようにして、強引に部屋の中へと連れ込んだ。
イテテ、うわ化粧くさ!……とは思うが表情には出さないように気を遣う。

みんながワタシに注目し、ワタシは突っ立ったまま、恥ずかしくてうつむいていた。
すると足になんか小さいモノが駆け寄ってきた。3〜4歳のかわいらしい女の子じゃないですか!
なんかどっかで見た服を……ってか、コスプレをしているッ!?


153 :となクガ2:2007/01/19(金) 02:01:25 ID:???
【8】
「あー、紹介するから席について〜!」

斑目さんが小学校の先生のように、パンパンと手を叩きながら皆を制してくれた。
部室に集まっていた4人の男女。この人たちは久我山さんや斑目さんと一緒の時期に、『げんしけん』に居た先輩たちだそうだ。

「こっちの田中夫妻は夫婦でコスプレイヤー。その娘も可哀想にコスプレさせられているんだ」
「可哀想とは失礼ですね」
奥さんの方が反論。それにしても大きい胸だなぁ。
ご主人の方はちょっと生え際が危ない感じだけど、優しそう。
「きみこれね」
「あ、ありがとうございます」
田中さん(夫)から手際よくコップが手渡された。気が付けばテーブルの中央にはミニコンロ。鍋の中ではおでんがグツグツと音を立てて煮えていた。
「まだ寒いからね。今日はこれで」と斑目さん。


154 :となクガ2:2007/01/19(金) 02:02:36 ID:???
斑目さんは紹介を続けた。
「それで、こっちは笹原。こっちも笹原」
「うわ説明それだけかよ!」
茶髪のお姉さんがコケた。

それを尻目に斑目さんは、『男性の方の笹原さん』に話しかけていた。
「お前もよく来てくれたな。助かったよ。今日はマガヅンの編集?」
「いいえ、事務所でデスクワークです。おかげで来ることができたんですけどね」
「え?」
ワタシは「マガヅン」「編集」の一言に反応した。

なんと笹原さんは編集プロダクションの編集者さんだという。
「あっ、あっ、あの、ドゥモコンバンワぅ……」
「そんなに緊張しなくても……」
「いや、マガヅンだとか、いきなりそんなメジャー話になっちゃってビックリしてるんですけども」
久我山さんが教えてくれた編集者の人って、この笹原さんだったんだ!



155 :となクガ2:2007/01/19(金) 02:03:35 ID:???
【9】
「あの……笹原さんに見てもらいたいものが……」
ワタシは、大事に取ってあった「色紙」をカバンから取り出した。
小学生時代、久我山さんが描いてくれたものだ。

あの時、もう会えないのに、絵だけが残されて、悲しくて……。
いつも久我山さんがとなりに座っていたソファの上で、顔を覆って泣いたのを覚えている。
椎応大学に入学した時には、持っていこうと決めていたのだ。

「わ、なつかしいな、くじアン……」
色紙を手にした笹原さんを取り巻くようにして、みんながのぞき込む。
「おー、まごうことなき久我山の絵だな」
「ほんとだ、山田が目立ってるな、あいつ山田好きだったからな」
先輩方に思い出の色紙を見られて、ちょっとくすぐったい気持ち。
その色紙の隅には、久我山さんのメッセージが書かれている。

『後輩は編集者になれました。俺もがんばるから、君もがんばれ』

「久我山さん……」
色紙のメッセージを見る笹原さんの目はとても優しくて、ワタシも嬉しかった。



156 :となクガ2:2007/01/19(金) 02:05:32 ID:???
【10】
「久我山をはじめ、まだ来てない人がいるけど、主賓が居るので先にはじめますか!」
斑目さんが皆を見渡した。斑目さんはこのグループの仕切り屋さんなのだろうか。

「第5回、現視研新人来て良かったね会議〜!」
「アハハ、久しぶりに聞いたよソレ」と田中さん。笹原さんも「懐かしいですね」と笑う。

「……第5回って一体……?」
「そこは流せ」

「じゃあ、かんぱーい!」
さっそく、みんなが思い思いに鍋をつつきはじめた。
田中さんの奥さんは、何度もワタシにビールを勧めつつ、コスプレを勧めてきた(汗)。
「ワタシ未経験だから、コスチュームも買ったことないし……」
「大丈夫デス。夫が作りますから!」
「エェ!?」
不意に田中さん夫妻がひそひそ話しを始めた。微妙に不安になるワタシ。
奥さんがこちらを向いて、『耳を貸せ』とゼスチャーしてきた。


157 :となクガ2:2007/01/19(金) 02:07:32 ID:???
(ゴニョゴニョ……ゴニョニョ)
「ひゃああっ!」
驚く笹原さんや斑目さんたちの目線を受けて、ワタシは両手で口をふさいだ。
なんと、バスト、ウェストそして一番気にしている……のサイズまで、わずかな誤差で当てられてしまったのだ(大汗)。

そう言えば、同人仲間から、「冬コミにかなりなレヴェルの親子コスプレイヤーが現れた」「ハマり方がハンパじゃ無い」って話を聞いた覚えがある。
いかん、このままでは引き込まれる……。
ワタシは話をそらそうと、向かいに座っている男女の笹原さんに質問をぶつけた。
「あのう、そちらもご夫婦なんですか」と。

直後、田中さん夫妻と斑目さんは大ウケ。
ダブル笹原さんは真っ赤だ。
「誰がこんなサルと!」
「うるせーな。まぎらわしいから早く結婚して名前変えろよ」
「そっちこそうるせえ、アタシの勝手だろ!」


158 :となクガ2:2007/01/19(金) 02:08:41 ID:???
「そういえば笹原姓だけ告げて兄妹って教えてなかったな」
斑目さんひどい。こっちは大恥ですよ。
両手を合わせて「スミマセーン」と謝罪する。
「しょうがねーな。こいつはアニキなの! あたしは恵子。『姉さん』と呼びな」
「うわ偉そうに!」と、兄の笹原さんが悪態をついた。

「確かに夫婦って、似るって言うよな」と田中さん。
「でも『あそこ』は似てないですよ……。斑目さん、『咲さんたち』今日は来ないんですか?」

田中夫妻の質問に、斑目さんはちょっと慌てた様子だった。
「あ…ああ、今日は連絡付かなかったんだ」
そこに、恵子姉さんがツッコミを入れた。
「まだ……『高坂ねーさん』に会うのが怖いんじゃねーの?」
全力否定する斑目さん。汗、凄いですよ。
いったい『咲さん』って、どんな人なんだろうか。



159 :となクガ2:2007/01/19(金) 02:10:13 ID:???
【11】
いたたまれない斑目さんを、田中夫人がフォローしてくれた。
「斑目さんにはもうステキな奥さんが居るわけですし……。で、今日は会社で評判だという『美人外国人妻』は連れてこなかったんですか?」
またも慌てはじめる斑目さん。どうもフォローではなかったらしい。
つうか、この斑目さんの弱さ……。『総受け』なニオイがプンプンしますよこの人。

それにしても、斑目さんの奥さんが外国人だと聞いてビックリ。
確かにあのサンドイッチの濃い味付け、香り、洋モノっぽい感じはしたけれど……。

「きょ、今日俺は仕事場から直接来たんだよ。お前らに電話入れるので精一杯だったんだってば。ひょ、評判妻って言えば、笹原ぁ、お前の所は来てねーじゃねーか」
苦しい話の切り替え方だ。笹原さんの奥さんも外人さんなのだろうか。
「いやあ。彼女も仕事場から直なんスよ。途中で保育園に預けている子どもを迎えに行ってますし……」


160 :となクガ2:2007/01/19(金) 02:10:59 ID:???
その時、斑目さんの携帯が鳴った。
どことなく命綱に捕まるような必死さで電話に出る斑目さん。おいしい人だ。
「あ、久我山?」
思わず身を起こすワタシ。
「えぇ? 遅れるんじゃねーぞ! 今日のメインはお前なんだから!」

電話を切った斑目さんは、「……今、移動中だって」と状況を教えてくれた。

「俺、久我山さんと会うの3年ぶりくらいですよ」と笹原さん。
「お前も久我山も仕事忙しいからな。でも俺は先週アキバでばったりアイツに会ったぞ」
「斑目サンは仕事がヒマだっちゅーこと?」
「キミウルサイヨ」
「久我山の職場、飯田橋だから近いしな。しかし最近アキバも変わってきたなあ」
「オタクの傾向が変化してきたからですかね」
「でもアキバが本当に変わってしまったら、久我山転職するんじゃねーか?」
「ハハハッ」



161 :となクガ2:2007/01/19(金) 02:12:14 ID:???
【12】
盛り上がる先輩方の脇で、ちびちび缶ビールをのむワタシ。
うらやましい。
ワタシはこの8年、オタクをしていたけれど、これほど打ち解ける『仲間』はいなかった。それに『生息域』が違うこともあるのか、久我山さんと再会する機会もなかった。

そこにガチャっとドアの開く音。
ワタシは期待したが、そこに現れたのは小柄な女の人だった。
メガネを掛けて、耳が隠れるくらいの髪、大きなカバンを手にしている。
そして田中さん夫婦の娘さんと同じくらいの女の子が2人、足元に隠れるようにしてオドオドとこちらを見ていた。
「すみません。打ち合わせがあったので……」と、母親とおぼしき女の人が頭を下げた。どうやら笹原さんの本当の奥さんらしい。

「ん?」
ワタシは、その人の顔に見覚えがある。
思わず立ち上がり、失礼ながら30歳くらいとは思えない童顔を凝視した。



162 :となクガ2:2007/01/19(金) 02:13:32 ID:???
「な……、誰ですか?」
「あー、今度ここに入る人らしいよ。今日はアフタだったんでしょ。エムカミさんお元気だった?」
「はい」

笹原夫妻の話を耳にしてピンと来たワタシは、その女性の前までズイと歩み寄った。
「本当にスミマセン、失礼します!」
頭を下げた後、両手を女性の頭にまわし、髪をまとめて頭頂部で「筆」を作ってみた。
一度それを離す。ハラリと垂れる髪。
そしてもう一度、「筆」を作って凝視した。
筆の人はジト目で無表情のまま固まっている。
……ワタシは思い出した。雑誌のインタビュー記事で見たその人の顔を!

「あーっ!於木野鳴雪!」

驚くワタシの後ろで「ピンぽーん!」と誰かが叫んだ。



163 :となクガ2:2007/01/19(金) 02:15:16 ID:???
【13】
ワタシは何度も頭を下げた。
苦笑いの於木野先生。
笹原さんの『評判の妻』って於木野先生だったんだ。
確かに評判の人だわ。
驚異の生産ペースで作品を量産するメジャー作家!
臨月、それも陣痛の直前までかけて、センターカラー60ページを仕上げたという『生ける伝説』の持ち主だもの。

田中夫人が、「漫画は多産で子どももいきなり2人……」とおどけると、於木野先生は、「双子なんだから当たり前デス」と突っぱねた。
そっか、この子たち双子かぁ。
お母さんの隣のイス1つに、2人で座って机の上に顔を出している。
うはーカワイイですぅ!
「モスラ対ゴジラ」の生まれたて双子幼虫みたい(失礼)。


164 :となクガ2:2007/01/19(金) 02:16:11 ID:???
「あれ? 斑目さん『奥さん』来てないんですか?」
於木野先生も斑目さんに尋ねる。
「もうその話題、置いておこうよ、ネ、ネ!」
またも困った表情の斑目さんを助けようとしてか、笹原さんがおもむろに立ち上がった。

「ひょっとして……」と、自分の背後のロッカーを開けて、中を物色しはじめた。年代ものの同人誌が出てきて机の上に山積みにされていく。
「うわ、何やってんのアニキ?」
「大して物品を処分していないだろうから……、あった!」

笹原さんは、私に向かって一冊の同人誌を掲げた。
「これ、久我山さんの作品!」
私は思い出した。久我山さんと病院で会っていたころ、学生時代に描いた「くじアン」の漫画があると。その時は結局見せてくれなかったけれど、夢にまで見た久我山さんの漫画が、いま目の前に。
私は思わず立ち上がって、身を乗り出すようにしてその同人誌を受け取った。


165 :となクガ2:2007/01/19(金) 02:17:15 ID:???
「……おい、笹原、いいのかアレ」
「あ……」

周囲の不穏な空気の変化は気にも止めず、私はその同人誌「いろはごっこ」を開いた。

「……………(汗」

めくるめく妄想の世界。私は立ったままで読み続けていた。
周りに座っている御一同の「………(汗」という沈黙が心に刺さるようで痛い。

「おねえちゃん、何見てるの? 見せて見せてー!」

田中さんの子や於木野先生の子どもたちが固まる私にまとわりつくが、「見ちゃいけません!」とそれぞれの母親が引きはがした。

166 :となクガ2:2007/01/19(金) 02:21:11 ID:???

<明日につづく……たぶん>


調子に乗って予定よりも多く投下しちゃいました。

残りのメンバーはいま何をしているのか?
斑目の外人妻は果たしてどっちの方か?
そして、クガピーとの再会は?
現視研は再建できるのか?

以下次回!

待て、しかして期待せよ!



167 :マロン名無しさん:2007/01/19(金) 02:33:40 ID:???
>となりのクガピ2
リアルタイム乙!!!
いやー、読んでてすっごく楽しかったです、自分もその場に参加しているようで。
外人妻がどっちなのか、つかどっちになっても美味しい(笑)
続き楽しみにしとります!!!

168 :マロン名無しさん:2007/01/19(金) 02:39:30 ID:???
>となりのクガピ2
ktkr!!
楽しみにしてましたぁ。
前の話を読んだ時からこの子が現視研にいったらどうなるンやろ・・・?
というのを考えていたのですが・・・。
楽しそうで何よりです!
しかし、気になるのは現在の部長・・・。どんななんだろうなぁ・・・。

169 :マロン名無しさん:2007/01/19(金) 03:50:09 ID:MUTjVlEo
>となりのクガピ
面白かったです!!
斑目の奥さん!気になりますね。
水を差すようで悪いのですが「部長」ではなく「会長」では?
何はともあれ楽しみにしてます!続き求む!!


170 :マロン名無しさん:2007/01/19(金) 04:57:42 ID:???
>となクガ2
待てるかー!
ふと目が覚めて一気読みですよ。残りも待ってるよ。

>真っ赤な誓い
お前も待てんwww
寸止めヤメテ。
書きかけならいつまででも待つから残りもよろしく(ハァト)

171 :マロン名無しさん:2007/01/19(金) 08:44:38 ID:???
>となりのクガピ2
読後に「びぃだま」が頭の中に流れて泣きそうになりました
スッゴイ面白かったです!

メインのクガピーが登場する前なのにこの盛り上がり!
続きがムチャクチャ楽しみだぁw

172 :となクガ2感謝:2007/01/19(金) 12:24:20 ID:???
深夜から朝にかけて、読んでくださった皆さんのレスに感謝します。

>前の話を読んだ時からこの子が現視研にいったらどうなるンやろ・・・?
前作「となりのクガピ」は自分が初めて挑戦したSSでしたので愛着があり、久我山に癒された少女を、ぜひとも将来の現視研に入れてあげたいと前々から願っていました。
何より、このSSを憶えてくれている人がいることに感謝!


>外人妻がどっちなのか、つかどっちになっても美味しい(笑)
>斑目の奥さん!気になりますね。
外人妻、実は初稿では謎のままにして終わらせていたのです。斑目の気持ちになると、もう迷いに迷ってしまって(笑)。
個人的な設定では、春日部さんの結婚と、アン&スーのどちらともいい雰囲気になってしまう事態が同時にやってきて、斑目的には「生き地獄」の時期があったのです(笑)。
完成版では決着つけてますので……。


>読後に「びぃだま」が頭の中に流れて泣きそうになりました
正直言って書いている自分も、「びぃだま」が頭の中をリフレインしてました。楽しいのに切なかった。
SSのラストに歌詞を挿入しようかとも思いましたが、反則だと思ってやめました。
イメージして書いたものを、同じイメージで受け止めてもらって嬉しいです。


>「部長」ではなく「会長」では?
まったくその通りです。海より深く反省……。


>待てるかー!
すまぬー!(笑)
後編投下は土曜日中に予定。宜しくお願いします!

173 :となクガ2感謝(2):2007/01/19(金) 12:45:36 ID:???
蛇足なコトを書きます。

前作でただの「くじアン」好きだった女の子を、オタクにしてしまうのは可哀想でした(笑)。
前作同様、容姿に関しては全くイメージはしていなかったのですが、最初に、『なぜならば…!』 なんてセリフを吐かせてしまったので、「トップ2」のノノをじんわりとイメージしてしまう結果になりました。

そのほか楽屋オチ的なものを、アチコチに入れたので悔いの無いよう書きます。スレ汚しすみません。

>「甲賀流忍術同好会」
他の自作SSに出てくる椎応のサークル

>「平成26年度サークル入会の手引き」
笹原も自分の入学年度の同手引きを使ってます(原作1巻)

>『ココニイル。』と「いづみ」
1巻当時の現代視覚文化研究会案内コマが元。くじアンのリニューアルに合わせてキャラも変更。たぶん卒業前の荻上さんがテキトーに描いたものを何年も流用したもの。

>パソコン、ホワイトボード
原作ラストの部室を参考に……。



174 :となクガ2感謝(3):2007/01/19(金) 12:47:22 ID:???
> 「幽明の恋文」9巻
春日部さんが一人部室で(自分のハナゲに気付かないほど)ハマっていた漫画。「ワタシ」が9巻を手にしたとき、斑目は何を思ったであろうか……。

>『ワタナベさん』と言い間違え
「フタリノセカイ」の新宿で春日部さんとだべっていた女友達も、斑目を「ワタナベ?」と聞き違えている。

>会社で評判の『美人外国人妻』
そのうちテレビ東京で取材され、放送されることでしょう。

>「双子なんだから当たり前デス」
「双子症候群」のイメージが強いのでついつい。勝手な引用スミマセン。

>「モスラ対ゴジラ」の生まれたて双子幼虫
ホントに失礼な奴です。

>同人誌「いろはごっこ」「……………(汗」
オタクなんだから、このくらいCha-ra-ヘッチャラだと思うのですが、憧れの人物のエロ同人を見たショックということです。

>「見ちゃいけません!」
この二人の母親は将来どうするつもりなのか……。今は母親の理性が勝っています。


長々と失礼しました。

175 :マロン名無しさん:2007/01/19(金) 23:57:05 ID:???
どうも皆々様、数々のご感想ありがとうございました。
>>88
どうやらとりあえず、2ちゃんねる閉鎖はしばらく無さそうですな。
先ずは最低限読んで欲しかった人数を確保して下さったことに感謝。
>>91>>100
もし続き書くなら、先ずは学祭編でしょうね。
冬コミの方は、正直言って今のところネタ切れですんで。
>>101
推敲の回数は実はハッタリです。
本当のとこは、普段は全部で7〜8回ぐらいです。
ちなみに今回は3回ぐらいですので、いろいろ粗も目立って申し訳無いです。
>>120
ちなみにスーの「斑目晴信君ヲ男ニスル会」云々という台詞の元ネタは、「県警対〜」の金子信雄の台詞です。
(本編では書き忘れましたが、当然スーは金子信雄似の口調で言ってることでしょう)
彼の役はヤクザ上がりの市会議員(県会議員だったかも知れない)です。
彼の言う「〜君を男にする会」とは、本来は自分の子飼いのヤクザ成田三樹夫の選挙後援会のことです。
言葉というものは、使う状況次第でまるで違う意味になってしまうものだなと、自分で書いといて呆れています。
>>125
ここでちょっと予告じみた、現時点での次回作の企画案を紹介します。
・前述のような理由で、続編書くとしたら学祭編になりそうです。
・「ウルトラファイト」って、実は素人が初めて映画作るのには向いていないかも知れません。
 あれだけシンプルで面白いものを作ろうとすると、逆にキャラの素材やスタッフの力量が要求されるからです。
・せっかくケロロ小隊コスで作るんだからと、結局現視研は実写映画版の「ケロロ軍曹」制作を企画します。
・監督は当然国松と思われたのですが、思わぬ障害が発覚。
 彼女もまたスーツアクターの1人だからです。
 (ハリウッドの映画では主役俳優が監督を兼ねる場合があるが、それを素人に求めるのは酷です)
 そこで「第1回誰が監督をやるか会議」が開かれるが…

まあ気長に待ってて下さい。
とりあえずケロロのプロット書いてみないと、出演人数もストーリーも決まりませんので。

176 :まだメモ荻上ノーマル編:2007/01/20(土) 00:00:55 ID:???
こんばんわ。
此方に投稿するのは半年振りぐらいです。とは言っても3回目ぐらいでしか
ないんですが。

荻上編は他の方が書いてらっしゃいますが、
別のエンドがうかんでしまいましたので、
差し出がましいようですが投稿させてもらいますです。

それでわ。9レス位?お借りします。

177 :まだメモ荻上ノーマル編(1):2007/01/20(土) 00:02:16 ID:???
私には、妄想癖という、この先生涯ついて回るであろう悪癖がある。
私の世界は常に空想のスイッチで溢れていて、
押したが最後、あふれ出て止まらないイメージの奔流。
マンガが好きで、801が好きで、自分が嫌いで、でもやめられなくて。
中学で周りの人を傷つけて、もう傷つけたくなくて、閉じこもって。
高校まではうまく行った。大学でもうまくやれると思っていた。
でも、げんしけんは違った。みんな、みんな優しくて。それが心に響いて。痛くて。
そして。


そのシーンを見てしまったのは、つい先日。
いつものように講義を終えて、いつもの時間に部室に入ったら、
斑目先輩と笹原先輩がいちゃついてた。ネクタイ持って。

入っちゃった。すいっち。

きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アホなことさせないでくださいよっていったい何すりゃネクタイ引っ張るってのよ
何ですか僕を置いて卒業するつもりで忘れられるんですか僕をんーやっぱ責め
は笹原先輩かなあ斑目先輩はどこをどういじっても受けにしかならないからや
(以下略)

スイッチが切れたときには笹原さんのド攻め顔がノートに踊っていた。

178 :まだメモ荻上ノーマル編:2007/01/20(土) 00:03:47 ID:???
で、それから咲先輩に見られちゃって誤解されて説明しても聞いてくんなくて
しょうがないから斑目先輩も描いて見せてみたけど結局理解されなくて大野
先輩には2秒で理解されちゃったりして。

ひどく疲れて家に帰った。
そしたら、ついこないだ買ったばかりのハレガン少佐受本が目に入っちゃって、
何故だか、笹原先輩の顔が思い浮かんで、

また、はいっちゃった。

キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(全略)

スイッチが切れたときには、スケブ1冊笹斑マンガのネームで埋め尽くされてた。
・・・あー。またやっちゃった。
途方にくれつつも、出来には満足。うん、割といいかも。
・・・また大野さんに見せてみようかな?あ、でも趣味微妙に合わないからなあの人。
そだ、これを咲先輩に見せたら流石に理解してくれるかな?・・・引くか、引くよね。

悩みつつ何気なくカバンに押し込んで、その日は就寝。


179 :まだメモ荻上ノーマル編(3):2007/01/20(土) 00:05:06 ID:???
次の日、またいつものように講義を終えていつものように部室に入ると、
・・・誰もいないか。ま、そりゃそうだよね。そうそういつも・・
カバンを開いてふと気付く。あ。。昨日のスケブ・・・
誰もいないことをいいことに、私は昨日のスケブを見返し、
シーンの推敲に没入していた。

暫く作業にふけっていると、突然携帯が鳴り出した。
あれ?弟からだ。なんだろ?
電話に出て用件を尋ねていると、なんだか喉が渇いてきたので、
私は部室を出て購買に向かった。
「うぃーす荻上さん」「あ、こんちわ斑目先輩」
歩きながら先輩とすれ違う。弟の電話は他愛のない用件だったけど、
久々の電話だったので話しは弾んだ。
私は購買に着いてからも電話を続けていて、なんとなくオレンジジュースを購入した瞬間、

スケブのことを思い出した。

足元が瓦解する感覚。

私は蒼白になりながら部室へ取って返し、そこで、

真っ赤な顔でスケブを凝視している斑目先輩と対面した。


180 :まだメモ荻上ノーマル編(4):2007/01/20(土) 00:10:08 ID:???
息ができない。


マダラメさんが、私の、スケブを、


「や、えーとね、その」
「違うのよ、これは」
「別に覗き見ようって訳じゃなくて、机にどーんと開いて置いてあってさ、」
「やっぱ目ぇ行くじゃん、オギウエさんの絵すごい綺麗だし」

しどろもどろになりながらも必死で釈明を試みているらしいマダラメさんの言葉は、
私には届かない。
フラッシュバック。神社。笑顔。自転車。校長室。笑顔。
牧田くん。文芸部。中島。笑顔。金網。笑顔。笑顔。回る。回る。落ちる。回る。落ちる。落ちる。

もう、だめだ。もう、居られ、ない。
わたしは、また、ここでも、マキ タくんのとき、と

発作的に部室を飛び出そうとした私の腕を、
斑目先輩は必死の形相で引き止めた。

181 :まだメモ荻上ノーマル編(5):2007/01/20(土) 00:11:08 ID:???
「ごめん!本当にごめん!これは見るべきじゃなかった!」
「・・・もう、いい、です 私が悪い んです」
「へ?」
「私が全部悪いんです!こんなことしか思いつかなくてでも楽しくなっちゃって
自分がイヤで嫌でたまらなくて!それでどれだけ周りの人を傷つけてしまうのか、
私には判ってたはずなのに!」
「・・荻上さん?」
「でも!でも止められないんです!あふれてきちゃうんです!私が!私が
こういうニンゲンだから、繰り返すことしかできないから!だから」

「ちょっと待った」
「へ?」

眼前をさえぎる斑目さんの細くて薄くて広い掌に、私ははっと我に帰った。

182 :まだメモ荻上ノーマル編:2007/01/20(土) 00:11:51 ID:???
「あの、荻上さん?・・・なんか、勘違いしてない?」
「え。。。何を、ですか?」
嗚咽で上手く答えられない、でも、
「俺は、ごめんなさい、って言ってるんだよ?まだ途中の作品を見ちゃったことに」
「    え?」

話の意図が読めない。
この人は、いったい、何を。

「だってさ、これ、ほぼネーム状態じゃん。しかも未発表の。そういうのを勝手に見られるのって、
誰だってやっぱ恥ずかしいんじゃないの?」
「え、ええ、それはそう、ですが」
少し落ち着いた私を見て、斑目先輩もほっとした様子。
こちらを眺め、少し芝居がかった仕草で両手を広げる。
「俺はそれを無神経にもじっくり読んでしまったわけで。それはもう、謝るしかないよね」

183 :まだメモ荻上ノーマル編:2007/01/20(土) 00:12:55 ID:???
「・・・でも、でも!」「ん?」
「・・中身、わかってますよね?私は、その、斑目さんと笹原さん」

「ああ、やおいのこと?俺らの」
何故だろう、カッとなった。
「・・っ!そんな、簡単に!」

「うわ!ごめん、また俺気に障ること言っちゃったかな?」
斑目さんはあわてて、私に両手を合わせる。
そんなに謝らなくてもいいのに。
「いえ、気にはしてないんですが・・・斑目さん?その、気にならないんですか?」
「ん?何を?」
きょとんとした目で私を見る斑目さん。なんだろう、何故か、まっすぐ見返せない。
そんな私の奇妙な動揺に斑目さんはまったく気付かない素振りで、
「ああ、そういうことか。何言ってんの、俺のおたく暦がどれだけ年季入ってるか教えてあげようか?w」
きしし、と屈託なく笑う。
「俺は別に気にしないよ。割とガキの頃からこういう本何度か読んでるしね。それに、
荻上さんはさ、」
知らず見とれていた私の頭にはなぜか、
「マンガ描くの、大好きなんだよね?」
牧田くんの笑顔が浮かんでいた。

184 :まだメモ荻上ノーマル編(8):2007/01/20(土) 00:18:01 ID:???
「俺はおたくとしては消費の側でしかないからさ、マンガへ情熱持ってる人は無条件で尊敬してるし。
荻上さんもだよ?って、俺に言われても嬉しかないかw」
「・・・そんなことないです!」
「え!?」
「そんなこと、ない、です・・・」
堪らず上げてしまった大声に、再びびくりとする斑目さん。
訪れる沈黙が、なんだか重い。顔が赤いのが自分でもわかる。
斑目さんはどうなのかな。顔が見られないから、私には判らない。
ああでも、斑目さんは咲先輩が好きなんだよね。綺麗だもんなあ咲さん。私なんか。
あれ、あたしなんでこんなこと考えてるんだろう。変だ。おかしい。
斑目さんは総受けでヘタレ攻めで、咲さんが好きで、でも笑顔もちょっと可愛くて、
思考が止まらない、顔が熱い、部屋が熱い、あ、これってもしかして

すいっち?

「おーぎーうーえーさーーーーん?」
「ぅひゃ!」

再度思考の波にとらわれた私は、困った顔で立ち尽くす斑目さんに気づきあわてて顔を背けた。

185 :まだメモ荻上ノーマル編(9):2007/01/20(土) 00:19:14 ID:???
「どうしたの?ほんとに具合でも悪いとか」
「い、い、いえ!なんでもありません!」
「そっか、それならよかった。」
もうだめ、絶対顔見れない。うううう。
どうしたんだろ、絶対おかしい。こんなのありえない。

「・・・でもさ、これほんと凄いよね」
雰囲気を和ませようとしたのか、斑目先輩はあのスケブを目の前で拡げて見せた。
って!ちょ、まって!まって!
「ヤちょっと、目の前で広げないでくださいよ!?」
「いやぁホラこれとか?あとどれだったかな・・・」
「あ、これ、なんか質感リアルすぎてやばくない?無駄にレベルたけ〜」
「だから、今はちょっと・・・」
「うわこれ笹原人相悪すぎ。・・・あと俺カワイソスギ。絶対本人見せらんない。」
「わかってますそんなの!」
「特に下半身が反応したのはこの・・」
「斑目さん〜〜〜〜〜!!!」

ん?        下半身?

しまった、という顔で固まる斑目さん。
私は私で別の意味で凝固。
斑目さんが!?私のマンガで!?べっ、ぶべべべべ〜〜〜!!???

これで完全にテンパってしまった私は、

186 :まだメモ荻上ノーマル編(10):2007/01/20(土) 00:20:53 ID:???
    1.そんなに801が好きなんですか?
 →  2.実はもっと凄いマンガが・・・
    3.・・斑目さん、やっぱり・・・・

この隙を見逃さず、予め準備してあった
更にもんのすごい絡み満載のスケブを3冊斑目先輩に無理やり預け、
「すいませんオツカレサマデシタさよオならー!」
超特急で部室をあとにした。

この時は、恥ずかしさでその場に居たたまれなくなった故の行動だったのだけど。

次の日、斑目先輩にお会いしたときに気付いた。
斑目先輩の視線の先。
笹原先輩だ。
ちょっと顔が赤い。もじもじ。
・・・・あちゃー。

187 :まだメモ荻上ノーマル編:2007/01/20(土) 00:22:01 ID:???
そうして、私の短い、つーか短すぎた恋は終わりを告げた。
でも、今から思うと、この件をきっかけに、私は私を取り戻せたのだと思う。
創作こそ私の命であり、背骨だ。
誰かに影響を与えること、それこそが私の業なのだ、と。
ま、その後げんしけんは男女入り乱れた愛憎渦巻くBLだかレディコミだかよくわかんない事態に
突入しちゃったのだけど。
でも、斑目さんは笹原さんと幸せそうだし。
いいよね?マキタくん。

幻影の牧田くんが半目で、「そんなんでトラウマ解消すんのかよ」って言ってる気がした。
うっさいわ。

[Normal end.]

188 :まだメモ荻上ノーマルあとがき:2007/01/20(土) 00:23:42 ID:???
以上です。

荻上さんも、マダラメさんまあも幸せそうなんで、ノーマルエンドってことで。
慣れない投稿で番号ついてたりついてなかったりと、
色々お目汚し失礼しましたー。

189 :マロン名無しさん:2007/01/20(土) 00:31:12 ID:???
ええ〜っ!

てっきり斑目と荻上さんがくっつく展開だと思ってwktkしながら読んでたのに〜w
そんなオチなの〜w

まぁでもオギーのトラウマかいしょーした斑目GJ!

190 :26人いる!の人:2007/01/20(土) 02:15:41 ID:???
いかんいかん、最近の作品の感想を書くのを忘れてたので戻ってきました。
それにしてもここ数日の投稿ラッシュは何なのでしょう?
2ちゃんねる閉鎖の噂が招いた、いわゆる駆け込み需要というやつなのでしょうか?
それとも単にたまたまこの時期に、皆さん書き溜めてたのが集中しただけでしょうか?
しかもよく見ると、1本増えてるし…
>碧目のすう
絵板に行って来ました。
あの図からここまで話膨らますとは、只ならぬ妄想エンジンの出力ですな。
それにしても童話風の話の中でもダメだったのか、斑目。
でもスーとは一緒だから、一応ハッピーエンドかも。
>気付いた時が恋の始まり
あの笹荻問題で本スレが祭り状態になってた頃の話ですな。
当時予想SSが集中し、思えばそれがSSスレ誕生のきっかけになったんですよね。(遠い目)
その一方で「笹荻唐突過ぎ」ってなアンチな意見も割りとありました。
にも関わらず、あの間を補完する話ってあんまし無かったように記憶してます。
それだけにチト懐かしさに涙しそうになりました。



191 :26人いる!の人:2007/01/20(土) 02:18:03 ID:???
感想の続きです。

>真っ赤な誓い
何故か途中で止まってますが、ここでも斑目どうやらパパになるようですな。
果たしてお相手は?
完成次第投下されたし。

ここまで書いて考えた。
もしかしてこの人、書いてる途中で何か事件に巻き込まれたのでは?
マジで通報した方がいいかも…
>となクガ2
こちらも話が途中で、斑目ハッピーエンド風、これってシンクロニシティってやつでしょうか?
2014年の話ですか。
私が以前書いた「はぐれクッチー純情派」は2015年の話、勝った!
って無意味な自慢をしている場合ではありません。
なかなか切り方が絶妙ですな。
果たして斑目の嫁はんは誰か?久我山は相変わらずのブーちゃんなのか?現会長って誰なのか?
後半をお待ちしております。
>まだメモ荻上
いいとこまで行ったのに、詰めが甘くてバッドエンド…
まるでタイムボカンシリーズの悪役トリオですな、斑目。
でもそれで荻上さんをまんが道一直線に更生(?)させたのだから、まあ良しとしましょう。


192 :マロン名無しさん:2007/01/20(土) 04:18:07 ID:???
>荻上ノーマルエンド。

くっつかねーのかい!!!(突っ込み)

さて、そこはちと悲しいですが(笑)
荻上さんのどばーーーっと駆け巡りまくる思考とか、
荻上さんと斑目さんのやりとりとか、独特のリズムとスピード感があって、すごく読んでて楽しかった。
んで、笹の決め台詞(荻上さんのやおいを見て言う台詞)を斑目が言っても違和感ないのがね。
「笹と斑目が立場入れ替わったら」というのは考えたことあるので、すんなり受け入れられたというか。
…しっかし、くっつかないのかーーーそうかーーーーーーー…。


193 :マロン名無しさん:2007/01/20(土) 09:26:19 ID:???
>まだメモ荻上
斑目の笑顔が巻田と重なったあたりでマイハート持ってかれました。いい話だ!
が……くっつかないのかw てゆーか笹原とくっついてんのかwww
ラストの三択見る限りグッドエンドなさそうだから、もっと手前でルートミスってんだな、きっと。
このお話のオギーは自分のトラウマそこそこ飼い馴らしてるみたいでなんかほっとします。

あと雑談だが。
>>191
そこで巨塔のテーマをバックに白衣軍団引き連れてクガピー登場ですよw


194 :マロン名無しさん:2007/01/20(土) 09:46:33 ID:???
>>まだメモ荻上ノーマル
>ああ、そういうことか。何言ってんの、俺のおたく暦がどれだけ年季入ってるか教えてあげようか?w

ここツボった!
スゲーですよ「まだメモ」。キャラによって無限の可能性が……。
結果的に荻上さんキューピットになってるし。

「いいよね?マキタくん」じゃねーだろ!


>>真っ赤な誓い
191の中の人が言うように、予想外の事態はあったんじゃないかな?

昼休み前からSS送信はじめる(11:26:43)
   ↓
昼休み終了(最終アップは12:56:13)
   ↓
上司が呼ぶ「××君ちょっと」
  →[1]何だね、この「げんしけんSS…」とやらは(見られた!)
  →[2]君ちょっと喜界島まで出張してきてYo!
  →[3]君クビ(意外ッ、それはリストラ!)

どうか早く続きが読めますようにナムナム。

195 :真っ赤な誓いの中の人:2007/01/20(土) 12:32:48 ID:v3FonwSC
ご心配なく、ちゃんと生きています。


196 :マロン名無しさん:2007/01/20(土) 14:11:58 ID:???
べ、別に>>195の事を心配してたわけじゃないんだからね!

197 :真っ赤な誓いの中の人:2007/01/20(土) 17:21:23 ID:v3FonwSC
前に投下した後用事が入って
投下出来ませんでした・・・
オチは出来ていますので近々投下します。

198 :マロン名無しさん:2007/01/21(日) 15:00:40 ID:???
カキコテスト

199 :マロン名無しさん:2007/01/21(日) 22:33:28 ID:???
よかった。復活してた。
さあ読むぞーw

200 :真っ赤な誓い 5:2007/01/22(月) 16:14:46 ID:NjbFpMYv
「斑目ー」マコは声をあげながら長いすによじ登ると
斑目の首筋に抱きついた。
いつものように、これをすると斑目がふざけて遊んでくれる・・・
マコはそう考えていたのだが、斑目は力なく笑いかけ、彼女の頭を軽く
ポンポンと叩きながら微笑むだけであった。
「重症だな・・・」田中はボソッとつぶやいた・・・。
「ほらっマコ、おぢちゃん困っているでしょ!!」
母親にきつく言われてバツが悪いのかマコは高坂の足元へ行きしがみついた・・・。
「あらまあ、皆さんありがとうございます・・・。」
斑目の母親は深く頭を下げた。

201 :真っ赤な誓い 5:2007/01/22(月) 16:36:07 ID:NjbFpMYv
「すみませんね・・・さっきからもうこの状態で・・・。」
「いえいえ・・・自分の時もこんな感じだったので解りますよ・・・。」
田中はそう答えながら、斑目に声をかけた。
「メシまだだろ、今のうちに食いに行っておくか?」
「その方がいいわね・・・先は長いんだし・・・
 父さんと母さんここにいるから、先に食べてなさい。」

静かになった廊下、斑目の両親の会話だけしか聴こえない・・・。
「晴信・・・いい友達持ったな・・・」
「ホント・・・東京へ行くって言ったときは心配したけど、
 あの様子なら、安心ね・・・・。」
「あいつも・・・・・になるんだな・・・・」
「そうね・・・・・でも二人・・・・・・でしょう。」



202 :マロン名無しさん:2007/01/22(月) 23:12:07 ID:???
生殺しですか・・・?

203 :マロン名無しさん:2007/01/22(月) 23:21:08 ID:???
たぶんまた上司に。

204 :マロン名無しさん:2007/01/23(火) 00:23:37 ID:???
な に こ の 生 殺 し

205 :マロン名無しさん:2007/01/23(火) 04:56:31 ID:???
おあずけ・・・これがだんだん快感に・・・。

206 :マロン名無しさん:2007/01/23(火) 15:07:36 ID:???
斑目にマーチス准尉を、スーにセッティーエーム姫をやらせたい……なんてな

207 :マロン名無しさん:2007/01/23(火) 16:21:33 ID:???
陸情3課ktkr

208 :マロン名無しさん:2007/01/23(火) 23:01:51 ID:???
バンプキンシザーズ、流行ってんの?

げんしけんのメンツでは配役があわないよーな…。

209 :真っ赤な誓い 7:2007/01/24(水) 22:23:40 ID:22U07SmV
「結構イケルじゃない。」咲はハンバーグを口に頬張りながら言った。
「だっだろ?営業でここきっ来た時にはいっいつも食べてるんだ・・・」
「グッード、テイスト!!こういう所の食堂の定食は大抵出来合いのものと、
 相場が決まっておりますが、ワタクシ月一で通いますよ!!」
「メッメシもいいけど・・・ほっほら・・・」久我山は横を向くと窓の外を眺めた。
「本当にいい景色ですよね・・・」可奈子がなんともいえない声をあげた。
窓の外には町並みと港が広がっており、日も暮れかけているのが手伝って
神秘的な様子をかもし出していた・・・。
「クガピーお手柄だよ、こんないい所見つけて・・ねっ斑目!!」
咲は向かいに座っている斑目に声をかけた・・・。
「えっ・・・ああ・・・・」聴こえてなかったのか曖昧な返事であった
「やっぱり、気になりますか・・・?」笹原は心配そうな顔で尋ねた。
斑目の皿はまだ半分も手をつけられていなかった・・・・。
「まあ、男ならいつかは通る道ってことかな・・・。」田中は口元に笑みを浮かべている。
「そうですよ、田中さん自分の時は、今の斑目さんよりオロオロしていましたから・・」
「高坂、その話はもうやめろー!!」
ハハハハハと笑い声が食堂中に響き渡る・・・
「ところでさあ、後で可奈子から聴いた話しなんだけど・・・私の時はこの男
 ずーとゲームしていたって言うじゃない・・・どうよ!!」咲は親指をクイッと
高坂に向けるとイヤミたっぷりに言い放った。
「う〜ん、僕は咲ちゃんなら大丈夫って信じていたからね。」
「これだよ・・・これ・・・・」咲の口調はウンザリと言った感じだった・・・。


210 :マロン名無しさん:2007/01/25(木) 01:41:07 ID:???
>>208
全員を当てはめるような配役は合わないだろーな
しかし、スーが斑目にキスして「ウム! イカニモゲスラシイソヤニシテ美味デアル」はおいしいと思うんだ

211 :マロン名無しさん:2007/01/25(木) 01:46:05 ID:???
>>210
ああ、そのシチュはおいしいなw

185 KB
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

read.cgi ver 05.02.02 2014/06/23 Mango Mangüé ★
FOX ★ DSO(Dynamic Shared Object)